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主張 世界は新中世時代へ移行している。国家は弱体化し、米中ライバル関係が従来の冷戦思考では理解できないのはこのため。だが脅威が消えるわけではない。

 China's Xi Jinping at BRICS Summit. Image Credit: Creative Commons.

China's Xi Jinping at BRICS Summit. Image Credit: Creative Commons.


ーンズ駐日米国大使は、中国の秦剛外相との会談で、二国間関係を安定させる重要性を強調したという。米中関係の悪化後、緊張が緩和されれば、困難な国内問題に直面する両国にとって確かに歓迎すべき息抜きとなる。ワシントンでは、成長鈍化、党派対立、急増する銃乱射事件などの問題に取り組んでいる。中国政府は、経済パフォーマンスの低下、厳しい人口動態、高い若年失業率など、独自の難題に直面している。習近平は第20回党大会で、中国の国家安全保障上の脅威について、「民族分離主義、宗教的過激派、暴力的テロリスト」の脅威を抑えるのが精一杯で、犯罪には「重要な進展」があったにすぎないと述べた。



前代未聞の競合関係

弱体化した国家、無関心な国民、不均衡な経済の米中両国は、他の大国間のライバル関係に見られるパターンを破っている。米中間の競争が冷戦時代とは大きく異なるとの認識は、目新しいものではない。しかし、現在のライバル関係が、過去2世紀にわたるすべての大国間のライバル関係と異なる点が注目されていない。

 冷戦には独自のダイナミクスがあったが、2回の世界大戦、さらにはナポレオン時代の戦争とも重要な特徴を共有していた。もちろん、技術の状況は大きく異なるが、社会的、政治的、経済的な特徴は驚くほど類似している。これらの壮大な争いは、高度な内部結合力と強固な愛国的民衆の支持を持つ中央集権的かつ単一的な国家が関与していた。政治参加や経済的自己啓発の機会が拡大したこともあり、政府は強い正統性を享受できた。産業革命期の戦争は、同じ軍服と装備に身を包んだ市民兵士からなる大軍を編成する大量動員戦略が中心であった。

 このようなライバル関係と対照的であることため観察者たち当惑しており、現在の争いの斬新な特徴がなかなか理解できない。ある人は、両国は紛争に向かうと主張する。また、戦争は避けられないと主張し、競争を管理するため責任あるアプローチを求める人もいる。さらに、競争することを疑問視し、代わりに協力拡大を求める意見もある。


新中世時代 Neomedievalismの台頭

米中対立の異常な特徴を理解するための出発点は、我々の世界が画期的な変革の時を迎えていると認識することである。ランド研究所が最近発表した報告書では、2000年頃から世界が「新中世」と呼ばれる新時代に入ったことを示唆する証拠を提示している。この時代の特徴は、国家の弱体化、社会の分断、不均衡な経済、脅威の蔓延、戦争の非正規化である。このような傾向は、産業革命以前の社会でよく見られたパターンを想起させるものであり、産業革命時代を築いた先進国の力が衰えていることに起因している。その結果、すべての国家が弱体化し、米国の安全保障に深刻な影響を与えることになる。

 これらの傾向は、少なくとも3点で中国との競争にも影響を与えるだろう。第一に、国家の弱体化が現代の競争の中心的な特徴になる可能性が高い。国家は、政治的正統性と統治能力をともに低下させている。弱体化は、脆弱性と競争の機会をもたらし、防衛プランナーが考慮しなければならない不測の事態をもたらす。

 第二に、国内および国境を越えた脅威への対処は、通常の軍事攻撃を抑止するのと同じくらい重要になる。国家への主要な脅威は、パンデミック、犯罪、政治的暴力など、外部ではなく内部から発生することが多くなってきた。国内の安全保障を確保できないことは、国家の正統性に直結するため、こうした危険を制御することが緊急の優先事項となる。それに応じて資源配分する必要が生まれるかもしれない。

 第三に、産業時代から中世への移行は、中国と米国の間の潜在的な権力移行より多くの危険を伴うかもしれない。それがもたらす危険の拡散で、永続的に弱い国家が生まれ、問題に対処する資源の不足に直面する。米中平時の競争は、高度な国際的混乱、国家の正統性と能力の低下、国内に蔓延する深刻な課題、経済・社会的要因による厳しい制約など、19世紀や20世紀に工業国家が経験したのとは大きく異なる条件の下で展開されると思われる。

 これらの傾向は、過去2世紀にわたって大国が互いに採用した戦略の妥当性を低下させるだろう。過去のライバル大国がほとんど知らなかった問題に対処するため、新しい理論とアイデアが必要となる。米国は、これまで巨大な国際的課題を克服するために適応してきた。新中世時代に成功するため米国は再び適応する必要がある。■



Not So Great Powers: U.S.-China Rivalry in an Era of Weakening States - 19FortyFive

By

Timothy Heath

Published


Dr. Timothy R. Heath is a senior international defense researcher at the RAND Corporation.


Timothy R. Heath is a senior international defense researcher at the RAND Corporation. Prior to joining RAND, Heath had over fifteen years of experience in the U.S. government researching and analyzing military and political topics related to China. In addition to his publications with the RAND Corporation, Heath has published numerous articles and one book. Fluent in Mandarin Chinese, he has extensive experience analyzing China's national strategy, politics, ideology, and military, as well as Asian regional security developments. He has a Ph.D. in political science from George Mason University and an M.A. in Asian studies from The George Washington University.


コメント

  1. ぼたんのちから2023年6月15日 1:02

    世界が混乱し、どの方向に向かうべきか分からないような混沌とした時代に、過去の歴史の表面的な傾向と比較し、同一視し、あたかもその時代のようなものに突き進むかのように考える方々は、いつの時代にもいるものだ。
    「新中世」なる考えを初めて目にしたが、これは相対的に凋落する欧米に対する悲観論、嘆き節の一種のようだ。
    そしてもっと気を付けるべきは、この記事の著者が、中国が凋落せずに、米国から覇権を奪い取ると考えていることである。しかし、米国が相対的にその地位を低下させるにしても、それ以上に早く、中国が没落するとの予測がはるかに多いのだが。

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