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主張 オーストラリアはB-21を導入すれば原子力潜水艦より安価・短期間で抑止力を実現できる。米国があてにならないので自国で整備を検討すべき。では日本は?

 

USAF

 

 

米国の助けが必要な事態にあてにならない時代になったからこそ、オーストラリアには単独で兵力投射の効果を増強する選択肢が必要だ。

 

者はStrategistにF-35による兵力投射効果について寄稿したが、インド太平洋の広大な距離に対し航続距離不足を克服する方策も検討した。ある程度までの効果は期待できるが、想定シナリオ全部で大規模投資が必要で、空中給油機から海外基地の稼働が前提となることが分かった。また、防空能力を地上に整備する必要も判明した。

 

 

 

各種想定も検討したが、決定策となるのがB-21レイダー戦略爆撃機の導入だ。ASPIアナリストのキャサリン・マグレガーによると空軍トップをつとめた二名がともにわが国には戦略爆撃機が必要と考えていると伝えてくれた。そこで、今回はこの選択肢が有効なのかを検討したい。

 

まず歴史を振り返ろう。オーストラリアは長距離爆撃機の実績があり、欧州戦線でハリファックス、ウェリントン、ランカスター各型を運用した。太平洋ではB-24リベレーターを飛ばした。

 

戦後にはキャンベラ爆撃機があった。同機の戦闘半径は2千キロと制約があり、F-111Cに交代したが、戦闘行動半径はやはり2千キロだったが、空中給油に対応した。これでジャカルタが攻撃範囲にはいったが、隣国首都を空爆する事態があるのか議論を呼んだものの、インドネシアが神経を尖らせたのは事実だ。ここにハイエンド攻撃機能の意味がある。抑止力となり、結局使わなくとも相手国の配慮を呼ぶことだ。

 

このように長距離爆撃機の必要性は以前から認識されていたわけだが、現時点で戦略爆撃機の選択肢は広くない。中古機材のB-52、B-1、あるいはB-2を導入するか、米空軍が準備中のB-21を導入するしかない。無人機も別の選択肢になるが、現時点で利用可能な機体がないのが現状だ。B-21について公開情報は皆無に近いが、米空軍は少なくともB-2並みの性能と見ているようだ。

 

となると空中給油なしでの戦闘行動半径は5千キロ程度ということか。オーストラリア内陸部からの出撃でもわが国北西部に広がる島しょ部、南シナ海、グアム、パプアニューギニアまでが入る。

 

この距離ならB-21に空中給油は不要だ。内陸部基地から運用なら、基地への敵の脅威と無縁だ。ただし、B-21には標的の正確な情報が必要となる。この実現に相当の費用が必要だ。

 

B-21は各種効果を発揮する。攻撃パッケージとして4機で40発から50発の長距離水上攻撃弾を搭載し、水上部隊・揚陸部隊に相当の損害を与える。敵の前方配備基地が対象なら、第一波攻撃の長距離スタンドオフ兵器でまず防空能力を粉砕し、その後の各機が精密誘導方式JDAM爆弾80発を投下する。あるいは小直径爆弾なら200発を運用可能だ。

 

潜水艦なら一カ月かけ母港に戻り兵装を再装填するが、爆撃機なら翌日に再び投入可能となる。これだけの威力を投入できる装備は他にない。長距離打撃力を求める国なら当然検討対象とし運用を望むはずだ。

 

B-21は戦術面でも近接航空支援機材になり、オーストラリアや同盟国の地上部隊支援に投入できる。B-21単機でF-35飛行隊なみの兵装を運用しながら、飛行距離は伸び、標的上空での滞空時間も伸びる。

 

ただすべて可能になるわけではない。B-21では対潜戦は実施できない。ただ、港湾内にある潜水艦の攻撃やスマート機雷の投下で重要航路の封鎖は可能だ。

 

公開情報を見るとオーストラリアが同機を導入可能となるのは2020年代後半以降だとわかる。したがって構想を短期間で実現できるわけではないが、潜水艦整備計画で最も楽観的な見通しより早く実現するのは確かだ。

 

もちろん、これだけの性能は対価あってのものだ。USAFは2016年価格で単価564百万ドルを目標としているが、この試算は100機調達で、かつB-2やF-22で発生した死のスパイラルとなった事業全体経費を下げるため生産数削減して価格上昇した事態を回避する前提だ。わが国としては一機10億オーストラリアドル(約830億円)とみるべきだろう。

 

わが国に何機が必要とかを把握するのは難しい。RAAFはF-111Cを24機、その後F-111G15機を調達したが、用途廃止時点で13機しか残っていなかった。USAFはB-2を20機弱運航している。そこで、12機から20機を想定しよう。通常は事業経費は機体単価の1.5倍から2倍となる。そうなると200億から400億ドルだ。相当の金額だが、次期潜水艦建造計画より安価だ。

 

課題はキャッシュフローで、予算をいかに確保するかだ。次期潜水艦建造事業は40年を想定しているが、B-21なら5-6年に圧縮し、50-60億ドルの毎年支出になろう。だが、これだけで国防省の装備整備予算の半分に相当する。またアンタッチャブルとされる南部造船所での建造事業の総経費を上回る。

 

国防省がこれだけの予算を獲得できるか予測がつかないが、政府が戦略環境の悪化を真剣に受け止めれば、B-21は真剣な投資対象となる。

 

米国からの支援があてにならない時代だからこそ、オーストラリアは自国で兵力投射能力の整備を検討すべきだ。■

 

Who Wants to Buy a B-21 Raider? | The National Interest

The B-21 could deliver a broad range of effects.

by Marcus Hellyer

January 20, 2022  Topic: B-21 Raider  Region: Australia  Blog Brand: The Reboot  Tags: AustraliaB-21 RaiderStealth BombersMilitaryStealth

 

This article by Marcus Hellyer first appeared at the Australian Strategic Policy Institute. 

The article is being republished due to reader interest.

 


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