U.S. NAVY
米海軍が次世代DDG(X)の構想を発表した
新型船体に既存装備を搭載し大改良をめざす。
米海軍が次世代駆逐艦DDG(X)構想を公表した。それによると長距離対水上艦攻撃能力とあわせ高出力指向性エナジー兵器を搭載するとある。DDG(X)は成功作となったアーレイ・バーク級の後継艦として2020年代中の建造開始をねらう。
最新のDDG(X)構造図は水上艦海軍協会(SNA)主催イベントで公開された。DDG(X)計画主管のデイヴィッド・ハート大佐 Capt. David Hartがとりまとめた。
ハート大佐はDDG(X)はアーレイ・バーク級最新型のフライトIIIの後継艦の位置づけで建造を2027年開始とし、2060年代を通じ米海軍で供用をねらう。アーレイ・バーク級最終建造艦は「世界最高性能の統合防空ミサイル防衛(IAMD)システムを搭載する」と大佐は解説した。
ただし、アーレイ・バーク級ではこれ以上の性能向上は想定がなく、極超音速ミサイルや嗜好性エナジー兵器といった新世代装備はDDG(X)で導入する。現行艦では装備搭載のスペースが不足し、電源出力も足りない。
「大型水上艦艇」となるDDG(X)にはセンサー能力、長距離射程対艦対地攻撃力、指向性エナジー兵器を将来追加する余裕が生まれる。同時に生存性を強め、DDG-51フライトIIIを上回る機動性と攻撃で損傷を受けてもIAMD機能を維持できる。DDG(X) では同時に音響、赤外線、水中電磁 (UEM) の各面での被探知性を少なくとも50パーセント削減する。
他方で統合電源系統 Integrated Power System (IPS)により、効率を上げながらコストを下げる。IPSは今後増大する電源供給に対応するもので、指向性エナジー兵器とあわせ電源消費が増えるセンサー装備に対応する。IPSはすでにズムワルト級駆逐艦に搭載されており、ターボエレクトリック推進がこれまでのガスタービン方式に代わり採用されている。ズムワルト級はわずか三隻の建造に終わったが、推進系は75メガワット超の発電容量を誇る。
新型艦には分散型海洋作戦構想をさらに進める狙いもあり、将来の対中戦で広くアジア太平洋で戦闘場面を分散させる米海軍思想の実現で一助となる。ここで要求されるのが航続距離の拡大でアーレイ・バーク級を上回る水準とする。具体的には新型艦の航続距離は最低50%増とし、現場待期期間は120%増とする。このため燃料消費効率を最低でも25%改良が前提となり、補給活動の負担も軽減される。
アジア太平洋での分散作戦に加え、DDG(X)は北極海での運用も想定する。北極海は最近になり戦略重要性を増している。
米海軍はDDG(X)を進化型と位置づけ、タイコンデロガ級巡洋艦、アーレイ・バーク級駆逐艦に加え、ヴァージニア級攻撃型潜水艦や進行中のコロンビア級戦略ミサイル潜水艦で得た教訓を反映し、産業界を最初から巻き込んでいる。
このためDDG(X)は戦闘システムをアーレイ・バーク級から継承し、SPY-6防空レーダー、ベイスライン10仕様のイージスシステム等を流用するが、船体は新設計となる。ハート大佐が公開した図は検討中のものと思われるが、すっきりとした船体が特徴的で、ねらいは艦の探知特性を減らすことにあるのは明らかだ。全体としてズムワルト級よりもアーレイ・バーク級に近い。
アーレイ・バーク級同様にDDG(X)でも性能改修を建造時から想定した設計になる。極超音速ミサイルの将来搭載が想定されているが、搭載装備は未定のまま現時点で海軍は開発に心血を注いでる。
今回の説明を聞くと DDG(X) に今後想定される改修は次の通り。防空ミサイル防衛レーダー(AMDR)、指揮統制通信演算情報収集(C4I)の改修、高出力指向性エナジー兵器、ミサイルセルだ。
ベイスラインノSPY-6レーダーは開口部を拡げるアンテナをつけ、現行の全高14フィートが18フィートに伸びる予定があり、空中の標的を探知追跡する距離が増え、精度を上げることになっている。
公表図で回転式対空ミサイル(RAM)の21セル発射装置二基が当初搭載されるとあるが、将来的には600キロワット級レーザー発射装置に交代する。さらに150キロワットレーザーが追加され構想図では艦橋前に搭載されている。RAMについては現行艦では一基の搭載なので大きく性能向上となる。
DDG(X)の初期構想ではMK 41垂直発射管装備(VLS)32セルを艦橋前方に搭載していたが、その後MK 41の代わりに大型ミサイル発射管12本になり、おそらく新型極超音速ミサイル搭載を想定しているのだろう。
基本構想はVLS32セルだったがUSNI NewsはDDG(X)にDDG-51フライトIIIの96セルと「ほぼ同じ」ミサイル運用能力を与えると報じていた。小型Mk 41VLSセルを大型セルに取り替え、極超音速ミサイル運用に対応させるのであれば、ミサイル運用規模全体も変わる。今回の図はVLSセル必要数の最小規模に対応したものなのだろう。
その他わかることとして機体格納庫がアーレイ・バーク級より大型化しており、有人へリコプター、無人機さらに駆逐艦用ペイロードモジュールに対応するのだろう。同モジュールについては不明なままだ。トラブル続きの沿海域戦闘艦(LCS)に近い案に見える。LCSではミッションモジュールとして対潜戦用、機雷戦用を基地停泊中に短時間で切り替え可能とするとしたがその後中止となった。再び出てきたのは兵装をモジュラー化し、必要に応じ取り替える構想があるからだろう。
既存装備を利用しつつ、高性能装備品に後日取り替える構想はDDG(X)を安価かつ短期間で供用開始するねらいがあるようだ。各種システムの陸上試験を可能な限り利用してリスク低減も目指す。
陸上テストは船体設計、統合電源システムまで含め海軍水上戦センター(NSWC)がメリーランドのカーでロックとフィラデルフィアで行う。ねらいはマイルストーンB認定前に重要システムの性能を検証することにある。
艦艇建造企業は昨年3月からDDG(X)設計チームに加わっており、早期方針決定を支援している。現在は構想を完成させる段階にあり、今年9月末の現会計年度終了前に初期設計段階に入る。
海軍はこれまでDDG(X) 建造を2028年度までに開始したいとしてきた。
ただし、DDG(X) では大きな問題点が残ったままだ。同艦のサイズがはっきりしないし、建造コストも決まっていない。USNI Newsは建造単価を10億ドルとみており、アーレイ・バーク級とコンステレーション級開発コストを参考にしたとある。
SSN(X)とコロンビア級の潜水艦建造に加え、コンステレーション級フリゲート艦が加わる中で海軍は必要な装備と負担可能な予算の間でDDG(X)設計の決定を迫られそうだ。■
This Is What We Now Know About The Navy's Future DDG(X) Destroyer
BY THOMAS NEWDICK JANUARY 13, 2022
Contact the author: thomas@thedrive.com
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