スキップしてメイン コンテンツに移動

英国の核抑止力維持に黄色信号  スコットランド独立運動の影響が心配

U.K.’s Future Nuclear Policy Comes Under Scrutiny

By Tony Osborne
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com July 22, 2013
Credit: U.S. Navy

今日も大西洋のどこかの海中で英国のヴァンガード級弾道ミサイル原潜が核抑止パトロール任務についているはずで、英国の国家主権はトライデントミサイルが守っている構図だ。しかし、英国政府が次期抑止力装備の調達に乗り出そうとしたところ核抑止力の存続そのものが議論対象になっている。

      • 英政府が求めているのは現行の原子力弾道ミサイル潜水艦4隻を新型潜水艦に交代させ、トライデントミサイルを改修し瀬新設計の弾頭を搭載することだ。だが費用は150億から200ポンド(230億から300億ドル)といわれ、政府支出を減らそうとしている中、とくに国防支出を減らそうという中ではそのまま受け入れられない規模だ。
      • 現政権は保守党・自民党連立で新型SSBN(名称サクセッサー級)を推進してきたが、同潜水艦の最終開発決定はこれからだが、すでに30億ポンドを支出している。
      • トライデント代替建造案が公表されるや、議論が活発になった。検討内容の公表は自民党からの要求で、かねてから建造費が高すぎるとし、資金は通常装備に回したほうがよいとの主張だ。
      • 4隻あれば英国は24時間連続で抑止力を維持しつつ、一隻はドックで待機し、もう一隻は修理点検にまわせる。だが自民党の意見では「連続海上配備抑止力」なくても目的は果たせるというのだ。
      • 自民党出身の大蔵政務次官でトライデント代替案検討担当大臣ダニー・アレクサンダーが7月16日に検討過程で長期的に節減効果が出る「真の機会」が浮上し、「現在の状況に応じた核兵器政策見直しおよび核軍縮につながる」機会になるという。
      • サクセッサー原潜調達を一隻減らせば耐用期間通じ40億ポンドの節約効果がある、というのがアレクサンダーの主張だ。
      • 確かに英国の核兵力は冷戦最盛期に比べ大幅に縮小され、空中落下型弾頭WE177は1998年に退役している。英国が保有する弾頭は225発で核保有国中で最小規模といってよい、とアレクサンダーは指摘。「政治的な意思があれば核のはしごを降りてもよい」
      • 「そして次の段階はわが国の国防政策から核の存在を減らしていくことです。つまり冷戦時の連続抑止力体制は不要だと受け入れることです」
      • その他国務大臣や軍の元司令官からは抑止力パトロールを中止すれば「わが国の安全保障の弱体化」になり、国防予算の削減規模は「ごくわずかな規模」しかないという。
      • 検討内容ではサクセッサー級原潜をすべて導入し連続抑止力パトロールの継続を支持している。新型潜水艦発射用弾頭を巡航ミサイル用に開発し、現行のアスチュート級攻撃原潜から発射するには20年以上必要で、その時点でヴァンガード級は退役しているはずという。
      • 大型機あるいはF-35共用打撃戦闘機から投下あるいは発射する空の抑止力にも言及しており、建造中の新型空母からの攻撃および陸上基地の利用が考えられるが、空中発射のオプションはステルス性の有無に関係なく先制攻撃に脆弱だとしている。
      • 代替策はいずれも「すべての場合で迅速な対応を保障しない」と検討内容は明らかにしており、「現実的な代替システム」への移行はいずれもサクセッサー級三隻あるいは四隻よりも高価につくという。
      • 今回の議論はスコットランドが英国から分離独立した場合、弾道ミサイル原潜の母港であるファスレーン海軍基地はどうなるのかを考えるのと平行している。同基地は先代のポラリス原潜時代から使用しているが、スコットランド国民党派は非核政策を一貫して主張しており、抑止力部隊の撤退を求めている。そうなるとイングランド、ウェールズいずれにも同原潜の母港の候補はなく、結局英国は自ら核戦力を放棄することになるというシナリオだ。.
      • 英政府が同基地を英国領土と定め、キプロスにある英軍基地と同じ扱いにするという案を検討中との報道があったが、この動きは結局スコットランド閣僚の反発で立ち消えになった。
      • スコットランド国民党政権は2014年秋に国民投票実施を期待しており、仮に賛成票が多くなれば、行政府としてはスコットランド独自の憲法を制定し、2016年3月までに独立するという時間表をすでに作成済みだ。



コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...