スキップしてメイン コンテンツに移動

主張 米ロはウクライナをめぐる戦闘勃発を回避し、もっと恐ろしい中国の野望に立ち向かうべきである。

 

 

時間がなくなりつつある。全関係国に影響が出る。国民、世界が武力衝突の回避を願うが、万一発生すれば偶発的に第三次世界大戦へつながるかもしれない。

 

ラジミール・プーチンの頭の中では(ヒトラーが要求を勝ちとった)ミュンヘンの再来としてジョー・バイデンの屈服を期待しているのだろうが、バイデンはそれができないし、するつもりもない。大統領は武力紛争の勃発を予測している。両指導者とも、賢く動き、本来回避できる戦争を防ぐ努力が求められている。

 

 

 

 

西側とロシア間の関係を再定義し、双方に誇りと安全保障上の利益をもたらし、第三次世界大戦に発展しかねない紛争を回避する大戦略が双方に必要だ。米国は、プーチンの脅しに逐一反応するのではなく、危機状況を解決する積極的な姿勢に切り替え、有効な実行可能なアイデアを全関係国に提案することが重要だ。抑止力が叫ばれているが、ロシアが自国の安全保障を高めたいのと同様に、米国も自国の安全保障上の利益を高めるような行動をロシアに求めている。

 

全当事者に有効な戦略とはどのようなものか。当事国が共通認識を見出し、戦争を回避できる可能性を考えてみよう。ドワイト・アイゼンハワーの大戦略が「封じ込め」なら、今回の戦略は「均衡」と呼ぶのがふさわしい。その考え方は、ロシアを友人や同盟国とみなさない。個人主義を超え、より長期的な国家間関係に根ざしたヨーロッパの安定秩序のためバランスを取ろうということだ。

 

封じ込めは、ソ連が拡張的な野心を持っているのを把握した。アイクは共存を否定し、共産主義打倒に取り組んだ。ロシアはソ連時代の勢力圏を復活させたいが、イデオロギーはなく、大国として世界に影響を与えようとしつつも、共産主義の帝国主義的な野心はない。米国、軍事中心のNATO、政治中心のEUを軸とする西側連合にとって、強さに根ざす現実的な共存が意味をもつ。この目標を達成すれば、西側は別の大課題、中国の野望に注意を十分向けられる。

 

 

ロシア

 

プーチンはナショナリズムと傲慢さで、ロシアの影響力と旧領土への支配力を取り戻そうとしている。プーチンは、ウクライナの親ロシア派政権を倒したマイダン革命は米国が推進したカラー革命であり、自分を権力の座から引きずりおろす画策とみている。プーチンの最重要目標は体制維持である。そのためプーチンが投じる方策は見当違いである。事実ではなく、プーチンの認識が、ロシアの行動を支配している。

ロシアと欧米間の安定した枠組みは、次のようになる。

 

まず、ウクライナとジョージア両国のNATO非加盟を確約する。両国にはNATO加盟の権利はなく、加盟はそもそも招待制である。西側の安全保障上の利益で、両国をNATO加盟国にする必要はなく、西側は、加盟につながるほどの密接さをロシアに感じさせる関係にする必要はない。

 

ウクライナはオーストリアのような地位を受け入れることも可能だろう。オーストリアは民主主義国家であり、あらゆる方面とビジネスを行い、独立を維持している。

同じような地位なら西側諸国に危害はなく、プーチンが最も不満を抱く脅威を取り除くことができる。ウクライナを交渉の場に参加させる必要がある。

 

第二に、プーチンは、ウクライナの民主化が成功すれば、ロシア国内にも波及し、自らの政権が弱体化することを恐れているといわれる。プーチンが本当の戦争を望まない限り、プーチンはこの問題に真剣に政治的に取り組むべきだ。プーチンは国内で人気があり、ロシア人が戦死者多数が帰国するのを見ないのであれば、現状のままかもしれない。これは、COVID-19へのロシア対応の無能ぶりを上回る深刻な脅威となる可能性がある。

 

第三に、プーチンは、米国にロシア内政に干渉されたくないと考えている。現実的な話をしよう。米国は国内国内選挙へのロシア介入を問題視している。プーチンは、政治的混乱を引き起こし、ソーシャルメディアを武器にハイブリッド戦術でNATOとEUを弱体化させようとしている。しかし、ロシアが指摘するように、米国ほど他国の政治に干渉する国は他にない。

 

西側とロシアが内政干渉をやめる相互協定を結ぶことが、今後の一つの道筋になるかもしれない。

 

第四に、プーチンは時間を逆行させたいと考えている。だが現実を直視すべきだろう。腐敗と共産主義の失敗がソビエト帝国を敗北させたのであって、西側諸国は敗北していない。プーチンは任期前半にロシアを経済的進歩に導いた。この実績が今後の前途を照らしているのであり、軍事衝突ではないと認識する必要がある。

 

最後に、プーチンは大国として対等に尊敬されることを望んでいる。だがそのためには、歴史認識も重要だ。第二次世界大戦中、ロシアがドイツとの地上戦の大半を戦い、最も多くの犠牲者を出したことを、欧米諸国が認めようとしないと感じている。この問題にで相当感情的になっている。プライドとナショナリズムへの対処は外交の問題だ。その解決は簡単ではないが、目標は達成可能だ。一方、プーチンがロシアへの評価を高めたいのであれば、ロシアの歴史家は自らの研究成果を英語に翻訳し、西側で出版すべきだろう。

