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中国との緊張が高まる中で、米沿岸警備隊がユニークな存在としてミッションを実行していることに注目。

 


2021年8月、米沿岸警備隊カッター、マンローが台湾海峡を通過した。米海軍駆逐艦USSキッドが随行した。US Navy

 

  • 中国と競合が強まる中で米軍は太平洋地区へ関心を強めている

  • 米沿岸警備隊が海軍で実行不能の任務にあたっており、カギとなる

  • ただ、世界規模で展開する必要があり、太平洋で需要が高まる中で沿岸警備隊の資源を使い切る可能性がある



国との競合でペンタゴンはより多くの装備を太平洋に振り向けているが、なかでももっとも目立つ米軍プレゼンスは国防総省下の組織ではない。


米沿岸警備隊の艦艇人員は国土安全保障省に所属し、長期間にわたり配備され、軍部隊では実施が困難な任務をこなしている。


沿岸警備隊司令官カール・シュルツ大将 Adm. Karl Schultzは「警備隊の業務は大規模ではなくても大きく役立っていると思う。どこへでもアクセスでき移動できるからだ」と12月の海軍連盟主催イベントで語っていた。


シュルツが例示したのはカッターの一隻マンローで102日にわたるインド太平洋方面任務を終え10月に本国へ戻ってきた。マンローは東シナ海・南シナ海で同盟国協力国との訓練を展開し、台湾とは「覚書」に従い行動したとシュルツが説明している。マンローは台湾海峡を航行し、その他の航行例同様に中国の非難を買った。


中国側は「沿岸警備隊が台湾側と一緒に訓練していると、かなり興奮する」と先月シュルツは語っていた。


「大歓迎を受ける」

米沿岸警備隊のカッター、マンロー乗員がフィリピン沿岸警備隊に敬礼した。8月に西フィリピン海を通過した際のこと。 US Coast Guard/PO3 Aidan Cooney


米沿岸警備隊は、古くから太平洋地域で活動している。2つしかない米沿岸警備隊の海外司令部の1つが「極東本部」で、70年前から日本に置かれている。また、米領をはじめ太平洋各地では、それ以前から船舶によるパトロールが行われてきた。


「米国沿岸警備隊は、150年以上にわたり太平洋地域で活動している」と沿岸警備隊太平洋方面総監のマイケル・マカリスター中将Vice Adm. Michael McAllisterは9月の記者会見で、「我々はそれを非常に誇りに思っている」と述べていた。


米海軍が、中国に対抗する米軍の取り組みをこの地域で主導しており、日本に拠点を置く第7艦隊は、マンローを指揮下に置いた。



海軍当局は沿岸警備隊などと協力してカッターのスケジュールを計画し、「作戦目標、優先順位、目的を慎重に取り入れた」と、第7艦隊広報官マーク・ラングフォード中尉Lt. Mark Langfordは9月にInsiderに語っている。


「沿岸警備隊は第7艦隊活動区域に独自の能力とスキルをもたらし、米海軍を補完してくれる」とラングフォード大尉は述べた。



沿岸警備隊は新造3隻をグアムに昨年7月に配備した。US Coast Guard/PO1 Travis Magee


ユニークな能力として、法執行権限や捜索救助、海洋環境対応、人道支援に関する専門知識が含まれる。


マカリスター中将は9月、沿岸警備隊を海軍の防衛力を「補完する存在」と位置づけ、「米海軍やその他軍の任務とは異なる」と述べている。


中国と緊張が高まる中で、沿岸警備隊の専門性が重要性を増している。不法漁業では、特に中国の海外漁船団が大きな懸念材料で、沿岸警備隊は各国による自国海域の取締への支援を強めている。2020年12月には、パラオの排他的経済水域で違法漁中の中国船の捕獲に協力した。


沿岸警備隊はこの夏、カッター3隻をグアムに配備し、前哨部隊の名称を変更した。新名称「沿岸警備隊ミクロネシア・セクター・グアム」は、「前方展開活動の拠点であることを示す」意味があると、副司令官リンダ・フェイガン中将Vice Adm. Linda Faganが9月に述べた。


