スキップしてメイン コンテンツに移動

中国の軍事力整備で戦略バランスはどう変わるのか

Chinese Buildup Upsets Strategic Balance
aviationweek.com Apr 29, 2011

対艦弾道ミサイル開発に成功し、海軍力を増強している中国を改めて軍事大国とみなすべきであるとの点で軍事アナリストと米海軍は一致している。
1. 中国の意向は軍事バランスそのものに影響を与えるのは必至で、米国のアジア太平洋における長期的軍事・地政学的政策は見直しを迫られるだろう。
2. ただし中国の軍拡の加熱に対する意見は分かれている。ひとつだけ確かなのは次回台湾海峡で危機状況が発生した場合、米国は直ちに1996年のように空母戦闘群を派遣する可能性は少ないということだ。
3. ただし中国に本当に米海軍空母戦闘群を駆逐する能力あるいは意図があるのかと問われると自信をもって回答できるものは皆無だ。また軍事力増強で中国が何をめざしているのかも測りかねているのが現状だ。中国がアジアのリーダーとして旧ソ連圏のように各地に影響力を行使のではと見る向きがある。あるいは軍事力は中国の領土保全、通商交通路確保また領土主張の裏付けとして使われるのではないかと見る向きもある。
4. たしかに中国は自国領土を守り、政治的対立を回避する決意があるようだ。その鍵は対艦弾道ミサイル(ASBM)通称空母キラーのDF-21Dの開発だ。
5. 数カ月前に同ミサイルは米国流では初期作戦能力獲得の段階に達している。ペンタゴンはこれに対して同ミサイルはまだ実戦想定の試験を実施しておらずとしこの状況を直視していないが、アナリストの中にも同ミサイルの実際の性能を測りかねるのが現状だ。
6. 「ASBMの実際の性能はJ-20と同じく中国の情報収集・監視・偵察能力の実力、ネットワーク能力がわからないと判断は不可能です。兵器体系は目標情報を入力できなければ役に立ちません」(国防コンサルタント)
7. 「最終突入段階の誘導システムで疑問があります。空母が移動目標であることも一因で、予め範囲を想定して発射しても最終誘導が必要です。そのため誘導システムの精度が重要なのです」(海軍力・海洋安全保障専門のアナリスト)
8. ペンタゴンは最新報告の中で中国の軍事力について言及している。「中国海軍は水平線を超えた目標捕捉能力をスカイウェーブ、サーフェスウェーブ両OTHレーダーで向上させている。OTHレーダーは画像レーダーに連携して沿岸沖の目標を捕捉し、長距離精密攻撃を支援することが可能。」 一方、中国の海軍力、 ASBMの数が少ないことから対抗する米軍部隊は十分対処できると見る向きもある。ただ米海軍部隊は中国の軍事装備増強と目標捕捉能力向上により今後はリスクが増えることになろう。
9. ただ本質的な疑問は本当に中国は空母を排除する攻撃という賭けに出るのだろうか、という点だ。議会調査局は最新の報告書で中国は米国とあまりに多くの金融面はじめとする相互関係があり戦闘を開始するのは不可能と分析している。
10. 弾道ミサイルの使用目的として中国の海上通商交通路にとって脅威となりうる艦船ににらみを利かせる事のほうが可能性が高い、と見るアナリストもいる。
11. これに関連して議会調査局報告書では「中国がインド洋に海軍他軍事施設の建設をしている、あるいは求め、ペルシア湾岸から中国に至る海上通商路に沿って展開する海軍作戦の支援をするだろう」と記述している。
12. この場合中国が台湾含む広範囲な領海主張をしていることから現在は海軍、ミサイル基地等防衛的な性格の軍事力を展開としても、冷戦時のソ連の例から攻撃的な軍事力展開に変質するのではないかと米国、同盟国は懸念を示している。
13. 旧ソ連と異なり中国のイデオロギー上の米国への対立軸は強くないので、かつてのソ連関係と異なるものの、戦略上の競争相手となり近い将来に米政府は冷戦後最大の政策課題として中国を見ることになる、というのがアナリストの見方だ。
14. 議会調査局の報告書がいみじくも「中国海軍力が太平洋諸国の政治状況の進展に影響力を及ぼす可能性があり、そのために米国は各種政策に関連して国益を追求sる能力にも影響が出てくる事になる」と表現している。

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...