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中国の極超音速ミサイル実験で冷静かつ真に理解すべきこと


U.S. Navy Sees Chinese HGV As Part Of Wider Threat

By Bradley Perrett, Bill Sweetman, Michael Fabey
Source: Aviation Week & Space Technology

aviationweek.com January 27, 2014


中国が1月9日に実施したマッハ10の超音速誘導兵器実験は米海軍が将来の戦闘形態で予測した内容と一致している。中国がこの技術を実戦配備した場合、防衛網を突破し弾道弾としての有効距離が拡大するが、攻撃兵器への応用はまだ数年かかるとみられ、目標捕捉と誘導方法でまだ課題が残っているのが現実だ。
  1. 超音速滑空飛翔体hypersonic glide vehicle (HGV)のテストは中国が対艦弾道ミサイル anti-ship ballistic missile (ASBM) に一歩近づいた証と受け止められており、低速だが操作性が高い再突入体reentry vehicle (RV)が今回試されており、ASBMも第二世代に入る兆候かもしれない。.
  2. 今回のテストを見て米国は指向性エネルギー兵器体系の配備を急ぐ必要があると指摘するアナリストもいる。つまり迎撃ミサイルではマッハ5以上の標的に対応できないというのだ。米国は指向性エネルギー兵器を開発中だが実用化の日程は不明だ。.
  3. 中国のHGVはペンタゴンがWU-14の名称をつけており、大陸間弾道弾をブースターに使い打ち上げられた。宇宙空間から再度大気圏に戻り滑空しながらマッハ10を記録。テストはすべて中国領土内で実施されたと中国国防省は説明。1月19日にはもう一機が同じ発射場(山西省太原Taiyuan)から打ち上げられたとワシントンにある国際評価戦略センター International Assessment and Strategy Center のリチャード・フィッシャーが明かした。このうち1月9日のテストはビル・ゲッツがワシントンフリービーコン Washington Free Beacon で解説している。
  4. 中国が達成した内容は正しい理解が必要だ。米空軍はマッハ15のHGVマクダネル製ブーストグライド研究機を1966年から68年にかけて四回にわたり飛行させている。そのあと実用的な設計にしたマクダネルダグラスの高性能操縦可能再突入体 Advanced Maneuvering Reentry Vehicle (AMaRV) のテストを1979年から80年にかけて実施している。ただしこれは実用的な兵器には結びついていない。80年代の軍備管理やミサイル防衛に中心が移ったためだ。
  5. 通常のRVには姿勢制御機構がなく、予測可能な弾道軌道で大気圏に入ってくる。弾道ミサイルの弾頭は事実上1980年代までは敵なしの状態だったが、その後迎撃ミサイルを中心とした海上あるいは陸上配備のシステムが長距離を飛行する弾道ミサイルの弾頭を撃破する能力があることが証明されてきた。
  6. HGVでは姿勢引上げ操作を大気圏突入後に実施でき、目標まで比較的平坦な飛行が可能。そのため探知は弾道ミサイルの弾頭よりも遅れ、迎撃に残された時間が短くなる。HGVは空力学的に制御可能なので、それだけ迎撃が難しくなり、その間に目標へ近づく。滑空距離はミサイル固有の射程距離より長くなり、比較的脆弱な中間段階の飛翔は目標地点や防衛体制の整った地点より遠くでの発生する。
  7. 中国の対艦弾道ミサイルDF-21Dは実用段階にあり、ペンタゴンによるとHGV開発が一層射程の長く制御性の高い対艦兵器開発につながる可能性がある。しかし、中国製HGVの飛翔は一つの事象でもっと大きな傾向の一部とサミュエル・ロックリア大将 Adm. Samuel Locklear (米太平洋軍司令官)は指摘する。「極超音速テストは将来に意味を持ってくる要素のひとつ」という。
  8. 2014年の年次水上海軍兵力協会 Surface Navy Association のシンポジウムでロックリア大将は「たくさんの国家が極超音速をテスト中なので今回のテストだけが特別なわけではありません。また中国だからと言って問題になるわけではありません。ただシステムが拡散しています。中国とお友達になろうとしても別の国がやはり同じ難問をつきつけてくるかもしれません。それが現実です」
  9. 同大将がいわんとしていたのは米国はWU-14の開発を注視しているということだ。中国は「技術投入で急速な進歩」を遂げミサイルテストの段階まで進んだというのだ。「中国の開発工程はわれわれと違っており、進展が早い」
  10. 例としてDF-21Dの想像図とされるものがインターネット上で示されているがそのRVの形状はマーティン・マリエッタ製のパーシングIIミサイルに似ている。このミサイルは1983年に実戦配備され88年に撤去されている。中距離核戦力条約の結果だが、DF-21とペイロード、射程距離が類似している。陸軍のパーシングII用教練マニュアルがインターネット上に流出しているのが見つかっており、オープンソースの文献として大部分が公表されている。
  11. パーシングIIのRVは1,400-lb. で四枚の制御フィンがついており、マッハ8、25gで引き起こし制御が大気圏突入後に可能で 30-nm にわたり滑空し、搭載するレーダーシーカーで目標地点の画像をとらえる。誘導システムがレーダー画面と一致し、打ち上げ前に読み込んだテンプレートで高い精度を実現する。一度目標を捕捉すれば同ミサイルは最終段階の降下を開始する。
