スキップしてメイン コンテンツに移動

米陸軍のJMR新型ヘリコプター開発は思惑通り進展するか

U.S. Army Moves On Next-Gen Helo
aviationweek.com Apr 15, 2011

米陸軍は次世代回転翼機開発に向かいつつあるが、業界では「通常通り」の技術実証を重視する姿勢では何よりも必要とされる技術革新に結びつかないのではと懸念が強い。
1.陸軍が準備を進めているのは来月中に共用多目的回転翼機(JMR)の技術実証にむけた契約締結だ。もともと共用多目的という用語はこの10年間に見え隠れしてきたもので、現行の攻撃ヘリ、多用途ヘリの後継機を各軍共用で運用する考え方だ。これが今では米軍各部隊が運用するヘリの四種類をカバーする概念として拡大解釈されている。
2.JMRとは具体的な機種ではなく、重量別に軽量級、中間級、重量級、超重量級の四つに分かれるものと言うのが陸軍の考え方だ。重量別に分類する際の区分を空力学的な機体構造で考えるが、四区分全体で偵察、攻撃、輸送、大型輸送をカバーするもの。
3.JMRが想定する運用開始は2025年から2030年で、現時点ではまだ確立されていない技術を利用する。現行機種の生産は2018年を境に減少する見込みで多少の改修はあろうが、同じ頃に陳腐化してしまうと米陸軍は見ている。
4.そこで陸軍の対応はJMRの技術実証で2010年代末までに次世代回転翼機の開発を開始することだ。 新型機種の開発にはまだ時間があるが、技術開発予算が制約を受ける中で技術要素を取りまとめる意味でもJMRにより陸軍は前に進むきっかけになる。
5.陸軍の航空応用技術局がbroad agency announcement (BAA)通達でJMR実証機の構成要求を1月に発している。まずこの研究段階で広範囲な性能要求に関する中核技術の定義をする事で今後の投資分野を把握しようというものだ。
6.この研究はJMRでいう中間重量級に焦点を当ててAH-64D、UH-60M、AH-1Z、UH-1Yのそ各後継機種を検討する。さらに軽量級ではOH- 58D、重量級はCH-47Fの場合でも共通した技術要素を取り上げる。超重量級は今回は想定外であるのは米空軍が中心となり共用将来型戦域輸送機(JFTL)構想の対象範囲とのため。陸軍の研究対象である超大型垂直離着陸機は空軍のC-130J後継機種開発に統合されJFTLとなった。ただ代替手段研究(AOA)は承認を得られなかった。空軍が研究後の技術開発に予算を計上しなかったためだ。ただ、AOAは予算4百万ドルの技術研究に姿を変えた。 2010年10月発行の情報能力要求(CRFI)で固定翼、ティルト翼、回転翼、飛行船それぞれの形態で垂直離着陸形式で20トンから36トンのペイロードで巡航速度、高度はC-130Jと同等かそれ以上の性能を想定している。
7. JFTLのCRFIでは技術成熟度で6段階を2019年までに確保し、第一線配備を2024年以降とすることを求めている。技術研究は今年末に完了し、 2014年度予算要求のタイミングに間に合わせる。ただJFTLでは垂直離陸のみの実現は想定していない。陸軍はそこでJMRウルトラの構想に戻ることになろう。
8.陸軍は5月中に3から5件の契約を締結し、JMRの構成検証を24ないし30ヶ月で完了したい意向だ。検証は紙面に限定されるが、中核技術要素を確認し、飛行実証機に採用するべき内容とすることだ。
9.要求事項には高速、ペイロード増加が入っているが、それには相応のコストが必要となる。これまではいつも飛行速度がリストの最上位にあったが、実際には低速度運用とのバランスも必要だ。高速飛行には犠牲が必要だ。従って各要素のバランスが必要で速度もその例外ではない。
10.BAAで基本性能の概要を示し、その内容はさらに実証機の内容を見て検討される。並行して実用型JMRの初期能力内容文書(ICD)を陸軍は来年に作成するが、中型JMRに特化するのか、各型毎に能力開発内容文書(CDD)として作成するのかは未決だ。ICDとは運用上の要求事項を、CDDはウェポンシステムとしての開発に必要な性能水準を定めるものだという。その後にJMRの技術実証があり、二機で各種研究とICDの内容の中核をなす技術を検討する。陸軍は2013年度予算で実証契約を複数交付する考えで、技術が成熟するのは2015年から2016年にかけてと予測している。
11.実証機そのものが新型機種である必要はないし、試作機という扱いにもならないが、JMR技術の実証が次の取得日程につながるのは確かだ。全体ではこれまで回転翼機に支出されてきた技術開発費用を上回る予算が必要になる。
12.またJMRはより大型の機体を想定する未来型垂直飛行機体(FVL)構想の一部でもあり、ペンタゴンは2010年にFVL戦略案を議会に提出している。そのなかで性能要求とロードマップで技術習得の道筋を示している。
13.FVL計画の一部としてペンタゴンは垂直航空機コンソーシアム(VLC)に業界各社を招き技術革新の速度をあげることを目標に据えている。ここに既存メーカーのみならず新規参入企業、学界も加わり合計97社/団体となり国防総省と「その他取引合意」(OTA)を締結しており、研究プロジェクトの迅速な展開をより経済的に行うことになっている。ただ同コンソーシアムに痛いのは陸軍はJMR実証にはこのOTAを根拠としない方針にしていることだ。
14.VLC の問題意識は技術実証のコストが高くなりすぎていることであり、陸軍のJMR実証への対応方針が「これまでどおり」であることに懸念を示している。実証機を飛行させるまでのペーパーワークで米国の回転翼機産業の再活性化に必要な技術革新・競争の勢いがそがれるとの懸念もある。
15.業界は低コストの技術開発をスピーディーに展開してリスクを低減する必要を感じており、VLCはその意味で重要と考えている。通常のペンタゴンの手続きでは 2億ドルかけて戦闘機の実証機が一機完成する。スカンクワーク方式では5千万ドルで実現する、という。その例としてパイアセッキX-49A複合ヘリとシコルスキーX2同軸ローターという実証機の例がある。16.コストが高くなり、予算が十分でないなるとペンタゴンは実証段階から開発への移行を急ぎ過ぎる傾向がある。事前選定で絞り込み過ぎると競争がなくなり、技術革新の種も捨てられないか、というのが業界の懸念だ。ペンタゴンの新しい科学技術開発戦略は年間25億ドルをIR&D(独立型研究開発)に用意するものだが、最近の産業界の独自研究はペンタゴンのニーズと方向性を一致させておらず、低コストかつ短期間の開発技術に焦点をあわせている。それに対してIR&Dの進捗状況を報告させる新しいルールづくりも効果があろうが、そもそもペンタゴンが目指す方向性が業界にわからなければ対応できないというのも業界の率直な反応である。■

