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米空軍の秘密開発爆撃機、ISR機材の存在を読み取る

我々の知らない間に大型無人ISR機(爆撃機?)がすでに完成しているようです。そしてエリア51でテスト飛行が実施されており、裏予算の手当も済んでいると見受けられます。やや長文ですがご容赦ください。

Reading Secret USAF Bomber, ISR Plans



aviationweek.com December 03, 2012

ス テルス技術の応用に情報収集・監視・偵察(ISR)用無人機が選択されるのは明白だ。ISR機には機動性や超音速飛行が必要でなく、この2つの要求がある とステルス技術でも非常に高価になってしまう。UAVが接近拒否空域や制空権が確立されていない場所で生き残るためにステルスは必要な要素だ。
  1. も しミッションが探知されずに実施できれば二重のボーナスとなる。情報収集が邪魔されずに実施できるし、欺瞞やカモフラージュが不要となるからだ。米国がス テルスUAV開発を進めている唯一の国だというのはおどろくべきことで、複数ある米国のステルスUAV開発のうちひとつは業界の自己資金によるものだ。
  2. 同じように奇異なのは、太平洋の重要性や今後登場する長距離爆撃機long-range strike (LRS) の系列の重要性が言われる中でLRS-B 爆撃機がその中心として未だに姿を表していないことだ。
  3. この2つの謎に対する回答は闇の世界the black worldにある。ブラックISRや攻撃機の開発予算は以前から確保されており、表の航空機開発にも影響を与えている。ただし、殆どの情報提供の出所は明されることはない。
  4. ステルス技術の大部分はISRの世界からはじまっているのであり、これまでU-2機をステルス化する試みがあったが、失敗したのもそのひとつだ。ロッキードおよびジェネラル・ダイナミックスが競作した結果ロッキードA-12ブラックバードが生まれ、AQM-91コンパスアローUAVが完成した。その後の第二のステルス化の波が1970年代にやってきて、ノースロップのタシット・ブルー監視機が生まれている。
  5. 1983年当時は全ての関心はソ連に向けられており、ロッキードとボーイングが 共同開発で高性能空中偵察システムAdvanced Airborne Reconnaissance System (AARS) の製作に残った。同システムのコードネームはクォーツQuartzでソ連領空内にとどまり移動式ミサイル発射装置の場所を突き止めるのが目的だった。投じ られた予算は巨額になったが、CIAおよび国家偵察局National Reconnaissance Officeの要求内容が相互に食い違うことに苦しみ、クォーツは冷戦終結まで飛行は実現せず、結局1992年にキャンセルとなった。
  6. た だし、同機の外観はRQ-3AダークスターDarkStarに引き継がれ、同機もロッキード-ボーイング共同開発だった。もしダークスターがクォーツ向け の縮小型試験機だったとしたら、それが急速に同機が姿を表したことの説明になる。1995年に公表されたダークスターは翌年の第二回飛行で墜落してしま う。結局、同機も1999年に公式に取りやめとなった。それは米空軍が同機とグローバルホーク両方の調達に必要な予算がなかったためだった。
  7. 2001 年4月に海軍のEP-3E信号情報収集機と中国戦闘機の空中衝突事件が発生し、あらためて高高度長時間飛行可能UAVへの関心が呼び起こされた。数種類の 構想が提案されて、ロッキード・マーティンからはV字尾翼のディスタント・スターDistant Star (別名敵地侵攻高高度長距離飛行可能機)案もあったが当時は高解像度の宇宙配備レーダーの方が期待されていた。その結果、UAVへの期待は後退し、 2001年末あるいは2002年早々にロッキード・マーティンはずっと簡単な構造で中高度飛行の戦術ステルスUAV開発契約を獲得する。これがRQ- 170センティネルとして実現した。
  8. も うひとつ1990年代後半からの開発が大きな成果を生んだのが無人戦闘航空機unmanned combat air vehicle (UCAV) 構想だ。1999年にボーイングは国防高等研究プロジェクト庁Defense Advanced Research Projects Agency (Darpa) から契約を交付され、X-45AをUCAV実証機として製作している。
  9. ド ナルド・ラムズフェルド国防長官時代のペンタゴンでUCAVは迅速に勢いをつけていく。2002年に海軍は運用可能な機体を探していた。2003年に上記 UCAVはDarpaの各軍共通無人戦闘航空機システムJoint Unmanned Combat Air System (J-UCAS)となり、一号機が空軍で2010年に就役するものと期待された。しかし、強力な勢力がJ-UCASをばらばらにしようと立ちふさがった。
  10. 空軍はもっと大型の機体を求めており、空母搭載の制約を超えた寸法に関心を示していた。ノースロップ・グラマンがこの期待に対応して大型のX-47Cを双発、172フィートの翼巾で提案してきた。
  11. さ らに変化が2003年に発生し、空軍はJ-UCASを「グローバル爆撃可能機」“Global Strike Enabler” と定義した。空軍が想定したUCAVの役割は「敵地奥深く侵入し生き残ること」で厳重な防空体制の中に飛び込み、その後の有人機の到着までそのまま残り、 ミッションを貫徹しその場を立ち去ることだった。これにはUCAVのステルス性、飛行距離と航続時間が頼みで、空軍は2時間のミッション滞空時間と無補給 で1,000-nmの戦闘半径を想定していた。