  12. だがWU-14のような高性能のRVやHGVでは熱環境がいっそう苛酷になるため与えられる性能も異なってくる。長距離を飛翔する兵器では高速に加え、飛翔段階が長くなるので熱荷重の蓄積が高くなる。70年代のマクダネルダグラス製AMaRVでは双円錐形とし後縁フラップで制御していた。このAMaRV構想が2000年代に米空軍が研究した共通空中飛翔体Common Aero Vehicle,という大陸間通常弾頭攻撃兵器として復活している。
  13. 2011年には米陸軍が高性能極超音速兵器Advanced Hypersonic Weapon の試作機を実証している。これはフィン制御の機体で大気圏内弾道で飛行する設計だった。この際には高温耐久セラミック複合材をサンディア国立研究所が開発したことで実現している。
  14. 大陸間弾道弾にはすべてHGVを搭載可能。中国のICBMはHGVを運べば米国の防衛網に対する抑止力を手に入れられる。しかし短距離で使用する可能性の方が高く、実現も最初だろう。「HGVの用途は対艦あるいは戦術目的であり、戦略攻撃手段として米国都市の攻撃は想定外だろう」とみるのはヘリテージ財団 Heritage Foundation のアナリスト、ディーン・チェン Dean Cheng だ。「HGVがあれば弾道ミサイルで機動t的な目標の攻撃が容易になる」
  15. 地上攻撃用としての利用も最初に考えられ、再突入技術と経路修正の複雑さを回避できる(フィッシャー)。中国ではHGVの軍事利用を二通り考えているようだという。ひとつはうわさが出ているDF-26で、これはDF-21中距離弾道ミサイルに制御可能なHGVを取り付けたものだ。「HGVがあればミサイルの実質的な射程を延長することが可能」(フィッシャー) もうひとつが90年代末に投入したDF-31ICBMの射程8,000キロメートルを12,000キロメートルに延長することだという。.
  16. フィッシャーによれば性能が実証済みの安価なミサイルを使い、HGV弾頭で射程を延長することに利点が多いという。WU-14のテストおよびそれがミサイル迎撃を困難にすることで米国には急いで指向性エネルギー防衛手段を開発する必要を迫られていると警告する。
  17. ただしそれもHGVの実用化がいつになるか次第だ。新アメリカ安全保障センター主催の会議席上で香田洋二元海将から中国海軍の原子力潜水艦が将来の脅威の中心となる可能性が示され、ASBMで「到着する米軍を迎え撃つ」可能性があるという。ただし同海将によれば中国のASBMが真の脅威になるには10年から15年かかる見込みだという。対艦HGVだともっと時間が必要だろう。.
  18. ただし水上艦艇をいくら制御可能なHGVとはいえ直撃するのは容易ではない。 まず目標を捕捉し、識別し、正確に位置を割り出し追跡する必要がある。データをセンサーから指揮命令システムに渡し、ミサイルにも与えて中間飛行中の修正に使う。ミサイルの誘導システムは目標が移動することから存在可能性のある海域が拡大する中で捕捉する必要が生じる。そこで誘導システムは妨害に耐えつつ水上艦艇を識別することが求められる。
  19. 米海軍作戦部長ジョナサン・グリーナート大将 Adm. Johnathan Greenert は昨年5月に重要な「イベントの連鎖」について言及しており、海軍がその時点でシステム開発を進行中あるいは完了していると発言している。その意味は中国のDF-21Dへの対抗手段である。冷戦時のソ連がミサイル搭載Tu-22を配備していた際の対応と同様に海軍が目指すのは初期段階で敵の探知識別能力を無効にすることである。ただしグリーナート大将自身はこの方法に疑念をもっていることを大会の席上で示した。海軍は「電磁気戦」 “electromagnetic maneuver warfare” に重点を移すべきとし、「レーダー、通信、WiFiを使う際はどんな痕跡が残るのかを知る必要がある。すべての電子機器を切り、沈黙を作る必要がある。だが実態はテストを行うと沈黙になっていないことが判明している」.
  20. 広大な海域の探知手段として有望なのが宇宙配備レーダーだが年々費用が下がっており、性能は上がっている。ここで中国とロシアの連携を示す兆候がある。ロシア宇宙機関NPO Mashinostroyeniyaが昨年6月にコンドルーE合成開口レーダー衛星を打ち上げており、未公表の顧客の発注に対応したことになっている。中国の無人機開発ではレーダー断面積の削減が進んでおり、Soar Dragon といった新型機が海洋監視用途に使用されるかもしれない。
  21. 大会前のブリーフィングにおいてロッキードでイージスを担当する役員ジム・シェリダンJim Sheridanに対して海軍から同社にイージスでDF-21D対応の可能性で打診があったのか尋ねる質問が出た。「なんらかの意見交換はありましたが、詳しくは話せません」
  22. 極超音速ミサイルが目標に命中した場合は運動エネルギーだけで損害を発生できるかが分析部門の関心事だ。これに対してオーストラリア戦略政策研究所 Australian Strategic Policy Institute  のアンドリュー・デイビス Andrew Davies は懐疑的で重量 500 kg の不活性RVがマッハ6で突入すると亜音速のボーイングAGM-84ハープーンの運動エネルギーと爆発エネルギーに相当すると計算結果を出している。また上記RVの発するエネルギーは冷戦時代にロシアの「空母キラー」Kh-22の想定規模の四分の一にすぎないという。Kh-22は重量 12,800-lb. でマッハ4で2,200-lb.級の弾頭を命中させようとする。ただし極秘研究が80年代にマクダネルダグラスにより行われており、それによるともっと小さい弾頭でも貫通用に全長を伸ばせば艦船に十分な損害を与えて作戦海域から撤退させることが可能だという。■


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