コメント

このブログの人気の投稿

★★★★北朝鮮ミサイルが中国衛星で誘導されている可能性

中国も北朝鮮関連では叩けば埃がどんどん出そうですね。北京が見切りをつければ平壌の現政権など簡単に転覆させるでしょうが、中国国内にある北朝鮮とのしがらみ(おそらく共産党内部の派閥争い)と東北部の軍の非合法ビジネスの問題があり、米国といったん話がついても実施が難しいのでしょう。そのうちにしびれを切らした米国が単独行動に出るかもしれません。
Record China Is North Korea Using China's Satellites to Guide Its Missiles? 北朝鮮は中国衛星を使ってミサイル誘導をしているのか
Peter J. Brown May 23, 2017 http://nationalinterest.org/blog/the-buzz/north-korea-using-chinas-satellites-guide-its-missiles-20810?page=show

北朝鮮がミサイル発射を繰り返し米本土を狙うICBM開発に走る中、ひとつ見落とされている点がある。ミサイルに衛星誘導を使っているのではないか。北朝鮮に衛星航法ネットワークはないため、中国衛星を利用しているとの観測がある。 2014年報道で北朝鮮技術者が中国国内で北斗Beidou衛星航法システムの運用を研修中とある。同年の別の記事で中国軍専門官から中国は北朝鮮による北斗の軍事利用を止められないと発言している。 北斗以外に北朝鮮の選択肢として米露両国のGPSがあり、ロシアはグロナスGlonasと呼んでいる。 「グロナスの可能性もありますが、ミサイル誘導に北斗を利用している可能性の方が高い」と小泉 悠(未来工学研究所特別研究員、ロシア安全保障問題)がメールで述べており、ロシアは北の核実験後に武器および軍事関連技術の北朝鮮向け禁輸措置を取っているがグロナスが対象かは不明と小泉は述べる。 北斗衛星群打ち上げは1994年に始まり、現在は東アジア以遠まで展開している。北斗は民生商業用途と軍用の両面で利用され、軍用では妨害を受けず正確にデータが利用できる。 北朝鮮が北斗の軍用機能を利用しているか不明だが、民生用機能で精密誘導兵器を運用しているとは考えにくい。というのは北斗の民生機能は日米韓の電子妨害に弱く有事の際に北朝鮮が利用するのは困難になるためだ。 「特別のチップならびに中国の協力がな…

