国防総省は今夏のF-35ステルス戦闘機納入を停止する一方、将来の改良に必要な技術リフレッシュ3(TR-3)ハードウェアを備えた量産機を確保する
大幅に遅れているTR-3アップグレードは、JSFのブロック4近代化のサポートに不可欠だ。過去のコンカレンシー(すべての機能が完全にテストまたは検証される前にF-35が製造される、開発と製造の複合プロセス)の問題が、このアプローチを後押ししているようだ。国防総省で最も高価な兵器システムであるステルスジェットのタイムラインに、どのような影響が出るかはまだわからない。
テキサス州フォートワースからテスト出撃するF-35Aステルスジェット。ロッキード・マーチン ロッキード・マーチン
国防総省は来月、ロッキード・マーティンのフォートワース工場(テキサス州)で生産ラインから出荷される一部新造F-35の受け入れを停止する予定だと、Breaking Defenseが初めて報じた。その理由として、TR-3ハードウェアの未熟さがある。このため、TR-3対象機材は第一線に納入されず、フォートワースに一時保管される。TR-3問題が解決され、引き渡しが可能になるまで2024年の春までかかるかもしれない。
TR-3を搭載した最初の量産機は2月に形を整え始め、7月末に完成する。
F-35合同プログラムオフィス(JPO)は、TR-3の遅れのため、新規製造機体がその間保管されることを意味するとDefense Newsに確認した。
「この夏の終わりから、TR-3のハードウェア搭載のF-35は、戦闘能力がユーザーの期待に答えられるか検証されるまで引き渡しを止める」と、JPOのスポークスマンRuss Goemaereは述べている。「JPOとロッキード・マーティンは、これらの航空機が[受け入れ]が行われるまで、安全かつ確実に保管されることを保証する」と述べた。
TR-3を搭載したF-35は一時的に保管されるが、TR-2ハードウェアを搭載したF-35は通常通り納入され続ける。
現時点でどれだけのF-35が影響を受けるかは不明だ。
ディフェンス・ニュースによると、ロッキードは、F-35を何機保管しなければならないかを言うのは時期尚早で、同社は今年のTR-3の生産数に関する当初の計画についてコメントしなかった。しかし、TR-2とTR-3の合計で、ロッキードは2023年に約150機を納入する予定だった。
ロッキードは月曜日、今年これまで45機以上のF-35を納入し、現在さらに約50機のTR-2 F-35を製造中であると発表した。
フォートワースのF-35生産ライン。ロッキード・マーチン
TR-3は、F-35のコアプロセッサー、メモリーユニット、関連エイビオニクスを大幅に強化するものでこの変更により、F-35は、新型レーダー含むブロック4近代化プログラムで計画されている新機能をサポートできるようになる。TR-3アップグレードが施された最初のF-35(特別装備飛行試験機)は、今年1月6日、カリフォルニア州のエドワーズ空軍基地で初飛行した。
F-35のコックピット計器が光っている。写真:In Pictures Ltd./Corbis via Getty Images
TR-3は、今年4月から納入の予定だったが、すでに遅れていた。現在の計画では、米軍がTR-3を搭載した新型F-35を受け取り始めるのは、開発テストがすべて完了した後となる。
TR-3が実証されれば、F-35はブロック4の近代化を受ける準備が整うことになります。ブロック4では、搭載可能な精密兵器が増え、電子戦能力が大幅に強化され、目標認識能力も向上する。
最善のシナリオでは、TR-3は今年12月に準備完了を宣言するが、2024年4月までかかる可能性があり、これだと以前の予想より12ヶ月遅れる。
昨年、米政府会計検査院は、TR-3開発の課題が、2021年にブロック4全体の近代化努力のコストを3億3千万ドル増加させ、プログラム遅延の一因となったと報告していた。1月にTR-3による最初の飛行試験出撃を発表した際、JPOは、「TR-3プログラムは、ハードウェアとソフトウェアに関する技術的複雑性の課題を克服し、現在は能力を提供するための軌道に乗っている」と述べている。
