スキップしてメイン コンテンツに移動

初飛行したY-20の性能は意外に低水準、しかし今後の向上策には要注意

Avic Y-20 Airlifter Awaits Better Engines


aviationweek.com February 04, 2013
Chinese Internet
Bill Sweetman Washington and Bradley Perrett Beijing

初飛行はしたものの性能向上の課題が残る機体、それがこのたび登場した中国の Y-20輸送機だ。1月26日に初飛行した同機は一見現代的な機体に陳腐化した60年代技術のエンジンの組み合わせとなっている。そのため、運用上で大きな真価を発揮できる機体ではなく、せいぜいイリューシンIl-76よりわずかな性能向上を提供するだけだろう。
  1. というものの同機にはもう少しまともなエンジンが開発中だ。中国が高バイパス比エンジン技術を実用化したとき、同機の性能は急上昇する。ComacのC919旅客機にも同様に高性能エンジンが開発中だが、道は遠い。
  2. Y-20の機体開発が成功したことが中国航空産業では重要な成果だ。これまでおよそ60年間に渡り中国は主にソ連時代の設計をコピーするだけに終始してきたが、Y-20は純国産機では最大規模で、80年台に失敗に終わったY-10旅客機よりも大きい。
  3. ただしY-20の就役は2017年以降になりそうだとの観測が中国国内にあり、機体には複合材料が使われているというが、機体の大部分はアルミニウム製のようだ。また、「超臨界」主翼構造にになっているという。その目的が後日エンジン換装を見込んだものなのかは不明だ。
  4. 機体寸法と外観ではIl-76に近いもののY-20は完全新設計の機体だ。エンジンも同じサツルンD-30KP中バイパス比エンジンが搭載されている。ただしIl-76より主翼幅が短く、機体幅は逆にわずかに大きくなっている。エアバスA400Mよりも大型で、ボーイングC-17機体と直径はほぼ同じで全体では小型だ。
  5. Aviation Weekによる同機の詳細性能の推定値と中国国内で報道されている値は食い違いっている。中国報道ではY-20の全幅45メートル、全長47メートル、全高15メートル、基本重量200トン、ペイロード66トンとしている。その根拠は不明だが、2006年に同機開発が始まった際の推定値に近い。Il-76との比較で同じD-30KPエンジンの性能から見て公表されている重量とペイロードは大きすぎる。
  6. Y-20の組立は西安航空機が行い、ロールアウトは2012年12月だった。機体構成はロッキードC-141に近い。主翼の取り付け位置、、中程度の後退角は低速度での飛行性能を重視した一方、適度な巡航速度が期待できる。また、降着装置を機体内に格納し、T字尾翼となっているのも同じだ。C-141以降の輸送機はAn-124除き、同様の構造を踏襲している。Y-20の主翼では全体に渡りスラットが付けられ、フラップは三段式だ。エンジンはIl-76同様に低い位置に取り付けられているが、C-17のようなエンジン推力を利用したフラップは採用されていない。
  7. エルロンで揚力を低速度で稼ぐ構造で、大型のスポイラーが付けられている。C-17同様にY-20のラダーも四枚構造だ。
  8. Il-76よりもコックピットは小ぶりで乗員3名となっているので貨物室の容量増加に貢献している。中国国内報道ではIl-76よりも輸送容量が大きく、現在運用中の戦略級輸送機の中では一番身軽だとしている。貨物室直径が大きいことでヘリコプターや建機を搭載できるとしているが、貨物室全長はIl-76より短い。
  9. 降着装置の構成はA400Mに類似しており、2輪一組で3基を左右に備えている。機首ノ降着装置は90度回転し、簡易な飛行場での運用が可能だという。
  10. D-30KPエンジンよりも20%以上の効率向上を実現するターボファンエンジンをAvicエンジンが瀋陽で開発中で、WS-20の名称となるだろう。これはWS-10戦闘機用エンジンからの派生型とみられる。
  11. D-30KPのバイパス比がCFM56と同程度なのに対し、Y-20が同エンジンを搭載して初飛行したのは中国製エンジンが未完成であるためで、開発が完了していないのか、完成していても信頼度が不足しているからだろう。
  12. これよりも実現が巌しいと見られているのがCJ-1000エンジンで、Avic民間航空機エンジン部門がComacのC919用に開発中のものだ。ねらいとしてはCFMのLeap-1と同程度の性能をめざしている。CJ-1000開発は技術上の問題に直面しているが、潤沢な資金が投入されている。十分な推力が提供出来れば世界標準の運航効率が実現できるので、同エンジンがY-20の性能を引き上げる可能性はある。Y-20の運用では中国海軍が揚陸運用能力を開発し空母を就役させている中で、中国政府が一貫して推し進めている軍事力前進配備能力の増強の一部となる。世界の専制国家体制の行動と共通して中国も他国の内政へは不干渉の原則を強く掲げている中で中国報道ではY-20による人道援助、災害援助を強調しているのは驚くに当たらない。たしかにこのような任務が同機により実施されれば中国の国際イメージも向上するだろう。
  13. 軍事力の前進配備能力という観点ではY-20の出現で近隣国が過敏に心配する必要はないだろうというのがオーストラリアの軍事アナリスト、アンドリュー・デイビスAndrew Daviesの見解だ。航空機よりも多くを輸送できる海軍力のほうが心配だというのだ。「Y-20は中国の目指す軍事力投射の道具にはなるが、それ自体はとりたてて威力のある要素ではない」というのだ。また、空輸能力は中国のような大国では国内的にも重要な意味がある。
  14. 中国もロシア並みに空輸能力の整備に並々ならぬ努力を払っている。中国の部隊では第15空輸軍団が中国国内および近隣国向けの危機状態に対応すべく待機中だ。また空中投下が可能な特殊軍用車両の開発も続いている。その最新型がNorinco ZBD03でロシア製BMD-3を元に 30-mm 2A72機関砲を搭載している。第15空輸軍団にはヘリコプター部隊もあり、Y-20の貨物室でヘリコプター輸送も想定される。現状の中国の空輸能力は中国製Il-76の機数が不足しているために制約を受けている。

