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空母運用中のF-35C機体表面の汚れが気になる。レーダー吸収塗装が厳しい環境で劣化しているのだろうか。ステルス性能に影響は出ていないか。

 

USN

 

(メディア関係者の皆さんへ。F35Cではありません)

 

初の艦上運用に投入されたF-35Cの機体表面に錆のような付着物が見られる。

 

海軍のF-35Cステルス戦闘機はUSSカール・ヴィンソン艦上からの水没事故もあり、注目を集めているが、初の海上作戦運用で著しい劣化摩耗が現れている。レーダー吸収剤を塗布した機体表面は以前から環境条件に弱いと指摘されていた。

 

F-35のレーダー吸収剤(RAM)の整備性は大幅に改良されたはずだが、F-35C初の作戦投入での直近の画像を見ると、厳しい海上環境での塗装整備が本当に軽易になっているのか疑問が生じる。

 

ペンタゴンの国防映像情報配信サービス(DVIDS)で公開された最近の写真では打撃戦闘機飛行隊147(VFA-147)「アーゴノーツ」がニミッツ級空母USSカール・ヴィンソン(CVN-70)艦上で運用する機体で表面に劣化が進んでいることがわかる。写真は今月、同艦がフィリピン海を航行中に撮影されている。

 

空軍で供用中のF-35では見られない、表面に赤っぽい筋や汚れが海軍機の機体、主翼、尾翼に見られる。錆のようにも映る。

 

錆は機体の鉄、鋼で発生するが、複合材では起こらない。ただし、RAMは塩水に長く露出されると同様の現象があらわれる。F-35のRAM成分は極めて固く守られる秘密だが、主成分に鉄分がステルス技術初期から投入されていることが判明している。

 

U.S. NAVY

 

半年ほど海上展開したF-35Cが若干劣化しているのは間違いないが、赤茶色い汚れの原因は機体そのものに影響がなく、機体表皮の酸化もステルス性に大きな影響を与えない可能性がある。ただし、B-2やF-22など過去のステルス機で、低視認性処理が時間経過で劣化し、ある閾値に達するか、運用上の懸念から必要になった時点で、最適状態に戻すため補修が行われていることは注目に値する。

 

また、今回のF-35C型による初の空母運用展開の準備中に、ジェット機表皮の回復力が問題のひとつに挙げられていた。空母艦内でのステルス機の繊細な表皮の手入れは、陸上基地と同じだが、予備品や整備の専門家、専門工具が大量にない海上で重要な整備作業を行わなければならない場合は、より複雑な作業となる。さらに空母のスペースは限られるが、ステルス機整備には広い専用施設が必要となることが多い。

 

USN

 

また、空母艦上では機体の周囲を整備員等がたえず歩き回り、ジェット排気や海水噴霧を常に浴びる。さらに、作動油など油類があらゆるものに付着しがちだ。カール・ヴィンソン搭載のF-35Cは、こうした要因のいずれかが原因で劣化した可能性がある。

 

レーダー吸収材はF-35の生存性を高める一要素に過ぎず、複合材構造、特に前方から照射される火器管制レーダーを逸らすように調整されたエッジと放射状輪郭が慎重に配置されていることが別の要素だ。これらの特徴に加え、高度なセンサー、データ融合、ネットワーキング機能により飛躍的に向上した状況認識、電子戦、独自の戦術、最新の情報に基づき綿密に計画された任務プロファイルと組み合わせることで、同機は厳しい戦闘空域でも生き残ることができる。言い換えれば、RAMが多少劣化しても、脅威となるレーダーに完全に脆弱になるわけではない、ということだ。

 

米海軍はF-35Cのファクトシートで、同機は「従来の教訓と技術の突破口を組み合わせ、最も過酷な艦上条件でも、最小限のメンテナンスでステルス性を維持できる」と自慢している。

 

F-35Cの空母運用より前に、ロッキードは、600時間以上に相当する累積効果による「広範な損傷」の影響をモデルでシミュレートしたとする。また、レーダー断面積(RCS)の測定では、ステルス性が損なわれていないことが確認されたという。

 

2012年から海軍は艦上搭載のF-35向けの低視認性塗装とともに、専門設備なしで補修可能とするプロセスを開発していた。一方、米空軍のF-35A整備に関する説明では、高度かつ専門的な作業を労働集約的と強調することが多い。

 

空軍のF-35Aには、定期メンテナンスのためフライトラインで頻繁に取り外す・開けるパネルがあり、パネル固定用のファスナーも5,000以上に上る。「パネルの摩耗で、航空機のステルス性能を制限する可能性がある」と空軍は過去に述べており、同じことが空母上のF-35Cにも当てはまると思われる。

 

「F-35の表面に施されたレーダー吸収コーティングの保守整備は、細かい部分までマスキングし、薬品を適切に混ぜ、正確に塗布し、平滑化し、微小な欠陥も記録するなど、細部に非常にこだわり、時には退屈な仕事だ」と388整備飛行隊のフランシス・アネット上等兵曹は、空軍発表文で説明している。■

 

 

The F-35C's Radar-Absorbent Skin Is Looking Pretty Rough After Months At Sea

F-35Cs have become covered in rusty-looking deposits on their first operational carrier cruise.

BY THOMAS NEWDICK AND TYLER ROGOWAY JANUARY 29, 2022

https://www.thedrive.com/the-war-zone/44067/the-f-35cs-radar-absorbent-skin-is-looking-pretty-rough-after-months-at-sea




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