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エアシーバトル構想の対象は中国だ

AirSea Battle Concept Is Focused On China
aviationweek.com Apr 8, 2011

ゲイツ国防長官はそれを21世紀のアメリカの軍事抑止力を形成するものと表現している。海軍作戦部長はそれによりパラダイムが変わると発言している。
1. ここで話題になっているのは新しいエアシーバトル構想AirSea Battle conceptであり、空軍、海軍関係者が具体化しようとしているもの。
2. 米空軍、海軍双方が長期計画では中国に焦点を当てているのは公然の秘密だ。そこに進行中の技術革新が加わる。例えば無人戦闘航空機システム(UCAS)があるが、予算問題のため研究開発にくわえ調達まで制約がある中、中国の脅威に対抗するために新兵器の開発が急速に進むとは見られていない。そこで台頭するエアーシーバトル構想では既存体系を方向性を変えて使用し、ネットワークの活用で敵の侵入を阻止する・地域確保(A2/AD)環境下で作戦に制約がつかないことを確保する方策を求める。
3. 戦略予算評価センター(CSBA、本部ワシントン)がこのエアシーバトル構想についてより詳しい解説をしている。このCSBAでかつてアナリストをしていたロバート・ワークは海軍次官であり、他にも現政権で重要な役職につくアナリストが多い。同センターの報告書では「エアシーバトルは軍事作戦の指導原則だが、それだけでは戦闘に勝利することはできないし、そう理解されるべきではない。また、特定のシナリオとして例えば台湾の防衛の目的で利用されるべきでもない。むしろ、西太平洋地域における通常兵力のバランスを受け入れられる形に維持するための軍事作戦の条件を設定することに利用されるべき構想である」としている。
4. つまり中国との戦闘を想定しているのではなく、太平洋の西側における安定性を維持するための軍事バランスを維持するのを目的としている。これは中国の成長発展に対応するとともに中国の戦略・政策意図に透明性が欠如していることにも対応するものだ。ではCSBAはエアシーにどんな具体的内容を想定しているのか。
5. ● 空軍による宇宙空間作戦で中国人民解放軍(PLA)の宇宙配備海洋偵察衛星システムを利用不可能とする。また同システムにより対艦弾道ミサイルの照準設定を不可能とする。この目的で空軍がX-37B軌道上実験機を開発しているのかは不明だが、ヘリテージ財団によると中国国内では同機への懸念が広がっているという。
6. ●空軍のジョイントスターズ(共用監視目標攻撃レーダーシステム)機が1月にネットワーク活用兵器体系の実証実験に成功したとの発表があった。そこでは移動する艦艇を同機が追跡し、AGM-154C滑空爆弾がボーイングF/A-18E/Fから投下され同艦に命中している。
7. ● 海軍のイージス艦に弾道ミサイル防衛(BMD)機能を与えることで米空軍の先方配備基地に対空防衛を提供することができる。海上配備のBMD任務により米海軍の艦隊構成も変化し、DDG-1000クラスの開発よりもBMDに特化した既存バーク級駆逐艦の配備を優先することになる。
8. ●長距離侵攻による攻撃でPLAの地上配備長距離海上偵察能力(例 水平線の先を監視するレーダー)や対艦ミサイル基地を破壊する。あわせて潜水艦からの攻撃でPLAの統合防空システムを破壊し、空軍による攻撃に道を開く。


コメント AirSea Battleとは海軍と空軍の統合運用で既存兵力を有効に使おうということのようですね。それにしても内容は中国には大変刺激的なもののようです。その狙いは抑止力とともに中国の方向転換を狙おうというものではないでしょうか。当然、ここまで公開しているということは中国も対応策を作ることを想定しているということなので、ここでは公開できない内容が別にあるのでしょう。

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