China's J-20 Stealth Fighter In Taxi Tests
aviationweek.com Dec 30, 2010
1. 中国初のステルス機が先週末に高速地上走行試験を成都飛機工業集団の飛行場内で実施した。J-20の呼称といわれ、予想よりも大型の機体であることから、長距離と大規模な搭載能力を持っていると考えられる。
2. これによりゲイツ国防長官が2009年に予測していた中国にはステルス機の運用能力は2020年までには不可能とする内容、これがロッキード・マーティンF-22生産中止につながっている、そのものに疑念をいだかせることになる。
3. そもそもJ-20の存在は2009年に任人民解放軍空軍副司令官がテレビ取材で発言している。当時同副司令官は「第四世代戦闘機」(ステルス機の中国名称)は2010年ないし11年に初飛行し、2017年から19年に実戦配備となる、と語っていた。
4. J- 20は単座双発機でスホイT-50やF-22と比較しても大型の機体だ。地上車両と比較しても全長は75フィート、翼巾45フィート以上あるとみられることから離陸重量は75千ポンドないし80千ポンド級(外部搭載なしの状態で)あると考えられる。これは内部燃料搭載量が相当あることを示唆し、比較例では 60年代のジェネラルダイナミクスF-111が34千ポンドの燃料を搭載していた。
5. J- 20には同じ成都J-10と同様のカナード翼があり、T-50と同様に垂直尾翼は可動式である他、前部安定版には傾斜がついている。ステルス性機体の形状はF-22と類似している。機体表面は平滑で尾翼とそろえられており、主翼と機体の接合部はきれいに処理されている。傾斜角はF-35より大きく、キャノピーにはフレームがない点でF-22に似ている。
6. 搭載エンジンはロシア製サターンAL-31Fの系列である可能性が高い。生産型には今後実用化飲み込みの国産エンジンが搭載されるだろう。空気取り入れ口には分流無しで超音速を可能とするDSI技術が採用されており、F-35が最初に実用化して中国もJ-10Bとパキスタン共同開発のJF-17でも実用化している技術だ。
7. 着陸装置は機体側部に格納される構造でF-22と同様にその前部に兵装庫があることを示唆している。地上高はF-22よりも大きく、空対地ミサイルなど大型の兵装を運用できるだろう。11月の珠海航空ショーにおいて中国側技術陣はJ-20に新開発の空対地兵装の搭載の可能性を示していた。
8. これに対して機体後部の構造はステルス性が低いことを示しており、J-20にはF-22の持つ全方位ステルス性がないと見られる。これには二つの可能性がある。今回目撃された機体が実戦型機体開発のための最初の設計なのか、中国の求める性能要求に後部のステルス性は重要視されていないのか、だ。
9. そこで現時点ではJ-20とはT-50同様の試作機なのか技術実証用の機体なのかが大きな疑問点だ。この答えは今後1年から2年以内に何機のJ-20が飛行試験に加わるかを見ることで解決される。
10. 多様な任務をこなすステルス機の開発は単に機体の開発で実現するものにあらず、自動的にデータを組み合わせるセンサー、排気の制御、探知されにくいデータリンクが必要となる。中国の戦闘用航空機開発はただでさえ多忙となっており、短期間で高性能機体を実用化するのは大きな挑戦だ。ただ、J-10初飛行を 1996年に実現してからの中国空軍力開発は急ピッチで進展しており、経済の発達に加え人民解放軍が全方位で装備の近代化を進めていることがその背景にある。
11. ただエンジン開発の遅れが機体開発に影響している。瀋陽WS-10エンジンの信頼性と耐久性に問題があるとの情報がある。高性能エンジンには特殊合金や他に転用の聞かない工程が必要であることから、開発に時間がかかるのは至極当然のことだ。
12. エイビオニクス技術の進展の恩恵を受け、アクティブ電子走査スキャンアレイ、赤外線探知追跡装置を搭載する他、電子戦用の装備も搭載されているだろう。
13. すぐには答えが出ないだろうが同機開発にどれだけのサイバー諜報情報が活用されているのだろうか。米国国防産業のサイバー保安部門専門家は2006年(J- 20開発がスタートしたと思われる年)に高度持続的脅威(APT)と呼称される国防軍事産業を対象にしたサイバー脅威の存在を指摘している。高度なテクニックで侵入して情報を引き出すのが特徴だ。
14. APTは極秘の分野の外ではほとんど議論されていないが圧倒的大部分は特定一カ国から攻撃が発信されているという。
15. 2009年から2010年にかけてロッキード・マーティンは傘下の契約企業「6ないし8社」で「電子メール、ネットワークその他で完全に保安体制がゆるい」事を認識している。
16. J- 20のベールがはがされたのは中国式の情報活用・統制方法で国内の注目を集める意図もあるのだろう。試験場所は成都市内にあり、保安体制は欠如し、誰でも目に出来る場所だ。写真撮影は原則禁止というものの、携帯電話のカメラ撮影は黙認されているとの報道もある。12月25日以降中国国内のインターネット掲示板に複数の写真が掲載されており、日を追うごとに写真の質が向上している。その結果、国際社会からの関心も高くなっているが、中国による公式の発表は一切無い状態だ。
コメント 今年は中国のプレゼンス、なかんずく国防力の拡張に多大の関心が示された年でした。その締めくくりにこういうニュースが入るのは意味がありそうです。F-22の生産中止決定が本当に正しかったのか、F-35に労力を取られながら開発が遅延している間に隣国は手段を問わず次世代機を開発しています。情報戦の様相もあり、機密漏洩を恐れる米国が日本にF-22の提供を拒んだのも理解出来ないことはありませんね。ここまで来ると日本も真剣に空軍力の拡充を考えないといけないのではないでしょうか。
