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F-22をシリアへ再派遣:米国にとってはISIS残党よりロシア、イラン、シリア各国への牽制が狙い

 


F-22は、ロシア軍を抑止するにしても、より広範な米軍の任務を支援するにしても、シリアで仕事が山積みだ



6月14日、米空軍は第5世代戦闘機F-22ラプターをシリアに配備し、米中央軍司令部が「この地域でのロシア軍機によるますます危険で非専門的な行動」を抑止している。ラプターは、ステルス性能で有名な先進的な航空優勢戦闘機であり、戦争で荒廃した同国に配備されたままの米軍兵士900人を守る米軍の能力を高めることを目的としている。

 米国が中東にF-22戦闘機を派遣したのは昨年が最後で、イエメンのフーシ派によるドローンやミサイル攻撃を受けて、同戦闘機がアラブ首長国連邦に飛来し、武力を誇示した。しかし、同機がシリアに赴くのはこれが初めてではない。2018年春、F-22は、ダマスカスの化学兵器攻撃の疑いに対するシリア軍事目標に対する米国主導の多国間攻撃の間、シリアの防空資産を危険にさらし、「防衛的対空」能力を提供した。秋には、F-22はシリアで初の「コンバット・サージ」を完了し、ラプターパイロットは「敵戦闘機と地対空ミサイルシステムの両方に直面しながらシリア領土の奥深くまで」飛行し、米軍関係者を脅かすシリア、イラン、ロシアの戦闘機600機近くを抑止した。

 ロシア軍を抑止するにしても、より広範な米軍の任務を支援するにしても、F-22にはシリアで仕事が待っている。実際、長年にわたる米軍駐留を守るための配備だが、空軍の報告によれば、ロシアはシリア上空で合意されたデコンフリクション協定の遵守をやめ、ロシア軍機が米軍関係者に嫌がらせをする頻度が増えているという。米国は以前からロシアによる米軍への嫌がらせを懸念していたが、最近になりシリアにおけるロシアの空中攻撃が「著しく急増」していることが確認されている。地上でも、米軍兵士はロシア軍からのさまざまな脅威に直面しており、ロシア軍は国内各地で米国人に物理的な嫌がらせや脅迫をしている。

 ロシアは、同盟国シリアのバッシャール・アル=アサド大統領を支援するため、2500人以上の軍人をシリアに駐留させている。ロシアとシリアは長い間、米軍を「占領者」と見なし、撤退を主張してきた。アメリカの拒否がアメリカ人を危険な目に遭わせている。同じくシリアとロシアの同盟国であるイランは、定期的に米軍を標的にしてきた。例えば、昨年3月には、シリアで「イラン起源」の無人機攻撃により、米軍契約者1人が死亡、6人が負傷した。2015年以来シリアに駐留し続けている米軍プレゼンスの論理性と持続可能性に疑問が投げかけられている。

 米国政府は一貫して、シリアにおける米国のプレゼンスを正当化する際に、「イスラム国」残党がもたらす脅威を指摘している。確かに、イラクとシリアで領土を失った後も、テロリスト集団の回復力は、2022年に313回の対IS作戦を実施した米国主導の多国籍連合に複雑な課題を与え続けている。

 しかし、米国はISIS自身よりも、ロシア、イラン、シリア政府からの、より深刻な脅威に直面している。ISISは、中東や遠く海外で組織的な攻撃作戦を遂行するかつての強力な能力を失っている。

 実際、ISISは軍事行動だけでは打ち負かすことはできない。多くの外国人戦闘員とその家族を含む何万人ものISIS捕虜が、イラクやシリアの拘置所や刑務所に滞留している。これらの人々が出身国に送還されるまで、彼らはジハード主義者による過激化や勧誘の危険にさらされ、ISISは仲間を解放するため刑務所を標的にし続ける。米国の政策立案者たちは、アルカイダやタリバンに対する米国の戦争努力から学んだはずだが、ISISは米国が殺戮で解決できる問題ではない。

 しかし、米国がアフガニスタンから撤退した後も、タリバンがISISと戦う決意を証明したように、シリア、イラン、ロシアも中東でのISISを容認しないと信じてよい理由がある。米国人は、イランが米国が支援したイラクでのISISとの戦いに貢献し、アフガニスタンでの同じテロリストの存在に反対したことを思い出すべきだ。

 さらに、ドナルド・トランプ大統領が2019年にシリアからの即時撤退を命じた際、放棄された米国の前哨基地に部隊を移動させ、北東部でクルド人とトルコの間の非エスカレーションを呼びかけたのはロシアだったことも記憶に新しい。その後、モスクワはトルコと実りある交渉を行い、クルド人がシリアとトルコの国境から退却するのと引き換えに、トルコ国内のクルド人に対する軍事作戦を阻止する合意に至った。先月ISISの最新指導者を殺害したトルコは、米国が2014年以来支援している同じシリアのクルド人と戦うことにコミットしている。これは、米国がシリアで解こうとしているゴルディアスの結び目のひとつに過ぎないが、あまり成功していない。

 実際のところ、米国はシリアでは友人の少ない部外者だ。招かれざる客として、シリア、ロシア、イランの軍事的圧力の標的のままだ。アラブ首長国連邦からサウジアラビア、アラブ連盟に至るまで、米国の同盟国やパートナーは、ダマスカスを仲間として迎え入れ始めている。オバマ政権下で始まった政権交代政策は、形を変え続いてきたが、とうの昔に失敗している。ウクライナ侵攻後もロシアは孤立するどころか、モスクワはエルサレムやアンカラと同様、ダマスカスやテヘランでもシリアでも不可欠な存在のままだ。中東諸国は、アメリカが永遠にシリアに留まるわけではないことは理解しており、それに応じてヘッジをかけている。しかし、アメリカはそれに応じず、撤退の道を模索しながら犠牲者を出し続けている。しかし、9年間も戦い続けてきて、ひとつだけはっきりしていることがある。それは、F-22が何機あっても、アメリカは自らの政策の失敗の結果を打ち破ることはできないということだ。■


Stealth Fighters to Syria: Why America Is Sending in the F-22s | The National Interest

by Adam Lammon 

June 16, 2023  



Adam Lammon is a former executive editor at The National Interest and an analyst of Middle Eastern affairs based in Washington, DC. The opinions expressed in this article are his own. Follow him on Twitter @AdamLammon.

Image: Image courtesy of the U.S. Air Force.


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