沿岸警備隊の活動は、島しょ小国に限ったものではない。マンローはフィリピンやインドネシアと訓練を行い、日本の自衛隊と初の海上での補給活動を行った。


米沿岸警備隊カッター、マンローはインドネシア沿岸警備隊KNプラウダナとシンガポール海峡を航行した US Coast Guard/US Marine Corps Sgt. Kevin Rivas


また、退役カッターをベトナムに寄贈したことで米越関係改善に大きく寄与したと、2014年から2017年まで駐ベトナム米国大使のテッド・オシアスTed Osiusが述べている。


現職・元職員は、沿岸警備隊の責任とその行動はこの地域で規範で、パートナーとして求められているとアピールしている。


トランプ政権時代にインド太平洋安全保障問題担当国防次官補を務めたランドール・シュライバーRandall Schriverは9月、「両手を広げて迎えられるのは、我々が良きパートナーになりたいと願う各国にとって、想定する任務が非常に重要だからだ」と述べた。


「つまるところ、われわれは通商をオープンに保ち、紛争を平和的に解決し、貴重な資源を保護し、不法活動に対抗するという一種の行動をモデル化したい」とマカリスター中将は述べ、同地域の各国組織が 米沿岸警備隊のデザインに酷似したストライプ を自国艦艇につけていると指摘した。


「投入資源の問題」

沿岸警備隊カッター、キンボールの法執行チームがフィリピン海で昨年2月に初の臨検取り締まりを行った。 US Coast Guard


国内外で沿岸警備隊への要望がかつてないほど高まっているとシュルツ氏は述べ、バイデン政権下でその傾向は強まりそうだと語った。


国家安全保障会議の東アジア・オセアニア担当上級部長エドガード・ケーガンは9月、「沿岸警備隊は極めて重要な手段であり、沿岸警備隊による関与のレベルを拡大する方法を検討している」と述べ、「多くの場合、太平洋地域の各国にとって重要な問題は、沿岸警備隊の任務と一致している」と述べた。


しかし、沿岸警備隊は限られた能力で需要に応えることになる。


「4万2,000人の現役隊員を世界中に展開するにはどうすればいいのか」とシュルツは12月に述べ、2019年に実施したようなインド太平洋での5カ月間のカッター二隻の展開を続ければ「達成可能レベルより上を目指すことになる」と述べ、この地域にカッターを年間100~150日配置するほうが可能性が高いと述べた。


需要が高まる一方の中、沿岸警備隊に十分な予算が計上されて必要な任務遂行が可能なのか懸念が寄せられている。


米沿岸警備隊カッターのアレックス・ヘイリーの臨検隊が底引き網を使い不法漁業の疑いのある漁船に接近した。北海道東方860マイル地点。2018年。US Coast Guard



老朽艦船の入れ替えとして「第二次世界大戦後最大の資本増強計画」とシュルツが呼ぶ事業を展開中だが、2010年代の運営予算は横ばいのままで、近年の国防予算増強の恩恵は受けていない。


シュライバーは、「沿岸警備隊を国際的に関与する手段として真剣に使うつもりなら、もっと多く投資しなければならない」と述べた。


沿岸警備隊の法定任務11種のうち、国防総省を支援する防衛準備任務は小規模で、議員から沿岸警備隊が国防総省をどれだけ支援できるのか、厳しくチェックしている。


メリーランド州のアンソニー・ブラウン下院議員はインサイダーに対し、「沿岸警備隊が国防準備任務から外されて国防総省支援を求められると、今でさえ薄い資源をさらに薄く引き伸ばことになるとの懸念を抱き続けている」と伝えてきた。


シュルツは、近年の沿岸警備隊は資金需要面で前進しているが、「国家が必要とする沿岸警備隊の実現のため、毎年3%から5%の持続的な予算増を要求している」と述べている。


ブラウン議員は海軍と沿岸警備隊双方を監督する議会の委員であり、沿岸警備隊を効果的に機能させるためには、議員や政策立案者が「正しいバランスを取る必要がある」と述べた。


「沿岸警備隊に必要な資金を確保するために戦い続ける。しかし、資金は正しく、戦略的に管理されなければならない」とブラウン議員は述べている。■



In Competition With China, the US Coast Guard Takes on Unique Missions

Christopher Woody


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