  12. し かし敵防空網を2時間も制圧するだけの兵装を搭載することは極めて困難なため、空軍は航空電子戦airborne electronic attack (AEA) および情報戦闘システムinformation warfare systems.への関心を強める。ステルスUCAVは有人機よりも敵発信源に近づく事が可能で、妨害活動もより少ない出力での実施が可能だ。その当時の 空軍は「各種手段で情報戦を仕掛け、統合防空網を内部から崩壊させる手段の検討」をしていたという。情報戦は統合防空網が自動的に作動することに着目して 非常に有効な対抗策がという。
  13. UCAV にはISR任務に加え、空軍研究所のセンサー・クラフト計画Sensor Craft programが1990年代から求められている。センサー・クラフトとはクォーツの課題であったステルス性と高性能の両立をめざすもの。その中心には主 翼上の自然層流の維持があり、センサー類を機体構造内に搭載し、その他主翼の結合など特徴的なものもある。ノースロップ・グラマンではこのセンサー・クラ フトに自社独自研究の結果を組み合わせている。ロッキード・マーティンからは2006年にボールキャットPolecat 実証機が発表されており、狙いは同じだった。
  14. ま た2006年の四年間国防戦力検討によりJ-UCASは終了となった。その当時公表されていたおは海軍が艦載型実証機の開発を継続するということだった。 その時点でRQ-170はフライトテストを開始したばかりで、発注は20機弱のみだった。同機はより大型の機体が登場するまでのつなぎだとされていた。
  15. そこで極秘の計画がゆっくりと開始となり、宇宙レーダーとの競合が生まれた。同レーダーの信奉は国防総省上層部に根強かった。しかし、ペンタゴン人事異動で空軍の考える長距離無人戦闘用ISR/AEA機による敵防空網の破壊、機能低下構想が現実のものとなる。
  16. 今となってみるとノースロップ・グラマンに2008年早々に大型契約が交付されていたことがわかる。その時点では同契約は次世代爆撃機Next Generation Bomber (NGB)の実証機用だったと言われていたが、実は武装ISR機の開発契約であった。エンジンは単発で翼巾はグローバルホークとほ ぼ同寸で、X-47Bとほぼ類似の外観だが、もっと大きい主翼がついている。レーダー、電子監視装置とアクティブ電子戦装備を備え、おそらく小口径爆弾や ミニチュア航空発射型デコイ・ジャマーMiniature Air Launched Decoy-Jammer (MALD-J) を搭載する爆弾倉を有する。同時に通信中継機能communications gatewayを有し、通信衛星や高周波数無線で他の機体へ送信するのだろう。
  17. 新型UAVはCIAと共同開発で、この点はRQ-170と同じだが、空軍迅速能力開発室Air Force Rapid Capabilities Officeが統括している。同機はすでにグルーム湖でテスト飛行を実施している
  18. .他方で空軍とCIAが運行する少数のRQ-170各機は高い需要で中東堵太平洋で運用されている。このうちCIAが運用する機がオサマ・ビン・ラディン殺害作戦(2011年)で上空を飛行していたと言われる。
  19. 空 軍にとってJ-UCASの開発取消は次代の爆撃機の初期作戦能力を2018年に前倒しで整備する結果となり、当初は2037年とされていただけに相当の加 速だ。次世代爆撃機はいよいよ現実のものとなったが、公開予算では手当がない。IOC予定の前倒しやボーイングとロッキード・マーティンが合同事業体制を 急いで作ろうとしていることから、極秘予算の世界で計画実現の予算手当がすでにあったのであろうと推察される。
  20. 次 世代爆撃機の開発はロバート・ゲイツ国防長官(当時)が2009年に停止されており、当時は2018年のIOCには技術リスクがあり、経済破たんも停止理 由のひとつだったが、実は同計画は2010年に再始動されており、エアシーバトル構想が同機がないと実現できないというのがその理由だった。
  21. I 業界筋から本誌に対してロッキード・マーティンが「次世代爆撃機」(LRS-Bではない)を同社パームデイル工場(カリフォーニア州)で建造中であるとの 情報提供があった。2008年度予算で調達した部材の再利用と言われるが、計画全体の再始動はありえることだろう。ただし、もしそうであれば純粋な実証機 であるはずで、同機設計は2008年以降の変化を反映していないはずだからだ。
  22. ひ とつこの仮説を裏付ける要素がある。ノースロップ・グラマンとボーイングがこれまでLRS-Bを今後の成長機会ととらえていると市場アナリスト向けのプレ ゼンテーションで明らかにしている。ロッキード・マーティンは同じ表現をしていないのは実は同社がすでに新型爆撃機の契約をとっているからではないか。
  23. 2010 年時点の空軍プレゼンテーションでは引き続き「敵地侵攻型ISR機」“penetrating ISR”であり「侵攻・AEA代行」“penetrating, stand-in AEA”をLRSファミリー全体に共通の特徴として定義している。LRS-Bへ道をひらき、あわせて巡航ミサイルや迅速地球規模攻撃Prompt Global Strike 兵器体系向けの目標を探知するとしている。さらにこの発表では「提案中のシステム」とそれ以外を明確に区別しており、敵地侵入型ISRはそれ以外の扱いと して現実かつ予算手当のある計画であることがわかる。
  24. こ こでわかるのは空軍はステルスを依然信奉しているもの古典的といえる「単独行動、無警戒」モデルではなく、無人機を「任務実現手段」“enablers” として低出力、接近型ジャマーで敵防空網を妨害し、全方位型広帯域ステルス爆撃機で無人機を援護する構想なのだろう。この新装備がいつ公表されるかは興味 をそそる話題である。■


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