★★ロッキードが極超音速技術の完成に近づいている模様、SR-72との関連へ注目

Amid SR-72 Rumors, Skunk Works Ramps Up HypersonicsSR-72の噂と関連か、スカンクワークスの極超音速技術が加速中
Sep 27, 2017Guy Norris | Aerospace Daily & Defense Report http://aviationweek.com/technology/amid-sr-72-rumors-skunk-works-ramps-hypersonics
SR-72: Lockheed Martin FORT WORTH, Texas—ロッキード・マーティンが極超音速技術開発を加速化しており、初の実証機を目撃したとの報告もあり、スカンクワークスが進めるSR-72高速機開発との連関が注目される。 「詳細は言えませんが、スカンクワークスのあるカリフォーニア州パームデールで超高速飛行実現の動きを倍増しています」とロッキード・マーティンで航空力学執行副社長オーランド・カバルホOrlando CarvalhoがSAE 国際航空技術学会で語っている。「端的に申し上げれば米国は極超音速革命まであと一歩まで来ています」 Darpaと米空軍研究実験部門が共同で進める推進滑空兵器および極超音速空気取り入れ式兵器コンセプト研究に言及して、カバルホは「この十年で研究は大幅に進み、極超音速技術で状況が一変する意味があることが明らかになってきました。今後も研究テストを進め、極超音速飛行の実現にDarpaとのプロジェクト二件を活用します。国家安全保障ではスピードが肝心です」 SR-72への言及はなかったが、同社が極超音速機として退役済みの高速SR-71ブラックバードの後継機を提案中であることは広く知られており、カバルホの前向きな発言はロブ・ワイスRob Weiss(ロッキード・マーティンの高性能開発事業体執行副社長兼総支配人)の発言に重なる。6月にワイスはAviation Weekに選択的に有人操縦となるSR-72の前身となる飛行研究用機体(FRV)が予定通り進行中と暗に述べていた。 スカンクワークスはFRV開発を来年から始めるといわれ、初飛行予定は2020年だ。FRVはF-22ほどの機体サイズで推進力はフルスケールのコンバインドサイクルエンジン一基だ。しかし実証機に先立ち、ロッキードは各種技術の地上・飛行テスト…

★★真偽は?日本もUCAVを開発していた

日本にもブラック事業がある(あった)のでしょうか。映像公開したのは機密解除になったのか、事業がもっと先に進んでいるからでしょうか。各務原での目撃がないことから別の場所で秘密裏に開発されたのでしょうか。川崎重工関係者は口がさけても語れないと思いますが、事実なら日本もUAV-UCAVを開発していることがわかりますね。判断は読者の皆さんにおまかせします。This is the combat drone Japan has been building in secretこれが秘密裏に開発していた日本の戦闘無人機だ 川崎重工ブースのビデオでUCAV試作機の飛行状況を写していた (Photo by Harold Hutchison) By Harold HutchisonOct. 06, 05:10 AM http://www.wearethemighty.com/news/this-is-the-combat-drone-japan-has-been-building-in-secret
無人戦闘航空機、つまりUCAVはこれからの軍事航空のカギを握ると言われる。米国、ロシア、フランスが開発中と判明している。 だが本誌We Are The Mighty (以下WATM)はこのたび日本も秘密裏にUCAV開発を進めていたことを知った。 ワシントンで先ごろ開催された空軍関係のイベントでWATMは川崎重工業のブースでビデオ画像を見た。それは同社によるUCAV研究開発の様子で、画像内のUCAVはボーイングX-45やノースロップ・グラマンX-47に似ているようだった。 会場で詳しく聞こうとしたが、同社係員が日本政府の意向だとしてやんわりと断ってきた。翌日も別の係員はこの件は存じていないと答えてきた。 結局三番目に会った川崎重工の小林タクミ氏が「試験機で10年近く前のもの」とし、「防衛省予算による実験事業だった」と説明してくれた。同氏はさらにメールで「2008年ごろのプロジェクト」と述べている。 WATMが当時空軍の筆頭参謀次長として情報監視偵察分野を担当し現在は航空宇宙研究にあたるミッチェル研究所の所長をしているデイブ・デプチュラ退役空軍中将に日本がUCAV開発をしていた事実を知っているか聞いたところ、即座に「知らない」との答えが返ってきた。 このことから日本のUCAVは秘密のベールに隠されていたことがわか…