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英国の中古機材を導入し、運用中の老朽警戒機の代わりにすればチリの警戒探知能力は飛躍的に伸びる。
チリ政府が英空軍が供用していたE-3Dセントリー空中警戒統制機材(AWACS)3機を購入したとの報道が出ている。チリ空軍で供用中のボーイング707原型の早期警戒機に交代させる。
複数の報道機関がRAFのE-3D3機のチリ売却を今週に入り伝えているが、英国チリ両政府は売却を公式に確認していない。チリ空軍は2機を運用し、三機目は部品取りに使う意向とJanesが伝えている。売却の総額は不明だ。
RAFはセントリー運用を1991年に開始し、最盛期には7機運用していたが、維持に困難を感じ始めた。2020年12月に飛行可能な機体は3機にまで減り、翌年全機の運用を終了した。RAFはボーイング737原型のE-7ウェッジテイル空中早期警戒指揮統制機を後継機として導入し、初号機は2023年に運用開始する。
米海軍も同型機1を購入の上改修してE-6Bマーキュリー乗員の専用訓練機にしている。E-6は「終末の日」機とも呼ばれ、米国の核抑止力部隊へ空中から命令を伝える任務をこなす。E-3D、E-6Bともに原型はボーイング707だ。
チリが中古セントリーを購入したと聞き驚く向きもあるかもしれない。だが、上記の通り、同国は707改装の空中早期警戒機1をコンドルの名称で運用している。
コンドルはイスラエル製 Elta EL/M-2075 ファルコンLバンドのフェイズドアレイレーダーを搭載し高性能機材といえる。機体にはアンテナアレイ6基を搭載し、機首が特徴的な球根上になっており、機体側部左右、尾部に搭載している。空中、海上の対象を追尾し、ある程度の電子情報収集能力もあるといわれる。また指揮統制機能も優れている。
HIPPOCAMELUS VIA WIKIMEDIA
チリ空軍のコンドル空中早期警戒指揮統制機
コンドルは1994年から供用されているが、原型機は製造が1965年でボーイングで試験機として使われたのちにチリのフラッグキャリアLAN-Chileエアラインに売却されたのが1969年だった。同社はその後LATAM Chileに社名変更している。
コンドルのエンジンは1950年代のプラット&ホイットニーJT3D低バイパスターボファンエンジンで維持運用が著しく高くつくようになってきた。また、ファルコンレーダーも複雑な機構で運用が困難だ。3機しか搭載しておらず、残り2機はイスラエル軍にある。
RAFのE-3Dも707改修だが、装備はより近代的で燃料消費効率が高いCFM56エンジンを搭載する。AN/APY-2パッシブ電子スキャンアレイレーダーをレドームに収容し、機体後部上に搭載し、空中、水上の標的を追尾しつつ、強力な通信装備で指揮統制機能をこなす。
米空軍他の機材と異なり、RAFはE-3Dの性能改修を行っておらず、チリ空軍は供用開始前に改修作業する可能性がある。
それでもE-3D導入でチリ空軍は大幅な機能向上を期待できる。コンドルは単機だが、E-3Dが2機あれば、複数地区を監視対象にしたり、長時間運用が可能となる。予備機も含めた早期警戒指揮統制機の実現が今回の取得で実現する。
チリ空軍の戦闘機部隊はF-16ヴァイパーが46機程度、F-5E/F改修型12機あり、このうちF-16の10機はブロック50仕様のC/D型で残りは旧型ブロック20だ。
チリは山地が多く、南北に極めて長い地形なのでAWACSの恩恵は大きい。とくに「ルックダウン」機能で小型かつ低高度を飛行中の標的への対応力は山岳地帯で有効だ。E-3は小型機に加え、小舟艇の探知能力が優れることでも知られ、麻薬密輸の取締まりで関係部局と連携した運用をチリが期待しているのだろう。
チリ空軍が元RAFのE-3Dをいつ運用開始するかはまだ不明だ。チリの機材購入には米政府承認が必要となる。手続き上が難航する兆候は今のところないが、長時間を要するお役所仕事の手続きを経る必要がある。Janesによれば今年末までにチリ空軍での供用を開始できそうだという。
RAFで運用を終えたE-3D各機がラテンアメリカで新しい供用先を見つけることになる。■
Chile Has Bought A Trio Of Retired E-3D Sentry Radar Planes From Britain: Reports
BY JOSEPH TREVITHICK JANUARY 20, 2022
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