新年あけましておめでとうございます。
第一号記事として日本の安全保障上で重要な内容を選びました。例によって中国、北朝鮮の権益を代弁するような「平和」勢力が国会内外でノイズを上げそうですが(本人が否定しても結果的にそうなっているのでこれはヘイトではありません)、2022年は日本の安全保障が実効性を向上するための大きな一歩になりそうな予感がします。今年もご愛顧のほどよろしくお願いいたします。
JMSDF
日本がめざす潜水艦発射ミサイルは対地・対艦両用で中国、北朝鮮への抑止効果を期待する。
日本が潜水艦で新型長距離巡航ミサイル運用を行う検討に入っており、射程620マイルのミサイルを2020年代後半に配備するとの報道が入ってきた。
ミサイルは国産開発で海上自衛隊にスタンドオフ攻撃機能が実現し、水上艦や陸上施設を標的とし、中国や北朝鮮による脅威を相殺する効果が期待される。
報じたのは読売新聞で匿名の複数政府筋が海上自衛隊で供用中の潜水艦並びに今後就役する潜水艦に長距離巡航ミサイルを搭載する案を検討中と認めた。搭載するミサイルは12式亜音速対艦ミサイルを原型とする。同ミサイルは陸上自衛隊が供用中で現在の射程は124マイル程度。発射方法として垂直発射方式(VLS)と魚雷発射管の双方を検討する。現行の海自潜水艦にVLSは搭載されていない。また潜水艦で何発のミサイルを運用するかも不明だ。
JGSDF
陸上自衛隊の12式対艦ミサイルの試射.
読売新聞記事では潜水艦による対地攻撃を強調し、「敵ミサイル発射基地を正当防衛として」攻撃するとある。ただし同記事掲載の図には潜航中の潜水艦が敵水上艦も攻撃する姿があるが、対艦ミサイルを先に搭載することが記事からわかる。「敵攻撃手段の有効射程外からの敵艦へ反撃」とあり、同兵器を「将来は敵基地攻撃に転用する」とある。最終的に同じミサイルで対艦攻撃と対地攻撃双方に対応させることとし、トマホークIVあるいはノルウェーがI開発の共用打撃ミサイル(JSM)と同様になる。日本は後者をF-35ステルス機用に導入している。
「正当防衛」を強調するのは攻撃行動を排除する現行憲法の枠内で自衛隊を運用する配慮のためだ。ただし、憲法で想定した状況は急速に変化しており、固定翼機運用の航空母艦の調達も実現している。
新型長距離巡航ミサイル開発の大工程は未発表だが、2020年代末に供用開始するとしたら相当野心的な構想だ。とくにVLSを既存艦あるいは今後建造する艦に搭載しようとすれば相当の工事となる。南朝鮮が建造中の島山安昌浩Dosan Ahn Changho級ではVLSを順次拡大し6本を今後10本にし、巡航ミサイルや弾道ミサイルを運用するといわれている。こうした順次拡大方式を日本も採用するかもしれない。また魚雷発射管を利用するミサイルを既存艦に搭載し、VLSは今後建造する艦に搭載するのだろう。
海自潜水艦はハープーン対艦ミサイルを搭載しており、魚雷発射管で運用するが、射程距離は今回構想の新型ミサイルより短く、対地攻撃能力もない。海自のUGM-84LハープーンブロックIIの有効射程は80マイル程度だ。
記事では岸田文雄首相がめざす国家安全保障戦略に「敵基地攻撃能力」を盛り込むとある。同戦略は2022年末に公表の予定で、防衛外交両面での中長期指針となる。潜水艦発射式ミサイルは目標達成の手段となり、海自には22隻の通常動力型潜水艦があり、現在2隻が加わる予定なので十分な規模といえる。ただし、空中発射式や艦上発射式巡航ミサイルで要求にこたえられそうだ。
12式対艦ミサイルの射程延長も進行中で、航空自衛隊のF-15Jに搭載する案もある。
12式の射程延長作業は2018年度から始まっているが、昨年12月に同ミサイルで設計変更の方針が発表され、搭載燃料増加のため大型化、推進部分を高高度飛翔に最適化することになった。飛翔距離は560マイルになり、さらに930マイルまで延長される。第一期の射程延長でも今回想定の新型巡航ミサイルと同程度の射程が実現する。もっと重要なのは12式も地上目標攻撃が可能なことで、レーダー断面積の縮小対策で探知されにくくなる。ただし、射程延長型12式を潜水艦発射用にする言及はなかった。
とはいえ、12式改良は2019年度から2023年度までかかると見られ、今回発表の潜水艦発射式巡航ミサイル構想に符合する。
12式陸上発射式対艦ミサイルとは:
対艦対地両用で長距離射程の巡航ミサイル12式は海上自衛隊にも有益な装備となる。海自は急拡大するPLAN水上艦艇部隊へ対応を迫られており、日本周辺以外に南シナ海、東シナ海ではとくに後者に尖閣諸島があり、PLANは空母打撃群まで整備している。
合わせて対地攻撃仕様の新型ミサイルで日本は中国や北朝鮮の弾道ミサイル能力を標的におさめる装備を入手できる。北朝鮮は弾道ミサイル発射をたびたび行い、日本近海に着弾させている。重要な軍事施設や国家指揮統制施設、航空基地、防空施設を標的とするのが海自長距離巡航ミサイルの有事対応となろう。
中国あるいは北朝鮮が日本を攻撃してくれば、潜水艦の対地攻撃巡航ミサイルで反攻する。敵第一撃で日本の航空戦力や水上艦艇が大損害を受けても潜水艦発射ミサイルは有効な手段となる。海自潜水艦の攻撃効果への期待以外にそもそも海自潜水艦は世界最高レベルの通常型潜水艦で、静粛度にすぐれ、リチウムイオン電池まで搭載している。
12式改良を念頭に長距離対応巡航ミサイルの開発は相当進んでいるのだろう。未確認情報だが、たいげい級一号艦はVLSあるいは魚雷発射管の評価に供され、艦寸法とくに上部構造を拡大しているのはVLS搭載を試す狙いがあるともいわれる。
日本はトマホーク巡航ミサイルを米国から調達する案も検討していた。2017年にこのサイトでお伝えしている。スタンドオフ報復攻撃手段として北朝鮮のミサイル発射施設に向け発射する構想だった。今回発表の長距離巡航ミサイル構想と並行しているが、日本が当初想定したのは陸上発射型のトマホーク導入で、潜水艦発射式ではなかった。その後トマホーク導入に進展がないが、ブロックIV仕様の同ミサイルは日本の求める性能に完璧に符合している。
新型対地攻撃ミサイルの潜水艦搭載に加え日本国から遠く離れた地点への攻撃能力を導入すれば従来の「専守防衛」が大きく変わる。ミサイルをVLSセル発射用に改装するのは容易で海自水上艦艇での運用も可能となろう。明らかなのは日本の戦略姿勢では長距離攻撃能力を潜水艦のみならず広範な手段で実現する要求が急速に強まっていることだ。■
Japan Wants To Arm Its Submarines With Long-Range Cruise Missiles: Report
The missiles would offer land-attack and anti-ship capabilities and would be expected to serve as a deterrent to China and North Korea.
BY THOMAS NEWDICK DECEMBER 30, 2021
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