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2011年4月24日日曜日

米陸軍のJMR新型ヘリコプター開発は思惑通り進展するか

U.S. Army Moves On Next-Gen Helo
aviationweek.com Apr 15, 2011

米陸軍は次世代回転翼機開発に向かいつつあるが、業界では「通常通り」の技術実証を重視する姿勢では何よりも必要とされる技術革新に結びつかないのではと懸念が強い。
1.陸軍が準備を進めているのは来月中に共用多目的回転翼機(JMR)の技術実証にむけた契約締結だ。もともと共用多目的という用語はこの10年間に見え隠れしてきたもので、現行の攻撃ヘリ、多用途ヘリの後継機を各軍共用で運用する考え方だ。これが今では米軍各部隊が運用するヘリの四種類をカバーする概念として拡大解釈されている。
2.JMRとは具体的な機種ではなく、重量別に軽量級、中間級、重量級、超重量級の四つに分かれるものと言うのが陸軍の考え方だ。重量別に分類する際の区分を空力学的な機体構造で考えるが、四区分全体で偵察、攻撃、輸送、大型輸送をカバーするもの。
3.JMRが想定する運用開始は2025年から2030年で、現時点ではまだ確立されていない技術を利用する。現行機種の生産は2018年を境に減少する見込みで多少の改修はあろうが、同じ頃に陳腐化してしまうと米陸軍は見ている。
4.そこで陸軍の対応はJMRの技術実証で2010年代末までに次世代回転翼機の開発を開始することだ。 新型機種の開発にはまだ時間があるが、技術開発予算が制約を受ける中で技術要素を取りまとめる意味でもJMRにより陸軍は前に進むきっかけになる。
5.陸軍の航空応用技術局がbroad agency announcement (BAA)通達でJMR実証機の構成要求を1月に発している。まずこの研究段階で広範囲な性能要求に関する中核技術の定義をする事で今後の投資分野を把握しようというものだ。
6.この研究はJMRでいう中間重量級に焦点を当ててAH-64D、UH-60M、AH-1Z、UH-1Yのそ各後継機種を検討する。さらに軽量級ではOH- 58D、重量級はCH-47Fの場合でも共通した技術要素を取り上げる。超重量級は今回は想定外であるのは米空軍が中心となり共用将来型戦域輸送機(JFTL)構想の対象範囲とのため。陸軍の研究対象である超大型垂直離着陸機は空軍のC-130J後継機種開発に統合されJFTLとなった。ただ代替手段研究(AOA)は承認を得られなかった。空軍が研究後の技術開発に予算を計上しなかったためだ。ただ、AOAは予算4百万ドルの技術研究に姿を変えた。 2010年10月発行の情報能力要求(CRFI)で固定翼、ティルト翼、回転翼、飛行船それぞれの形態で垂直離着陸形式で20トンから36トンのペイロードで巡航速度、高度はC-130Jと同等かそれ以上の性能を想定している。
7. JFTLのCRFIでは技術成熟度で6段階を2019年までに確保し、第一線配備を2024年以降とすることを求めている。技術研究は今年末に完了し、 2014年度予算要求のタイミングに間に合わせる。ただJFTLでは垂直離陸のみの実現は想定していない。陸軍はそこでJMRウルトラの構想に戻ることになろう。
8.陸軍は5月中に3から5件の契約を締結し、JMRの構成検証を24ないし30ヶ月で完了したい意向だ。検証は紙面に限定されるが、中核技術要素を確認し、飛行実証機に採用するべき内容とすることだ。