aviationweek.com Dec 30, 2010
1. 中国初のステルス機が先週末に高速地上走行試験を成都飛機工業集団の飛行場内で実施した。J-20の呼称といわれ、予想よりも大型の機体であることから、長距離と大規模な搭載能力を持っていると考えられる。
2. これによりゲイツ国防長官が2009年に予測していた中国にはステルス機の運用能力は2020年までには不可能とする内容、これがロッキード・マーティンF-22生産中止につながっている、そのものに疑念をいだかせることになる。
3. そもそもJ-20の存在は2009年に任人民解放軍空軍副司令官がテレビ取材で発言している。当時同副司令官は「第四世代戦闘機」(ステルス機の中国名称)は2010年ないし11年に初飛行し、2017年から19年に実戦配備となる、と語っていた。
4. J- 20は単座双発機でスホイT-50やF-22と比較しても大型の機体だ。地上車両と比較しても全長は75フィート、翼巾45フィート以上あるとみられることから離陸重量は75千ポンドないし80千ポンド級(外部搭載なしの状態で)あると考えられる。これは内部燃料搭載量が相当あることを示唆し、比較例では 60年代のジェネラルダイナミクスF-111が34千ポンドの燃料を搭載していた。
5. J- 20には同じ成都J-10と同様のカナード翼があり、T-50と同様に垂直尾翼は可動式である他、前部安定版には傾斜がついている。ステルス性機体の形状はF-22と類似している。機体表面は平滑で尾翼とそろえられており、主翼と機体の接合部はきれいに処理されている。傾斜角はF-35より大きく、キャノピーにはフレームがない点でF-22に似ている。
6. 搭載エンジンはロシア製サターンAL-31Fの系列である可能性が高い。生産型には今後実用化飲み込みの国産エンジンが搭載されるだろう。空気取り入れ口には分流無しで超音速を可能とするDSI技術が採用されており、F-35が最初に実用化して中国もJ-10Bとパキスタン共同開発のJF-17でも実用化している技術だ。
7. 着陸装置は機体側部に格納される構造でF-22と同様にその前部に兵装庫があることを示唆している。地上高はF-22よりも大きく、空対地ミサイルなど大型の兵装を運用できるだろう。11月の珠海航空ショーにおいて中国側技術陣はJ-20に新開発の空対地兵装の搭載の可能性を示していた。
8. これに対して機体後部の構造はステルス性が低いことを示しており、J-20にはF-22の持つ全方位ステルス性がないと見られる。これには二つの可能性がある。今回目撃された機体が実戦型機体開発のための最初の設計なのか、中国の求める性能要求に後部のステルス性は重要視されていないのか、だ。
9. そこで現時点ではJ-20とはT-50同様の試作機なのか技術実証用の機体なのかが大きな疑問点だ。この答えは今後1年から2年以内に何機のJ-20が飛行試験に加わるかを見ることで解決される。
10. 多様な任務をこなすステルス機の開発は単に機体の開発で実現するものにあらず、自動的にデータを組み合わせるセンサー、排気の制御、探知されにくいデータリンクが必要となる。中国の戦闘用航空機開発はただでさえ多忙となっており、短期間で高性能機体を実用化するのは大きな挑戦だ。ただ、J-10初飛行を 1996年に実現してからの中国空軍力開発は急ピッチで進展しており、経済の発達に加え人民解放軍が全方位で装備の近代化を進めていることがその背景にある。
11. ただエンジン開発の遅れが機体開発に影響している。瀋陽WS-10エンジンの信頼性と耐久性に問題があるとの情報がある。高性能エンジンには特殊合金や他に転用の聞かない工程が必要であることから、開発に時間がかかるのは至極当然のことだ。
12. エイビオニクス技術の進展の恩恵を受け、アクティブ電子走査スキャンアレイ、赤外線探知追跡装置を搭載する他、電子戦用の装備も搭載されているだろう。
13. すぐには答えが出ないだろうが同機開発にどれだけのサイバー諜報情報が活用されているのだろうか。米国国防産業のサイバー保安部門専門家は2006年(J- 20開発がスタートしたと思われる年)に高度持続的脅威(APT)と呼称される国防軍事産業を対象にしたサイバー脅威の存在を指摘している。高度なテクニックで侵入して情報を引き出すのが特徴だ。
14. APTは極秘の分野の外ではほとんど議論されていないが圧倒的大部分は特定一カ国から攻撃が発信されているという。
15. 2009年から2010年にかけてロッキード・マーティンは傘下の契約企業「6ないし8社」で「電子メール、ネットワークその他で完全に保安体制がゆるい」事を認識している。
16. J- 20のベールがはがされたのは中国式の情報活用・統制方法で国内の注目を集める意図もあるのだろう。試験場所は成都市内にあり、保安体制は欠如し、誰でも目に出来る場所だ。写真撮影は原則禁止というものの、携帯電話のカメラ撮影は黙認されているとの報道もある。12月25日以降中国国内のインターネット掲示板に複数の写真が掲載されており、日を追うごとに写真の質が向上している。その結果、国際社会からの関心も高くなっているが、中国による公式の発表は一切無い状態だ。
コメント 今年は中国のプレゼンス、なかんずく国防力の拡張に多大の関心が示された年でした。その締めくくりにこういうニュースが入るのは意味がありそうです。F-22の生産中止決定が本当に正しかったのか、F-35に労力を取られながら開発が遅延している間に隣国は手段を問わず次世代機を開発しています。情報戦の様相もあり、機密漏洩を恐れる米国が日本にF-22の提供を拒んだのも理解出来ないことはありませんね。ここまで来ると日本も真剣に空軍力の拡充を考えないといけないのではないでしょうか。
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