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NATOの屋台骨のはずのドイツがウクライナ支援にどっちつかずの態度をとるのは、ガスパイプラインが念頭にあるためか。何も決められない連立政権の弱点を露呈しているのか。

 

German Leopard 2 Tank. Image Credit: Creative Commons.

 

 

ドイツが防衛装備をウクライナに送らない背景にガスパイプラインがあるのか?

 

2022年1月24日、ジョー・バイデン大統領は、ウクライナにおけるロシアの侵略に対し、NATOと西側諸国指導者は結束していると述べた。しかし、他の西側諸国が東ヨーロッパとバルカン半島に防衛兵器を送っているにもかかわらず、オラフ・ショルツOlaf Scholz首相率いるドイツ政府は拒否しており、他のNATO諸国と全く対照的だ。

 

 

ドイツは何をしようとしているのか?

 

西側指導者たちは、同盟のコンセンサスを破るドイツを不思議に思っていたが、答えは、ドイツのエナジー需要の大部分を供給するロシアのガスパイプラインかもしれない。

 

ドイツは、ウクライナに旧ソ連設計の122ミリD-30榴弾砲を売却するエストニアを阻止するまでに至った。この行動により、その他西側諸国やNATOでは、ウクライナにおけるロシアの侵略を抑止するためドイツがどこまでコスト負担し、また、西ヨーロッパで最も豊かで最大の民主国家のドイツが、今後どこまで信頼できるパートナーになれるのかを見極める必要が生じている。

 

しかし、ショルツ首相は、政府がエストニアの榴弾砲売却を否定したことはないとし、自国はNATOおよびEUの同盟国とロシアのウクライナ侵略に反対する立場だと主張している。

 

「心配するような事態が発生した場合、ドイツは共同行動する」とメディアに語った。「高い代償を払わせることになる」と述べた。

 

しかし、ドイツ政府は、ウクライナへの武器供給は、状況を悪化させるだけと考えている。12万7千人超の部隊でウクライナを三方から囲むロシアと同じ姿勢だ。

 

その代わりドイツは、クリスティーネ・ランブレヒトChristine Lambrecht国防相によると、医療病院をまるまる一個2月にウクライナに派遣する。

 

国防相はDie Welt紙日曜版の取材で、「完全な形の野戦病院が引き渡され、ドイツが530万ユーロを負担する」とし、「武器提供は役に立たない。それが連邦政府の総意」と付け加えた。

 

ドイツはNATOや西側諸国へ複雑なシグナルを送っている。ロシアのウクライナ侵攻に対しNATOと結束していることは明らかだと述べる一方で、ドイツの軍事責任者はロシアとプーチン大統領に明らかに共感している発言をした。

 

1月21日にインド訪問したドイツ海軍のトップ、ケイ・アキム・ションバッハKay-Achim Schonbach中将は、プーチンが「本当に望むのは尊敬だ」と述べ、「尊敬を与えるのは簡単なことで、やる価値はある」とも付け加えた。

 

その後、ションバッハはTwitterで、自分の発言は 「明らかな間違い」と謝罪し、翌日に辞任した。その後、ドイツ国防省は、ションバッハ中将発言について、「国防省の立場と一致しない」とし、ダメージコントロールを図った。

 

ウクライナは、ドイツが武器供給協力を拒否したのを「受け入れがたい」とした。アンドレイ・メルニクAndrij Melnyk駐ドイツ大使は、日曜日紙「ハンデルスブラット」取材で援助の必要性を訴えた。

 

大使は「事態は深刻で、ウクライナへの武器供給問題をドイツ政府は直ちに再考し、軌道修正することが必要だ」と述べた。

 

「いかにも恩着せがましい態度は、ウクライナ人が人間以下の存在として扱われていたナチス占領時代の恐怖を思い出させる」とも述べている。

 