コメント

このブログの人気の投稿

★北朝鮮ミサイルが中国衛星で誘導されている可能性

中国も北朝鮮関連では叩けば埃がどんどん出そうですね。北京が見切りをつければ平壌の現政権など簡単に転覆させるでしょうが、中国国内にある北朝鮮とのしがらみ(おそらく共産党内部の派閥争い)と東北部の軍の非合法ビジネスの問題があり、米国といったん話がついても実施が難しいのでしょう。そのうちにしびれを切らした米国が単独行動に出るかもしれません。

Record China Is North Korea Using China's Satellites to Guide Its Missiles? 北朝鮮は中国衛星を使ってミサイル誘導をしているのか
Peter J. Brown May 23, 2017 http://nationalinterest.org/blog/the-buzz/north-korea-using-chinas-satellites-guide-its-missiles-20810?page=show

北朝鮮がミサイル発射を繰り返し米本土を狙うICBM開発に走る中、ひとつ見落とされている点がある。ミサイルに衛星誘導を使っているのではないか。北朝鮮に衛星航法ネットワークはないため、中国衛星を利用しているとの観測がある。 2014年報道で北朝鮮技術者が中国国内で北斗Beidou衛星航法システムの運用を研修中とある。同年の別の記事で中国軍専門官から中国は北朝鮮による北斗の軍事利用を止められないと発言している。 北斗以外に北朝鮮の選択肢として米露両国のGPSがあり、ロシアはグロナスGlonasと呼んでいる。 「グロナスの可能性もありますが、ミサイル誘導に北斗を利用している可能性の方が高い」と小泉 悠(未来工学研究所特別研究員、ロシア安全保障問題)がメールで述べており、ロシアは北の核実験後に武器および軍事関連技術の北朝鮮向け禁輸措置を取っているがグロナスが対象かは不明と小泉は述べる。 北斗衛星群打ち上げは1994年に始まり、現在は東アジア以遠まで展開している。北斗は民生商業用途と軍用の両面で利用され、軍用では妨害を受けず正確にデータが利用できる。 北朝鮮が北斗の軍用機能を利用しているか不明だが、民生用機能で精密誘導兵器を運用しているとは考えにくい。というのは北斗の民生機能は日米韓の電子妨害に弱く有事の際に北朝鮮が利用するのは困難になるためだ。 「特別のチップならびに中国の協力がな…

