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中国の攻撃で既存基地機能喪失を想定し、非通常型地点への分散を進め、迅速に燃料等を再補給する米空軍のACE、FARP両作戦構想に注目。


大国間競合の現実を見てペンタゴンは従来の想定をあらため、互角の実力を有する敵国に対応する新方法を模索している。



米軍は中国やロシアが相手では、ここ20年間相手にしてきたアフガニスタン、イラク、シリアのような装備貧弱な戦闘員相手の戦いの再現にならないことを承知している。


中国軍・ロシア軍は米軍にとって現実かつ協力な脅威であり、全く違う戦闘に対応する必要がある。


まず、米軍は少なくとも紛争当初で、従来当たり前だった制空権を獲得できない。さらに、地上の米軍や基地も安全でなくなる。中国とロシアは、前方基地や国内の空軍基地を短距離、中距離、長距離の兵器システムで攻撃可能で、米国の防空設備を圧倒する数のミサイルを保有している。さらに極超音速兵器の出現で現時点の防空システムは防御不可能となったとされ、敵からの距離に関係なく基地の安全性は低下している。


ACEとFARP


そうなると、即席の空軍基地へ航空機を分散運用することが、ハイエンド戦で重要な意味を持ちそうだ。米空軍はこのことをよく理解し、2つの重要なコンセプトに取り組んでいる。アジャイル戦闘展開Agile Combat Employment (ACE)と前方兵装燃料補給拠点Forward Arming and Refueling Point (FARP)だ。


舗装未舗装の滑走路で空軍が有事に使用可能な地点を示す地図。ACE、FARPではこうした臨時飛行場を活用することになる。 (USAF via the War Zone).


アイアンダガー演習


日本で最近展開したアイアンダガーIron Dagger演習を見れば、米空軍がインド太平洋で中国相手に展開する戦闘の様相を示している。同時にACE、FARPの実戦の重要性が浮かび上がってくる。


アイアンダガー演習で空軍は354航空遠征航空団所属のF-35A編隊を事前通告ほぼなしの状態で岩国海兵隊航空基地に短時間で移動させた。これはアジャイル戦闘展開の実証となり、燃料、兵装の再補給を短時間で整備されていない環境で実施し、前方兵装燃料補給拠点の実効性を示した。


354航空遠征団司令デビッド・バークランド米空軍大佐Colonel David Berklandは、「今回の動的戦力展開(DFE)運用では、第5世代航空兵力をすばやく動員し、インド太平洋戦域に展開する能力を示せた」と述べた。「354航空団にとって、ACE運用を洗練させ、パートナーシップを強化し、共同相互運用性を研ぎ澄ます素晴らしい機会となった」。


演習では第18兵たん即応体制隊、第一特殊作戦飛行隊の空軍隊員がFARP部分の運用を支援した。


F-35A型B型はACE対応の認証を受けており、これまでも各種演習に投入されいるが、FARP能力の実証を今回取り入れたことで、実戦で敵を奇襲攻撃したり、敵の作戦立案を混乱させる効果が生まれると空軍は見る。


アジャイル戦闘展開では戦闘機の迅速展開運用能力を有する部隊を前提としている。


主要基地数か所に縛られず、戦域内に柔軟に戦力を展開する能力で地上の作戦状況に流動的に適応できることが、互角戦力を有する相手の打破をめざす部隊に最重要となる。


昨年の国防戦略方針が十分な戦闘力を迅速に展開する必要を明記している。陸海空軍は必要地域に迅速展開し、分散運用を維持する必要があるとしている。つまり、未整備地点や臨時航空施設からの運用を想定し、大型軍事拠点は真っ先に攻撃の標的になると想定している。


