これだけ重要なのに、我が国メディアは小さなニュースとして伝えていたようですね。中国の反応は条件反射的に伝えたようですが。文脈が理解できないのか、普段から関心がないのか。やはり、安全保障を広く解説できる知見を持つ専門家が日本のメディアに必要です。(記者に提供するポストではありません)また今回の記事で談話を伝える日本人が一人も皆無というのはどういうことでしょう。知力の欠如なのでしょうか。ブロークンでも自分の意見を堂々と言える日本人を一人でも多く作らなければなりませんね。さもないと、いいところは全部相手国にもっていかれ、日本は冷や飯を食わされますよ。
二国間協定の署名を終えた岸田文雄首相とスコット・モリソン首相 January 6, 2022. REUTERS/Issei Kato/Pool
オーストラリアと結んだ円滑化協定は日本にとって特別な意義がある
域内各国と結ぶ協定の「お手本」となり、米国を助ける効果も期待できると観測筋が見ている
オーストラリアと日本が2022年1月6日合意した協定には画期的な意義があり、その他西側諸国がアジア太平洋で積極的なプレゼンスを展開する道を開くとアナリスト陣は見る。一方で日豪両国が防衛活動を強化すれば米国の域内活動の負担を軽減する効果が生まれる。
日豪両国が二国間関係を深化させた。オーストラリア首相スコット・モリソンScott Morrison、日本首相岸田文雄が待望の相互アクセス協定Reciprocal Access Agreement(RAA)をヴァーチャルサミット会談において署名し、両国の軍部隊が共同演習や災害救難活動を展開する枠組みを決めた。
交渉は2014年に始まり、2020年11月に大枠合意が完成していた。
今回署名された協定はともに国内批准が必要だが、日本にとっては米国との地位協定締結が60年前にあっただけで実に久しぶりの取り決めとなる。
今回のRAA及び合意事項は安全保障関連問題が対象だが、両首脳はこれと別に経済安全保障の強化も合意している。
署名式ではモリソン首相から150百万オーストラリアドル(107百万米ドル)を投資し日本向けクリーン水素エナジーの製造輸出を行うとの発表もあり、日豪による脱炭素技術のパートナーシップの一環となる。
HMASブリスベーンで横浜入港前に日章旗を掲揚する乗組員。November 15, 2021. Royal Australian navy/LSIS Daniel Goodman
RAAは防衛が主眼だが、モリソン首相からはオーストラリアの対日関係は「安全保障問題だけにとどまらない深いものになっている」との発言があった。
「両国で完全な相互運用体制を実現でき、ともに作戦展開が可能となった。単に敵対勢力への対応にとどまらない。インド太平洋における人道救難目的で日本はオーストラリア同様に積極的に動いている」と発言し、アジア太平洋地区での関与でインド洋にも言及した。
「強調したいのは今回の協定が日本にとってこれに類するものがない二国間相互協定となっており、極めて特別な存在になっていること」とモリソン首相は述べ、極めて高い「両国間の信頼」を示していると付け加えている。
確かにRAAは志を友とする域内国を結びつけ、ともに中国の影響力増強に対抗する動きだと理解されているが、RAAには防衛分野以外の意味もあり、他分野での協力関係も育っているとアナリスト陣は指摘する。
「単なる防衛協定ではなく、より広範な合意であり、税制や司法分野まで含んでいることを忘れてはいけないでしょう」とオーストラリア国際問題研究所 the Australian Institute of International Affairで東アジア・日本問題を専門とする専務理事ブライス・ウェイクフィールドBryce Wakefieldだ。
「今回の協定から生まれるのはより広範な協力関係であり、協力内容はさらに広がります。また協力内容がすべて国家安全保障関連ではありません」
オーストラリアのショールウォーターベイ演習地で前方観測訓練を行う日豪隊員, May 24, 2019. Australian army/Cpl. Tristan Kennedy
最初の事例としてRAAで法律上のメカニズムが生まれ、日豪両国の軍部隊が相互に入国可能となる。実際に日本の自衛隊部隊がオーストラリアに展開し山火事対策にあたった事例があるとウェイクフィールドは指摘する。だが、同時に英国等その他国が同地域内にプレゼンスを確立仕様とする際に参考となる「お手本」になる。
「域内プレゼンス構築に前向きな国の中でも英国が一番目立つ。域内における法の支配を守ろうとする国が増えれば、それだけ南シナ海に展開する国が増えるし、法の支配をもとにした国際秩序の強化が進む」(ウェイクフィールド)
「実際に何が可能かを知る上でオーストラリアがお手本となり、今回の協定後はオーストラリアが大きく試されそうだ」とウェイクフィールドは付け加えている。
早稲田大学助教ベン・アシオーンBen Ascioneは今回の協定でインド太平洋地区の米軍の負担を他国が肩代わりする効果が生まれるとし、「日本オーストラリア両国の能力強化で米軍の負担が減り、二国間三国間演習が増えるのでは」という。
日本にとっては「ファイブアイズ」情報共有協定への加盟が進む効果も生まれれよう。現在は米国、英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの五か国の協定だが日本は六番目の加盟国になろうとかねてから着目してきたとアシオーンは指摘する。ただし、日本政府は自国の機微情報の保護が甘いことを自覚している。
中国が両国の署名にかみつき、外務省報道官 汪文斌Wang Wenbin は「太平洋は平和の海とするべきであって面倒を起こそうと画策してはいけない」との談話を発表した。
これは米英豪間の安全保障上の取り決めAUKUSに対する反応と近い。
だがばRAAのほうがAUKUSより先に構想が生まれており、長時間をかけて現実になっているとウェイクフィールドが指摘している。「中国が懸念をもって見守るはずだが、域内ほぼすべての国は前向きにとらえるはずだ」
オーストラリア国立大で国際法の教授ドナルド・ロスウェルDonald Rothwellはこの見方に賛同するものの、同時に今回の協定から別の成果が生まれるとし、日本が域内での役割拡大に前向きになっていると指摘している。
「今回が今までと違うのは日本が米国以外の協定に踏み切ったことです」「オーストラリアというよりも日本が大きく舵を切ったのです。日本が域内外関係国との共同防衛に自信をもってしっかりとコースを定めたといえます」(ロスウェル)
コープノース演習でテニアン島に展開した自衛隊機を防備するオーストラリア空軍隊員, February 19, 2019. Master Sgt. JT May III
ただし、RAAに関してはオーストラリア軍隊員が重大犯罪を行った場合、日本には死刑があることが一貫して合意形成に立ちふさがり、両国は妥協したと外部筋は見ている。
アシオーンは任務中のオーストラリア軍関係者は死刑の訴追対象とならないものの、勤務時間外での犯罪は死刑が適用されることで両国が合意したと述べている。
「この妥協策で両国は協定を活かせると思いますよ」
ウェイクフィールドは日本政府が「ケースバイケース」で慎重に検討するのではとみている。
「日本の死刑制度はかなり柔軟に運用されている点が重要で、裁判所も政治判断に敏感になっている」という。
「今回の合意で展開するオーストラリア軍隊員が死刑判決を受けることはないといってよい。日米地位協定で米軍関係者が日本で死刑判決を受けることがないのと同じで、重罪を犯した場合でも同じだ」■
Australia-Japan treaty could 'ease US military burden' in Indo-Pacific amid China's rise | South China Morning Post
Su-Lin Tan and Julian Ryall , South China Morning Post Jan 8, 2022, 1:23 AM
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。