ドイツがウクライナに武器を送らない理由

ドイツがウクライナへの武器供与に消極的なのには、要因が2つある。ひとつは、ドイツの乱高下激しい歴史だ。ナチス・ドイツ政府は第二次世界大戦中にヨーロッパの大半を侵略し、ウクライナとソビエト連邦の広範囲を占領した。ドイツ人は安全保障に関して消極的だ。その結果、ドイツはモスクワと対峙するより、むしろ宥和しているように見える。

 

そして、天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」が大きな要因ではないか。ドイツは、再生可能エナジーや代替エナジー移行に伴い、天然ガス依存度を高めている。ドイツは最後まで残った原子力発電所3か所を停止し、2030年までに石炭を完全に廃止する計画だ。そのため、ロシアと天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」に依存することになる。

 

信頼できる貿易相手ではないと他のヨーロッパ諸国にわかればロシアは交渉で不利になるのでパイプラインを止めることはないとドイツ側は考えている。

 

しかし、その他多くのヨーロッパ人やドイツの野党議員でさえ、政府のやり方は大きな間違いと感じている。保守派議員ノルベルト・レトゲンNorbert Röttgenは、西側諸国の結束にドイツは不可欠とし、「プーチンの目標はヨーロッパを分裂させ、ヨーロッパとアメリカを分裂させることだ」と述べた。 

 

「NATOの強力な対応にドイツが全面的コミットしていないとの印象が広まれば、プーチンはヨーロッパを麻痺させ、同盟を分裂させることに成功するだろう」と述べた。

 

欧州のNATOで最大のパートナーたるドイツは意見一致をうたうものの事態をうやむやにしているようだ。■

 

Why Germany Won't Send Military Arms to Ukraine - 19FortyFive

BySteve Balestrieri

 

 

Steve Balestrieri is a 1945 National Security Columnist. He has served as a US Special Forces NCO and Warrant Officer before injuries forced his early separation. In addition to writing for 1945, he covers the NFL for PatsFans.com and his work was regularly featured in the Millbury-Sutton Chronicle and Grafton News newspapers in Massachusetts.

 


コメント

  1. ぼたんのちから2022年2月1日 8:25

    NATOであれ、EUであれ、ドイツは、多大な恩恵を受け、また、貢献を求められているにもかかわらず、独善的な行動が目立つ。これはメルケル時代から顕著に見受けられることだ。ドイツは、健全財政を誇り、軍事費を軍や装備が維持できないほど減額させ続けた後、そのお粗末な状態からやっと抜け出す過程にある。
    メルケルは、自国の繁栄のために、中露に魂を売り渡すことまでやってきたから、メルケル後の不安定な連立政権がそれを修正するにはもっと多くの時間が必要なのかもしれないと考えるのはまだ好意的な見方だ。
    過去、ロシアがウクライナを侵略し、現在、さらに侵略する姿勢を見せていることに対し、ドイツが明確な姿勢を見せず、親露的であることは、EUやNATOを分裂させる兆候となり、明らかな通敵行為である。そしてドイツ政府のあいまいな姿勢は今後も変わることはないのかもしれない。
    NATOでのドイツの存在の大きさを考えると、ドイツの親露的姿勢は極めて有害であり、ますますNATO内の米軍の寄与が少なくなるから、長期で見るとNATOは崩壊に進むことになるだろう。しかし、同時にロシアは弱体化が進み、NATOを必要としないかもしれない。
    それにしてもドイツはかなり如何わしい国家になりつつある。今、世界で叫ばれている脱炭素や自動車のEV化は、西欧が特に主張していることだが、これは西欧の、特にドイツのディーゼル車の排ガス不正の重大な社会的犯罪、会社の存続を停止させるべきほどの犯罪行為を、何と政府が地球温暖化、環境問題にすり替え、自動車会社を免罪させたことのように、陰謀論者でもない私には思える。
    メルケルは、この問題を総額2兆円ほどの賠償と、一握りの経営者への訴追で済ませた。このような政府が行う細工もまた社会に対する犯罪行為であり、あえてこのような行為に走る政府は、かなり如何わしいものと考えざるを得ない。

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