スキップしてメイン コンテンツに移動

フェイスブックが国防上の重要な情報源として活用されています

Social Media Mining Software Gains Interest in Defense World

By Sharon Weinberger
aviationweek.com December 24, 2012

9月のリビア・ベンガジの米領事館襲撃でクリストファー・スティーブンス大使ほかアメリカ人三名の人命が奪われたが、オバマ政権関係者は攻撃を予見できなかった、あるいは人員保護が適正に行えなかったのではという非難、糾弾を多数受けてきた。
  1. そ れに対する反論として、そもそも襲撃の発生を告げる兆候はなかったとするもので、米政府の情報機関トップが再度この点を最近力説している。「発信がない、 あるいは行動を前もって相談しないときには探知そのものが困難です」と国家情報長官ジム・クラッパーDirector of National Intelligence Jim Clapper が米地理空間情報財団U.S. Geospatial Intelligence Foundation主催の年次フォーラムで10月に発言している。
  2. た だし同じ会場で国防・情報機関向けソフトウェアの販売業者がまさしく同じことをしようとしていた。ベンガジ襲撃事件のような攻撃を事前に予測するのを助け ることだ。「前日の午後4時に領事館前で抗議集会があり兆候は存在していました」と主張するのはアンドリュー・ダウミットAndrew Doumitt、テラゴーテクノロジーズTerraGo Technologiesの営業開発担当副社長で、同社はソフトウェアを作成しており、多数の情報源(ソーシャルメディア含む)から特定の場所で情報を仕 分けできるようにする。
  3. テ ラゴー製のソフトウェアは米軍基地や大使館の襲撃可能性といった対象を拾い上げることができる。その理由は同ソフトが数百万件のソーシャルメディア上の書 き込み数百万件をくまなく探し、特定の地点に関連する情報にフラグを立てることができるためだ。「イエメンのサナアの米大使館の周辺に緩衝地帯がほしいと します。そこでアラートを設定するとその付近に関連した書き込みをまっさきに見られるようになります」(ダウミット)
  4. 同ソフトウェアではどんな出来事が発生するのか正確には示してくれないが、赤色のフラグは立つ。「ある場所の監視についてソーシャルメディア、ニュースやブログを対象にできるわけです。引き金を引く条件にもっと多くの情報源を監視し反応することができるようになります」
  5. こ のようなソフトウェアは官民両方で需要が高まっており、データ採掘data-miningにオープンソース情報と従来型のデータ収集を利用することを可能 としている。国防・情報関係機関での利用が急激に増えており、CIAのヴェンチャーキャピタル部門であるIn-Q-Telがツール開発に当たる数社に出資 している。テラゴーもこのひとつである。
  6. こ の種のソフトウェア自体はこれまでは主流とは見られて来なかったが、アフガニスタン及びイラクでの戦闘で米軍が必死になりテロ集団のネットワーク遮断およ び道路に設置された爆発物の探知をめざす中で需要が高まっている。ペンタゴン自らが分散共通地上システム陸軍仕様Distributed Common Ground System-Army (DCGS-A)と呼ばれる戦場で収集した情報の結合・分類用に使うシステムへ投資していることの是非を巡り物議を醸している。
  7. この論争の中心がパランターPalantir(本社カリフォーニア州パロアルト)でデータに隠れる結合関係の検索ソフトウェァを作成した会社だ。同社もIn-Q-Telの資金援助を受けており、昔ながらの企業が中心の国防関連市場にいきなり登場した企業である。
  8. 米 陸軍はパランターに現場分析官数名を派遣しており、即席爆発装置improvised explosive device (IED)の所在網の追跡を補助しているが、やはりDCGS-Aの使用にこだわっている。パランターはシリコンバレー企業として自社製品がDCGS-Aの 性能の一段上だと自信を有している。
  9. オー ヴァーウォッチOverwatchはテクストロンシステムズTextron Systemsの一部門であり、国土保全とサイバー部門の副社長であるジョナサン・パーシーJonathan Percy, vice president for homeland security and cyberはパランティア製品が主張する性能は「ナンセンス」だと論じ、パランティア製品では「DCGS-Aが実行するミッションの5%」しか実施できな いとする。オーヴァーウォッチはDCGS-A用のデータ分析ツールを制作しており、国土安全保障や警察市場へ進出してきたパランティアへの対抗心を強めて いる。「あの会社はかなりの誇張をしており、陸軍に自社製品を購入させ、その他の投資支出を中止させようとしてるのです」
  10. パ ランティアも議会に支持者があり、ダンカン・ハンター下院議員(共和党カリフォーニア州選出)Rep. Duncan Hunter (R-Calif.)は陸軍を非難し、試験結果でパランティアのソフトウェァ性能がDCGS-Aより有利な結果が出たのを改ざんしたと主張。議会は陸軍が パランティア製品をどう扱っているかの調査活動を今夏に実施した。