9.要求事項には高速、ペイロード増加が入っているが、それには相応のコストが必要となる。これまではいつも飛行速度がリストの最上位にあったが、実際には低速度運用とのバランスも必要だ。高速飛行には犠牲が必要だ。従って各要素のバランスが必要で速度もその例外ではない。
10.BAAで基本性能の概要を示し、その内容はさらに実証機の内容を見て検討される。並行して実用型JMRの初期能力内容文書(ICD)を陸軍は来年に作成するが、中型JMRに特化するのか、各型毎に能力開発内容文書(CDD)として作成するのかは未決だ。ICDとは運用上の要求事項を、CDDはウェポンシステムとしての開発に必要な性能水準を定めるものだという。その後にJMRの技術実証があり、二機で各種研究とICDの内容の中核をなす技術を検討する。陸軍は2013年度予算で実証契約を複数交付する考えで、技術が成熟するのは2015年から2016年にかけてと予測している。
11.実証機そのものが新型機種である必要はないし、試作機という扱いにもならないが、JMR技術の実証が次の取得日程につながるのは確かだ。全体ではこれまで回転翼機に支出されてきた技術開発費用を上回る予算が必要になる。
12.またJMRはより大型の機体を想定する未来型垂直飛行機体(FVL)構想の一部でもあり、ペンタゴンは2010年にFVL戦略案を議会に提出している。そのなかで性能要求とロードマップで技術習得の道筋を示している。
13.FVL計画の一部としてペンタゴンは垂直航空機コンソーシアム(VLC)に業界各社を招き技術革新の速度をあげることを目標に据えている。ここに既存メーカーのみならず新規参入企業、学界も加わり合計97社/団体となり国防総省と「その他取引合意」(OTA)を締結しており、研究プロジェクトの迅速な展開をより経済的に行うことになっている。ただ同コンソーシアムに痛いのは陸軍はJMR実証にはこのOTAを根拠としない方針にしていることだ。
14.VLC の問題意識は技術実証のコストが高くなりすぎていることであり、陸軍のJMR実証への対応方針が「これまでどおり」であることに懸念を示している。実証機を飛行させるまでのペーパーワークで米国の回転翼機産業の再活性化に必要な技術革新・競争の勢いがそがれるとの懸念もある。
15.業界は低コストの技術開発をスピーディーに展開してリスクを低減する必要を感じており、VLCはその意味で重要と考えている。通常のペンタゴンの手続きでは 2億ドルかけて戦闘機の実証機が一機完成する。スカンクワーク方式では5千万ドルで実現する、という。その例としてパイアセッキX-49A複合ヘリとシコルスキーX2同軸ローターという実証機の例がある。16.コストが高くなり、予算が十分でないなるとペンタゴンは実証段階から開発への移行を急ぎ過ぎる傾向がある。事前選定で絞り込み過ぎると競争がなくなり、技術革新の種も捨てられないか、というのが業界の懸念だ。ペンタゴンの新しい科学技術開発戦略は年間25億ドルをIR&D(独立型研究開発)に用意するものだが、最近の産業界の独自研究はペンタゴンのニーズと方向性を一致させておらず、低コストかつ短期間の開発技術に焦点をあわせている。それに対してIR&Dの進捗状況を報告させる新しいルールづくりも効果があろうが、そもそもペンタゴンが目指す方向性が業界にわからなければ対応できないというのも業界の率直な反応である。■