★★★破損機材二機からF-15を再生したイスラエル空軍の実力に脱帽

すごい。やはり国家の存続がかかった緊張状態を毎日続けて70年になる国は違いますね。イスラエルを敵に回したくないものです。 Meet the Israel Air Force unit that frankensteined a totaled F-15F-15二機の使用可能部分をつなぎ合わせて一機再生してしまったイスラエル空軍 By: Barbara Opall-Rome, May 15, 2017 (Photo Credit: Photo by Heidi Levine) http://www.defensenews.com/articles/meet-the-israel-air-force-unit-that-frankensteined-a-totaled-f-15
TEL NOF AIR BASE, Israel – ボーイングやロッキード・マーティンなど米企業がさじをなげたことをイスラエル空軍第22補給処が普通にやりとげてしまった。 2011年の事故でボーイングが喪失扱いと断念したF-15Bアローヘッドが飛行再開している。来月で事故から6年になる。事故は離陸直後にペリカンを空気取り入れ口に吸ったことで大火災が発生した。乗員2名は緊急着陸に成功したが、機体後部は完全に焼け落ち修理不可能と判定された。 その後三年余り、機齢35年の同機の処遇で議論が続いていた。機体の前方部は無傷なのでコックピットとエイビオニクスは予備部品にすればよいという声が出た。そこに第22補給処が前方部分と20年間も「機体の墓場」に放置されたままの単座型F-15の後部と接合する提案をしてきた。 「その案が出たのでボーイングに実施可能か照会したが、答えは返ってきませんでした」と第22補給処の指揮官マキシム・オルガド中佐がDefense Newsに語っている。「再度同社に聞くと、冗談と思って真剣にしなかったと判明したのです」 第22補給処は事故機の前方部分と20年間も「機体の墓場」で放置されていた別の機体の後部を接合した。 Credit: Photo by Heidi Levine ボーイングは声明文で第22補給処との協力関係は40年続いており、イスラエル空軍F-15の即応体制維持の一助となっている「同部隊のプロ意識や能力の高さには敬意を払っており、教えられることもあり相互に恩恵が生まれている」と述べた。 第…

★★★米空軍次期戦闘機はもう戦闘機の形状となることはない---第六戦闘機の用語は駆逐

米空軍は次期戦闘機材の姿を未来から考えていますね。目的は航空優勢の確立であり、ドッグファイトは目的ではないと分析し、宇宙やサイバーも含めた多様なシステム構造の一貫として次期機材を捉えております。また、アジア太平洋での作戦をにらみ足の長い機体となると現在の戦闘機と相当形状が異なってくるとし、現状の姿の延長線上に次期機材を想定する勢力の生み出す結果と全く異なる結果を生み出そうとしています。改めて空軍の構成、運用がシステムで成り立っていることを痛感させられる内容です。 Air Force Prepares to Hash Out Future Fighter RequirementsBy: Valerie Insinna, August 28, 2016 (Photo Credit: Northrop Grumman)http://www.defensenews.com/articles/air-force-future-fighter-jet-penetrating-counter-air-next-generation-air-dominance
WASHINGTON — 一年をかけて将来の制空任務に必要な戦術や技術を検討した米空軍が次期戦闘機を実現する第一歩を踏もうとしている。2017年予定の代替策検討(AOA)に先立ち、空軍は予備作業を開始している。AOAはF-35に続く機体の要求条件、調達戦略に焦点をあてる。空軍は次期戦闘機をNGAD次世代航空優勢とかPCA侵攻制空用機材と呼んでいる。
だがアレクサス・グリンケウィッチ准将はAir Superiority 2030による戦力連携チーム(ECCT)を率い、NGADは従来の戦闘ジェット機と大きな違いが2つあると強調する。ひとつめが調達期間を比較的短くすることだ。
「2020年代末までに何らかの形が必要です」と准将はDefense News取材で発言している。「現実的な日程として2028年頃に中心的な技術分野で大幅な投資があれば侵攻制空性能で初期作戦能力が実現します
第二の相違点に関係するのがこのたびまとめられたAir Superiority 2030研究で将来の米空軍の航空優勢で決め手になるのは単一機種としての第六世代戦闘機のような機体ではなく、統合ネットワーク化された一連のシステムの集合だとする。この組み合わせの中に侵攻能…