  11. デー タ採掘はアフガニスタンでの実績からアフリカでの応用が期待されており、米軍によるテロリスト、ゲリラ網の追跡に役立つだろう。やはりソーシャルメディア が焦点の中心で、とくに従来からの情報収集方法である航空機搭載センサーが不足気味あるいは使用不可能である場合に有効となる。
  12. 「セ ンサーは不足しがちな資源です」と語るのはトニー・フレイジアーTony Frazier、民間用衛星企業ジオアイGeoEyeの上席副社長である。同社にも分析部門がある。「アフガニスタンやイランなどホットな地点から目を外 すのであれば、より広い情報源からの情報収集が必要となります」
  13. レイジアーによるとジオアイはすでにアフリカに焦点を当てたプロジェクトを作業中で、ソーシャルメディアのデータにより従来は通話通信記録の盗聴でしか収集できなかった情報をあつめるのだという。
  14. も ちろんソーシャルメディアだけが情報源ではない。各機関にはそれぞれ独自のデータベース、報道記事、また機密情報を利用している。ジオアイの分析作業は特 殊作戦部隊や情報機関向けのものだがその内容は機密扱いであるとはいえ、同社は実施中のシミュレーションの内容を大ぴらに話しているのも事実で、IED製 造国の特定のため、各国また米国内でメタンフェタミン製造の実態を検索しているのだ。
  15. 同 社からはアルシャバブAl Shabaab(ソマリア国内のアルカイダAl Qaed勢力)に対して行った地理空間分析内容が最近になり公表されている。ジオアイによるとこれまで認識されていなかった強度脅威地域が特定でき、アル シャバブの活動が強まる前に把握することができたという。
  16. 解 析による発生前予知はIEDの製造場所でも将来のテロ攻撃地点であれ、非常に魅力的に聞こえるし、確かにベンガジのような破壊的な結果が起きてしまった事 実に鑑みると食指をそそられる。しかし、この種の予測作業は万能の水晶玉には程遠いのが現実だ。ジオアイによると某政府向けの予測作業では的中率66% だったという。
  17. た だし、その効用はどこに注意をしたらよいかがわかることであり、実際の出来事の発生を予見することではないと、ジオアイ分析部のジェイムズ・アンダーソン は「66%というとコイン投げで半丁きめるのと大差ないように聞こえるのですが、98%の領土を監視対象外にできるのであり、これは相当の効果がありま す」
  18. ロッ キード・マーティンも自社製品でソーシャルメディア解析が可能なLMウィズダムLM Wisdomを販売しており、「インターネット上のチャット内容を有効な情報源に変化させる」ものだという。ロッキードはこの製品を5年前から開発してお り、当初は報道内容から情報を集めるものだったという。同社はソーシャルメディアからの情報収集に切り替えているとオープンソース情報活統合活動の主任で あるオリー・ルーバ Ollie Lubaが明らかにした。
  19. 一 方で民間企業ではソーシャルメディアである、ツィッター、フェイスブック、ライクトイン上の書き込みへの懸念を強めている。「社内の情報管理を我社が代行 している例があります。その企業への抗議発生を当社が監視するわけです。発生した段階で内容をすぐに解析し、これが重要なトレンドとなるかを判断するので す」(ルーバ)
  20. ま たロッキード・マーティンは国防高等研究プロジェクト庁Defense Advanced Research Projects Agencyによる統合危機早期警戒システムIntegrated Crisis Early Warning System構築の主契約社でもある。このシステムでは報道メディアにより出来事の発生を予測する。たとえば革命とか政治不安である。「次の段階の目標は ソーシャルメディアの解析です」とルーバはいう。
  21. で は各種の解析方法でどれだけ正確な結果が国防・情報機関に提供できるだろうか。ひとつの問題はソフトウェアはどれだけ良質なデータを取り入れるかに左右さ れることであり、10月の上院報告書で国土安全保障省の情報融合センターを非難している。国内情報を収集、解析することでテロリストの計画を事前に知るの が同センターの目的だ。だが報告書では同センターからは「有益な情報が提供されず連邦政府の対テロ活動への貢献はなかった」とし、「大量のクズ」しか出て きていないという関係者の発言を引用している。
  22. デー タ融合では米国内だろうと国外だろうと究極の疑問は毎日数百万のツィッターあるいはフェイスブックの書き込みが本当に有効な情報に変化するのだろうかとい う点だ。「フェイスブックに何か書き込みをすること自体は何ら証拠になりません」とヒラリー・クリントン国務長官はベンガジ襲撃事件の直後に軍事過激派が 主犯だと主張した際に発言している。「直後の報道内容がいかに流動的かを示しており、当面は報道内容は一定にならないでしょう」
  23. I 結局のところテラゴーのような企業は真実とはどこか中間地点にあるのだと証明しているようなものである。フェイスブックやその他ソーシャルメディアではベ ンガジ事件を予測できなかったし、よしんばできていたとしてもリアルタイムでの監視・解析作業をするためには相当の資源を該当地区に投入していて初めて可 能だっただろう。
  24. ダウミットは自社製品の性能で大言壮語を避けている。ベンガジ襲撃前にフェイスブック上の書き込みが米領事館とリンクしていたのは大規模示威行動の予定を示していたに過ぎず、「魔法ではない」というのだ。■


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...