2010年10月9日土曜日

米陸軍が進める共用ヘリ開発に業界の関心が集まっています

U.S. Army Rotorcraft Initiative Draws Praise

aviationweek.com Oct 8, 2010

米陸軍は発達型回転翼の技術実証を準備中で、2025年頃に新型ヘリとして生産に入る可能性がある。
  1. 陸軍は他の軍組織と共用多目的ヘリ(JMR)技術実証を進めており、このコンセプトは共用打撃戦闘機(JSF)F-35として実現に至った共用高性能戦闘機開発の例を参考としている。
  2. 今回の開発は回転翼機業界から新規開発計画を求める悲痛な声に応える意味もある。ただし、陸軍がJMR技術実証実験を新型機の開発、生産にそのままつなげる意図があるかは明らかではない。
  3. 業 界ではJMR実証を歓迎したものの、予算規模があきらかでなく、最近組織化された垂直輸送コンソーシアムの役割も明確にされていないことに不安を感じてい る。同コンソーシアムは国防総省の求めで回転翼機の技術革新を進めるべく、大手・中小メーカーと学界を連携させようとするもの。
  4. 「二 種類の機体をゼロから作り、それぞれの仕様は似たものになるか、全く違うものになるかは不明です」とネッド・チェイス陸軍航空ミサイル研究所の開発・エン ジニアリングセンター(Amrdec)の機体技術部長は語る。高性能ヘリ、混合ヘリあるいはティルトローターの採用が検討されている。
  5. 陸軍はNASA、DARPA(国防高等研究プロジェクト庁)が他軍とともに予算を確保することを期待している。「予算があれば3機になるかもしれません」(Armdecの航空開発部長ジム・スナイダー)
  6. JMR が狙うのは米陸軍が運用中の既存ヘリ全機種の後継機となる以外に米海軍、海兵隊、空軍が運用する小型機の後継機に なる機体へ向けての技術実証だ。狙いは中型機と分類されるAH-64アパッチとUH-60ブラックホークの後継機の開発におかれている。一方で、機体を小 型化しOH-58Dカイオワ・ウォリアー武装偵察ヘリの後継や逆に大型化してCH-47チヌーク大型輸送ヘリの後継機も意図している。
  7. 実 はJMR実証機の狙いは共用高性能回転翼機技術(JART)として1998年に提案があったものに類似している。JARTは結局各軍から高価過ぎるとして 支持を得られなかった経緯があるが、今回は保有機の経年変化が進む中で陸軍も他に選択肢がなくなっているとの認識であるといわれる。
  8. 陸 軍は今も新造機を購入しているが、その基本設計は60年代、70年代であり、イラク・アフガニスタンでの作戦運用では性能限界、信頼性、生存性にもに限界 があることが浮き彫りになった。JMRではペイロード、航続距離、速度、耐久性、生存性、価格のすべてで現在の水準以上のものを求める。
  9. 目 標は最低170ノット、空中給油なしで半径474キロメートルの飛行を高度6,000フィートで実現し、貨物輸送ミッションで30分、攻撃・偵察ミッショ ンで120分を目的地で使える性能だ。仕様を研究してみたところ、まず機体の大型化が必要と判明したとスナイダーは語り、陸軍は有人・無人仕様の編成で予 算内で購入が容易になるよう期待しているとのこと。
  10. 陸 軍はすでに初期段階の検討を完了しており、第二段階の性能諸元の検討に移っている。Amrdecは2011年度はじめまでに業界向けに研究開発の公募を発 表する予定。ただし、チェイスによると他軍との共同開発の交渉のため、この予定は本来より遅れている。開発契約の交付は今のところ2011年中頃になると 見られる。
  11. 計 画では2011年から2013年にかけて機体構成を研究し、飛行実証実験がその後実施され、2020年をめどにJMR技術を応用した回転翼機の最初のモデ ルの開発を5カ年で実施する決定をする。機体の運用開始は2026年ごろになり、F-22やF-35の例に近い開発期間とし、V-22オスプレイは RAH-66コマンチよりは短くできるとしている。
  12. では現有ヘリのどの機種と最初に交代することになるのかは陸軍の決断でARH-70の開発中止で武装偵察任務の要求水準をどうするか次第だとスナイダーはいう。JMR技術が実用化するまではOH-58Dを改良するか、別の機種をつなぎで購入する選択肢もありうるという。
  13. 飛行実証実験は二段階となる。第一段階でJMRの中核となる性能を実証する。初飛行は2017年度中頃の予定。第二段階では機体に任務用装備を搭載し、各軍別に開発するエイビオニクスのアーキテクチャの有効性を実証する。
  14. エ イビオニクスはオープンアーキテクチャでプラグアンドプレイ方式のもので開発はすでに開始されており、コックピットの改善、生存用装備、有人・無人混合運 用を想定している。アーキテクチャ共用化でハードウェアも共用でき、機体の大きさに応じた調整も可能とし運用コスト低下を狙う。
  15. 一 方、垂直輸送コンソーシアム(VLC)のメンバー各社の上層部が先週会合を持ち、現在未定のJMR性能諸元研究への対応を検討したが、陸軍は同コンソーシ アムへの支援を打ち切る兆しをみせている。もともと同コンソーシアムは回転翼機の開発と配備をスピードアップし、既存主契約会社が新興かつ革新的な技術を 持つ部品メカーと共同作業を進めることを目的に結成されたのだが。
  16. フィ ル・ダンフォード(ボーイングの回転翼機部門の最高業務責任者)はJMR技術実証は米国の回転翼機メーカーにとって共同作業の機会と語る。「以前と同じ方 法で動けば、今までと同じ成果にしかなりません。各社が一緒になり、協力すべきところと競争すべきところを区別して第二段階を迎えるべきです」
  17. 一 方でスナイダーはJMRで技術事象から開発段階、生産段階へ移行する際の課題をこう表現している。「JMRを成功させるには投資効果を証明するのが一番の近道で す。現有機種をこれから30年間も延長して運用することは不可能だと示す必要があります。」このため陸軍は機種別に飛行時間あたりの費用を計算中。「その 結果をJMRに応用します」