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中国初の空母運用をどう見るべきか-空母戦闘群を中国は編成できるのか

China's Carrier: The Basics
           
by Bernard D. Cole
US Naval Institute November 27, 2012
                                                  

中国空母の運用状況を示す初のビデオを 見ると、中国が米国その他の海軍と同様な安全配慮をしていることがわかる。飛行甲板の要員が色別の服装をし、手信号を送っているがこれも国際標準に近いも のだ。各配置点には二名の水兵が配属されているようで、一人は「訓練中」なのだろう。あきらかに人民解放軍海軍People’s Liberation Army Navy (PLAN)は航空母艦運用の知見を獲得しつつあるようだ。ただし天候に恵まれた条件で、基本運用の域を脱していないが。
  1. .空母「遼寧」は長い建造期間を経て完成しており、建造素材に問題を抱えて構造に欠陥がある可能性があり、また搭載するのは圧縮蒸気による推進機関で保守点検と運用に困難がつきまということが知られている。
  2. 中 国がはじめて入手した空母は1985年のオーストラリア海軍を退役したメルボルンであり、技術陣がすみからすみまで調べ上げた後でスクラップにされた。そ のあとロシア製空母二隻が加わる。ミンスクとキエフであり、ともに海上テーマパークとして購入された。この二隻は「航空重巡洋艦」と呼称されていたもので あり、中国に到着した初の空母はワリャーグだった。
  3. 同 艦の建造は1985年にウクライナで始まっていたが、ソ連邦崩壊で1989年に中止となっていた。そのまま乾ドックで放置状態だった同艦を中国は約20百 万ドルで1998年に購入したが、トルコの反対でボスポラス海峡を通過できず、結局通過できたのは2001年になってしまった。途中で嵐に遭遇し、タグ ボートの曳航が外れる事態もあったが、中国大連に到着したのは2002年で、そこから8年かけて改装工事ののち完成させている                   
  4. 同 艦は初の公試を2011年8月に実施し、これで26年かけて完成したことになり、軍艦建造期間としても最長の部類だ。PLANに公式に編入したのは 2012年9月で遼寧の艦名、艦番号16が付いた。中国海軍の初の正式空母となり、海軍の70年代からの夢が実現した。同艦は航空要員向けの訓練艦として もっぱら使用される。また運用要員の訓練用にも使い、今後建造される中国製空母の乗員を育てる。
  5. 遼寧は海上公試後半から航空機運用を開始し、初の航空機離着艦を2012年11月実施し、J-15戦闘機二機の運用記録が公開されている。
  6. 遼 寧はスキージャンプ式の構造を航空甲板前方にもつが、カタパルトはない。ただし、拘束ケーブルがあり航空機を回収する。J-15とはロシア製Su-33を 中国で国産化したもので、降着装置を強化し、テイルフック、折りたたみ式主翼と空母運用を想定している。さらにPLANは新型ステルス機J-31を空母に 搭載するかもしれない。
  7. その他搭載機にはロシアが設計したKa-25や国産のZ-9ヘリコプターがあり、さらに、米国のE-2ホークアイに似た空中早期警戒機が開発中だという。
  8. この五年間でPLANに空母護衛用の艦船が就役している。旅洋IILuyang II 級誘導ミサイル駆逐艦はイージスシステムと類似した装備を搭載していることがわかっており、中国では地域防空戦闘任務ができる初の艦となり、遼寧の防衛の要となる。旅洲Luzhou級および旅洋I級ミサイル駆逐艦および江凱Jiangka級も空母防御に投入できるミサイル運用能力がある。
  9. 中国が空母戦闘群に潜水艦も加えるのであれば、93型商Shang級原子力攻撃潜水艦 (SSN) が適しているが、同級の建造がわずか二隻で完了しているのは次形式の95型SSN建造に切り替えるためかもしれない。.
  10. さ らに中国は洋上補給replenishment-at-sea (“unrep”) 能力を有する艦の建造を開始したが、2005年以降でもわずか二隻しか就航しておらず、中国が2008年から派遣しているアデン湾海賊対策の派遣部隊支援 に投入されている。新型補給艦の建造が伝えられている。
  11. 中国の空母運用は第一歩をはじめたばかりだが、今後数年間を訓練と経験の蓄積に使って運用能力を獲得できる。遼寧は母国を離れた海域に海軍力を投入する決意が中国にあることを示す意義があり、さらにドック型揚陸艦や病院船の建造もこの決意のあらわれだろう。
  12. 戦略面では遼寧の就役および航空機運用状況をはじめて公表したことは大きな成果であり東アジア水域におけるPLANの重みが増したといえる。同地域内の各国は非友好勢力となる可能性のある海軍が航空戦力を洋上に展開する能力を獲得した状況に直面しているのである■


 Bernard D. Coleは国家国防大学で米中関係論の教鞭をとる、米海軍退役士官。

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