今年初め、F-35プログラムエグゼクティブオフィサーのマイケル・シュミット中将は、下院軍事委員会の戦術航空・陸軍小委員会で、TR-3ハードウェアの開発が遅れており、生産スケジュールに影響を及ぼしていることを明かした。同中将は、信頼性を含む改善が見られるものの、ソフトウェア統合に問題が残っていると述べた。
シュミット中将は、下院軍事委員会の戦術航空・陸上部隊に関する小委員会で説明した。
F-35納入を一時停止することは、ペンタゴンが「適切な戦闘能力」を持つジェット機を受け取る点では、長期的には理にかなっているかもしれないが、1年ですでに2度の生産停止を経験している同プログラムにとっては、良いニュースとは言い難い。
昨年9月、F-35の納入は、部品に中国製材料が含まれていることを当局が把握したため、保留となった。この部品はF-35のターボマシンポンプの磁石で、「情報を伝達したり、完全性を損なったりするものではなく、この問題に関連した性能、品質、安全、セキュリティのリスクはない」とJPOは当時、声明で述べていた。セキュリティの見直しを経て、10月に納入が再開された。
ついで昨年12月、納品前の受入れ飛行が一時停止され、引き渡しがストップした。これは、12月15日にフォートワースで起きた納品前のF-35B事故に対応したもので、後にエンジン振動が原因であることが判明した。その後、修正プログラムが導入され、再び納品が再開された。
現在、今回の納入停止で何機のF-35が影響を受けるかは不明です。ロッキード予測では、TR-3のテストは今年12月に完了するとされ、最良のシナリオでは、少なくとも約5カ月間、一部の機体が保管されることになる。
一方、悲観的なシナリオでは、TR-3の完成が来年4月になるとのJPOの予想に基づき、一部ステルス機は約9ヶ月保管されることになる。
いずれにせよ、2023年4月にTR-3を搭載した機体を顧客に引き渡す従来の計画からすると、大きな後退となる。
また、さらなる後退の頭打ちもあり得る。
今年3月、米軍高官は、下院軍事委員会の小委員会で、エンジン・コア・アップグレード(ECU)の取り組みを進める計画概要を説明しながら、F135エンジンの限界を語った。
JPOによると、F-35全機種に搭載されているプラット・アンド・ホイットニーF135ターボファンは、「仕様が当初から決まっている」ため、米軍はF-35全機種のエンジンアップグレード計画を重要視しています。これは、エンジンが想定以上の高温で日常的に運用されていることを意味し、メンテナンスとロジスティクスの負担を増大させ、F-35全体の即応性を低下させることにつながる。
F135のエンジン。プラット&ホイットニー
ECUのアップグレードは、TR-3とブロック4にも関連する。追加電力が必要となり、冷却ニーズが高まるが、ECUは電力・熱管理システム(PTMS)の改善を通じこれに対処することを目的としている。
GAOは先月、F-35のコスト増とエンジン近代化に関する報告書の中で、「エンジンと冷却改善のオプションを評価したが、航空機が将来必要とする冷却量の要件を完全に定義していない」と述べている。報告書は、国防総省が「異なる(エンジンと冷却システムの)オプションのコストと技術的リスクを完全に評価するなど、いくつかの重要なステップを踏んでいない」と付け加えている。
GAOは「議会はF-35プログラムのエンジン近代化を別プログラムとして管理する指示を出すよう検討すべきだ」と勧告した。GAOは、[国防総省]がGAO勧告と一致する別個のエンジンプログラムにコミットしていないため、議会に対してこの問題を追加した。直近では、米空軍、海軍、海兵隊がそれぞれ独自要件を立案する計画が浮上した後、F-35で別の冷却アップグレードを選択することになるかもしれないと明らかになった。そうなると、必然的にコストが上がり、さらなる遅延の可能性も出る。
エンジン・コアのアップグレードの状況はF-35全般にとって重要だが、その遅れは、すでに遅れているTR-3プログラムや、それに依存するブロック4の近代化にも非常に大きな影響を与える可能性がある。
最終的には、F-35の性能パラメータを満たすエンジンの確保は、特に電子パワーと冷却で要求が高まっる場合、今夏実施予定の最新の納入停止よりも大きな問題になる可能性さえある。■
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