 

 

西側はどう対応すべきか

 

米国はロシアに見返りを要求すべきである。

 

まず、前述のように、双方で内政干渉をやめると約束する。

 

第二に、ロシアはガスパイプラインのノルドストリームIIを欧州政治に影響を与える手段として利用しないと確約すべきである。

 

第三に、ロシアは、西側諸国が米国、NATO、EU、締約国を通じて一致団結して行動していると認識する必要がある。米国は、西側諸国がNATO第5条の義務を守るために必要なことは何でもすることと明確に示さなければならない。これには、欧州における現在の軍事力、特に迅速に戦略的配置できる航空戦力の増強が含まれる。ロシアとの明確なコミュニケーションラインは、混乱や誤算を避けるのに役立つ。ミサイル配備のような問題は、交渉によって解決すべきだろう。

 

第四に、ロシアは、ロシア国家、ロシア代理勢力、いわゆる「愛国ハッカー」、ロシアから活動する多国籍犯罪集団による西側での犯罪的サイバーハッキングを統制し、取り締まる必要がある。モスクワがそのような集団の存在を否定するのはナンセンスであり、西側諸国は信用してはならない。

 

最後に、外交の問題であり、実現に時間がかかるだろうが、ロシアと西側諸国は、2049年までに世界で軍事・経済的優位を確立するとの中国の野望がもたらす存亡の危機を認識する共通基盤を見出すべきである。中国の野望が現実になれば、双方にとって存立の脅威となる。ロシアが西側諸国と対中同盟を結ぶことはないとしても、中国と対中同盟をロシアが結ぼうとすれば西側諸国が影響力を行使できる。

 

西側から見れば、取引すべてを成功させなくてはならぬ。かつてロナルド・レーガン大統領は、ロシアとの取引において、「信頼するが裏付けも必要」"trust but verify "と発言した。これはロシアの諺である。もしロシアが取引に翻弄されたり、破ったりすれば、すべて白紙に戻り、西側は政治的、軍事的に自国の安全保障上の利益を守るべく積極的に動くべきである。ウクライナに防衛のため軍事支援を提供することもその一部だ。

 

複雑で微妙な問題ではあるが、こうした考え方は常識的なものであり、交渉の枠組みを考える上でも参考になる。米国としては、バイデン政権が超党派の協議と支持を得て、米国による統一戦線を張れるようにすべきである。ロシアは米国政治の二極化に戦略的弱点を感じており、ロシア対応を統一すればロシアへの米国の対応力の強化になる。偶発的に第三次世界大戦にエスカレートする可能性のある武力衝突を避けることは、すべての当事者にとって、自国民と世界のため必要なことである。時間は残り少なくなっている。動くべきだ。

 

 

Will the Ukraine Crisis Spark World War III? | The National Interest

by Dell Dailey James P. Farwell

January 26, 2022  Topic: World War III  Region: Europe  Tags: World War IIIUkraine CrisisUkraineRussiaNATOContainment

 

Lt. Gen. (Ret) Dell Dailey has commanded numerous special operations units in peacetime and wartime. As an ambassador, he headed the Department of State’s counterterrorism efforts.

James P. Farwell has advised U.S. Special Operations and the Department of Defense. An Associate Fellow in the Dept. of War Studies, King’s College, University of London, he is the author of Information Warfare (Quantico: Marine Corps U. Press, 2020) and The Corporate Warrior (Brookfield: Rothstein Publishing, 2022). The opinions expressed are their own and not those of the U.S. Government, its agencies, departments or COCOM.

Image: Reuters.


コメント

  1. ぼたんのちから2022年1月28日 10:16

    この記事の主張は、かなりの部分が正論に思えるが、相当部分は今すぐ実行できず、結果としては非現実的である。
    この記事以外にも様々な対応策が紹介されているが、最も重要な部分が欠けている。それはウクライナの意志を汲み取っていないことである。ウクライナが自国をどのようにしたいのか、その意見から対応策を考えるべきだろう。
    ウクライナがNATOに加盟する条件を満たしていない以上、NATO加盟を差し当たって放棄すべきであり、現実的なロシアとの関係を再構築すべきである。立派な見本がフィンランドにある。
    米国・NATOとロシアとボタンの掛け違いの、当事国抜きの議論をいくら積み重ねても不毛なものになるだろう。
    プーチンは、信奉する旧ソ連流の地政学的亡霊に憑りつかれている限り、現在の攻撃的姿勢を変えることは無い。また、プーチンが考えを変える余地もなさそうだ。よって、この記事の主張の多くは、プーチン以後となるだろう。
    他方、プーチンは、中国の浸透に悩まされているかもしれない。昨年10月に中国の浸透によるロシア共産党の反プーチンの策謀の摘発や、カザフ動乱の目的が親中派の排除との報道の一側面から、プーチンが中国の浸透工作に敏感になっているとも考えられる。つまり、プーチンは、見かけの中露の親密さを演出しつつ、ロシア影響圏内での中国の浸透に対処しなければならない羽目に陥っている。もしかすると、西側とロシアの関係回復の切り口は中国対策にあるかもしれない。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