Russian military drilling with artillery. Image Credit: Creative Commons.
内戦あるいはクーデターが一夜にしてロシアを包囲したようだ。ワグネル・グループが軍事拠点ロストフ・オン・ドンを掌握し、2万5000人の兵士を引き連れモスクワに進軍した
核の安全保障を維持する面で、今回は興味深い展開だ。興味をそそるというのは、実に恐ろしいという意味である。内戦かクーデターが一夜にしてロシアを巻き込んだようだ。ワグナー・グループがロストフ・オン・ドンの軍事拠点を掌握し、2万5000人の兵士を引き連れてモスクワに進軍したのは明らかだ。市民秩序の明らかな崩壊は、核兵器、あるいはより可能性の高い、核兵器や放射性物質の製造に有用な物質が、反乱軍、反政府勢力、テロリスト、あるいは一般犯罪者やガンランナーの支配下に入るかもしれないという不安を呼び起こす。
そして、彼らが終末兵器をどのように利用するかは誰にもわからない。
原子力国家における内紛は、第二次核時代の一側面であり、専門家たちは、時には私自身も含め、これまでほとんど関心を払ってこなかった。それは見過ごしであったかもしれない。確かに、国内混乱は過去に核の安全保障と戦略を形作ってきた。
南アフリカのアパルトヘイト政権は、アパルトヘイト後の政府に核兵器を継承させないため、少量の戦術兵器を解体した。ソ連は1991年に崩壊し、ソ連の核兵器庫を誰が管理するのか疑問視された。ソビエト連邦崩壊後のロシアは1990年代、外部からの援助なしでは旧式原子力潜水艦を廃棄できないほど資金難に苦しんでいた。核兵器が野放しとなる予想はあまりにも現実的だった。
しかし、内戦はそれとはまったく異なる、より悪質な秩序の生き物である。
要するに、第二の核時代とは、かつての米ソの恐るべき核兵器保有数に比べれば数は少ないとはいえ、より多くの国家が核兵器を保有する時代だ。軍備管理が効果を発揮した。人口統計、GDP、天然資源などの指標で測れば、核兵器保有国の形態や規模が多様なため、比較的対称的、二極的で安定した冷戦時代の競争には顕著でなかった非対称性が生じている。
核保有国は地理的に互いに密集しており、核兵器保有国同士でも誤解されやすい異なる意図を持っている。北朝鮮に対する抑止力を強化する努力として、平壌で戦略的思考を形成することを目的としていると、中国を説得してみてほしい。
要するに、抑止の幾何学は以前よりも複雑になり、管理が難しくなっているのだ。第二の核時代には、第一の核時代より核兵器による応酬の可能性が高まっているのである。
核兵器保有国に新たな門戸が開かれて、専門家がよく交わす議論がある。すなわち、その国の指導者、軍隊、社会は、核保有国が第一次核時代に行ったように、相互確証破壊の論理を守るだろうか?そうであれば、忍耐が生まれるはずである。そうでないと、究極の武器を抑止ではなく戦闘に使おうとする反抗的な核保有国となり、世界は大きな問題を抱えることになる。
これは、ワグネル・グループや、国家権威に挑戦するその他組織のような準国家主体に関して行う価値のある議論である。相互確証破壊が、そのような集団が核兵器を政治利用する方法を支配するというのは、当然の結論とは言い難い。
また、核武装した準国家グループをどのように抑止するのか。
核兵器や放射性物質の製造物をどのように保護するかという問題もある。政府が核兵器の押収や不正使用から核兵器を守るために講じている入念な予防措置を考慮すると、放射性物質の方が核兵器よりも悪人の手に渡る可能性が高いように思われる。原子力発電所から医療研究施設に至るまで、さまざまな分野でさまざまな施設が日常業務で放射性物質を使用している。
そうであれば、施設のセキュリティ部隊を構成する人間の質が重要だ。その質は、教育や訓練だけでなく、態度や士気にも左右される。知識が豊富で用心深い職員は、警備の使命を果たす可能性が高い。職員の無関心や悪意は、粗悪な核兵器や汚れた爆弾の初歩を、反政府勢力、反乱分子、テロリスト、組織犯罪、武器密売人の手に渡すことになりかねない。
だからこそ、核関連物質を保管する施設の指導者や管理者が、核セキュリティ文化に細心の注意を払うことが極めて重要なのである。彼らは文化的なスチュワードであり、施設の業務遂行方法の基調を決める。
このような文化は、セキュリティ要員の思い込みを形成し、外部脅威だけでなく内部からの脅威にも注意を払い、警戒するよう習慣づける。実際、内部からの脅威は、破壊工作や外部からの従来の正面攻撃よりも陰湿で、防御が難しい。前者は施設内の健全な人的要素に依存する部分が大きく、後者は鍵やゲート、資材の会計・管理システムなどの設備に依存する部分が大きい。
人間はハードウェアより測定がはるかに難しい。機械はルーティンワークを何度も何度も、毎回同じように実行するために存在する。人間は誤りやすい。
現在、西側諸国はロシアの核戦略や安全保障に対し抑止力を維持する以上の影響力をほとんど行使していない。殺傷力のある物資を適切に管理するようロシアの指揮官や安全保障管理者に強制はできない。
しかし、監視を続けることはできる。ロシアでの戦闘を追跡する一方で、西側情報機関は、ロシアの核セキュリティ文化が浸透しやすいことが判明した場合に備え、軍のみならず、非軍事施設にも不法な武器や物資の痕跡がないか監視もできるだろう。
結局、「備えあれば憂いなし」なのだ。■
What Happens to Russia's Nuclear Weapons if a Civil War Breaks Out? - 19FortyFive
By
Dr. James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College, a Distinguished Fellow at the Brute Krulak Center for Innovation & Future Warfare, and the coauthor of “Nuclear Security Culture,” new out from Oxford University Press. The views voiced here are his alone.
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