特殊戦術空軍隊員がA-10サンダーボルトIIを誘導している。高速道路を臨時滑走路とした。こうした対応がACE、FARP運用に必要だ。


例として中国と戦闘となった場合にインド太平洋地区の空軍部隊は機材を分散させ、中国ミサイルの攻撃で多数が地上で壊滅する最悪のシナリオを回避する。こうした攻撃では航空機を破壊しなくても作戦展開を不可能にすれば効果を発揮する。


ミサイル数発をうまく滑走路に打ち込めば、深刻な損害や破壊でき、直撃弾でなくても航空機が使用不能となる。空軍は滑走路の修理時間を短縮方法を模索しているが、滑走路の一部または全部が破壊されれば、修理完了まで基地の機材は地上に残ることになる。


この懸念は今に始まったことではないが、次の世界大戦の初期に空軍基地が攻撃される可能性は高まる一方だ。


機材を分散させ、迅速に移動させ空軍は生存力を高め、敵による壊滅を難しくできる。この方法なら、滑走路不要の特殊航空機の開発よりも、費用対効果が高く、実用的だ。

しかし、航空機に必要なのは滑走路だけではない。そこで登場したのが、FARPコンセプトだ。


FARP(前方兵装燃料補給拠点)作戦の基本は、スピードだ。F1のピットストップのように、一刻も早く戦闘復帰させるのが目標となる。FARP運用では、弾薬を使い切った戦闘機が着陸し、エンジンをかけたまま支援要員が燃料を送り込む「ホット燃料補給」を実施する。同時に、他の隊員も素早く武装を再装填し、すぐ戦闘復帰できるようにする。


F1レースでは、ピットクルーには世界レベルのアスリートでが多く、チーム内で特定の役割を果たすため、ディビジョン1の大学スポーツ部から直接採用されることが多い。FARPでも同様に、身体能力と精神力を必要とする。しかし、戦争のストレスに匹敵する体験は皆無だ。


FARP実行が技術的に難しいと認識し、空軍は有資格者を認証している。さらに、FARP部隊は一部の施設でのみ活動するとした。


F-22へホット燃料補給する空軍隊員。ACE とFARP により空軍は大国の脅威に対抗しつつ運用を続けられるとする。(DVIDS).


FARPコンセプトは一見斬新に見えるが、新規の発想ではない。特殊作戦部隊が何十年以前から運用している。第160特殊作戦航空連隊「ナイトストーカーズ」の精鋭パイロットは、アフガニスタン戦争の緒戦で、FARPコンセプトで作戦を持続展開した。ナイトストーカーのAH-6リトルバードは、アルカイダやタリバンの戦闘員を毎夜追いまわしたが、FARPがあったからこそ可能になっていた。 


アイアン・ダガー作戦参加のF-35AライトニングIIのパイロットは、「FARPでアイアン・ダガー参加のパイロットに利点が多く生まれた」と述べている。「滑走路さえあればどこにでも着陸し、迅速に燃料補給し再び離陸し、戦闘を継続する実体験と訓練を提供する場になった」「FARPの実行で敵の計算を複雑にする。FARPは、どこでも燃料補給し、戦いに参加する能力を示す」。


ACE とFARP は回転翼機にも応用される。写真はナイトストーカー隊のAH-6リトルバード (DVIDS).


固定翼機、回転翼機双方でFARPの恩恵を受けることができ、国防総省ではF-22ラプター、F-35共用打撃戦闘機、A-10サンダーボルトII、AH-1Zバイパー、F-15C、MQ-9リーパー、AH-6リトルバード、CV-22オスプレイなどの機材でFARPを採用、テストしている。


ACEとFARPで空軍部隊は戦略的に予測可能となり、作戦的に予測不可能になる。■


 

How the Air Force plans to re-arm fighters in the streets in a near-peer war - Sandboxx

Stavros Atlamazoglou | January 6, 2022


Stavros Atlamazoglou

Greek Army veteran (National service with 575th Marines Battalion and Army HQ). Johns Hopkins University. You will usually find him on the top of a mountain admiring the view and wondering how he got there.


 

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