Aviationweek.com 1月14日
イラク戦争とアフガニスタン戦争は表裏一体だ。ともに9.11攻撃の余波であるが、違う理由と違う方式で戦闘が継続している。イラク戦は大部分が都市内部、宗派間、イラク国境内部での戦闘行動である。一方、アフガン戦は農村部、かつ大部分が南部、東部でパキスタン西部のパシュトゥーン族と関連のある地帯が舞台である。その結果、ナサニエル・フィック(アフガニスタンで2001年から2002年従軍の元海兵隊将校、現新アメリカ安全保障研究所で主任研究員)はアフガニスタン国境内の戦闘行為だけに目をとらわれず、「パシュトゥーン族の心理的国境には半分がパキスタンとなっていること」に注意すべきと語る。
アメリカから3から4旅団(1万人から1.5万人)を増派し、現在イラクで従軍中の部隊から手当てする案がある。だがアフガニスタンで兵力増強をしたとしても、イラクよりも広大かつ人口も多い同国の中では少々の規模拡大ではインパクトに欠ける。新しい陸軍・海兵隊共用対内乱野戦マニュアルFM3-24によると、民間人千人につき、対内乱兵員20名が必要とされている。これをアフガニスタンにあてはめると、必要な兵員数は60万人となり、実現は不可能な規模だ。同マニュアルの編者のひとりジョン・ナガル(元陸軍中佐、新アメリカ安全保障研究所主任研究員)はアフガニスタンで対内乱戦闘を成功裏に実施するためには「アフガン保安部隊の劇的な増加が必要だ」と語る。ゲーツ国防長官も最近になり、アフガニスタン陸軍を現状の7万人から13万人に増強する案を公表している。だが、ナガルは「されに倍増して25万人必要だ」という。さらに、タリバン内部で使命感・信条に欠けるものを分離させる工作が必要とも主張する。アフガン保安部隊の増強、タリバン勢力の減退、アメリカによる対内乱戦術の向上に加え、アフガン陸軍内部で経験の蓄積があれば、今後数年間のうちに戦闘の方向性が変わってくるというのである。
アフガニスタンへ向かうアメリカ部隊についてフィックはアフガン陸軍向けの訓練に従事させることを進言している。ナガルはまずはカブールの制圧が第一で、そのあと治安を郊外に広げるべきと見る。「一方でアフガニスタン・パキスタン国境地帯に追加部隊を駐留させる。これなら勝利は可能だ。これまで十分な部隊を投入していない。だが、もっとすべきことがある。」
アフガニスタン国内の戦闘が苛烈になる一方、イラクは落ち着いてきた。イラク政府はアメリカ軍撤退を2011年までに完了したいと希望しており、この立場に変更がない限り、アメリカに実施を迫る要求をしてくるだろう。短期的にイラクで大きな課題は反米シーア派指導者モクタダ・アル・サドルの扱いであり、バスラトサドルシティで自らの率いる民兵が2007年に敗北してからは活動は低調になっているが、支持者がヒズボラの例を模倣してシーア派の生活困窮者を援助する動きが見られると、米陸軍戦略研究所のスティーブン・メッツは注意を喚起している。「アル・サドルは自らを新興政治勢力と見ており、自分の勢力を守るために武装民兵を多数維持する一方で政治面で影響力を模索すると思います。」(メッツ)
不確定要因が多い中で、ひとつ確実なのはバラク・オバマ大統領が就任してイラクへの介入が今年から縮小に向かうことだ。「アメリカは裏方にまわり、兵站と助言という役割に変わる動きがすでにはじまっています。来年の今頃にはアメリカ軍によるパトロールがほとんどなくなっていても不思議ではないでしょう。」(メッツ)
コメント:アフガニスタンについてはこれまでも圧倒的に報道が少なく、事実をしっかりつかんでいる方は少ないと思いますが、陸軍、海兵隊関係者のコメントを見る限り、アメリカにおいても実態とは裏腹に軍事資源の投入が必要より不足し、前線では歯がゆい思いをしているのが伺えますね。新大統領が軍事作戦にどれだけ造詣があるのかまったく未知数ですが、短期間で終了すると見ているとしたら大きな間違いになるでしょう。その間には日本の役割も当然議論されることになるでしょうから、今のうちに状況をちゃんと把握すべきでしょうね。
イラク戦争とアフガニスタン戦争は表裏一体だ。ともに9.11攻撃の余波であるが、違う理由と違う方式で戦闘が継続している。イラク戦は大部分が都市内部、宗派間、イラク国境内部での戦闘行動である。一方、アフガン戦は農村部、かつ大部分が南部、東部でパキスタン西部のパシュトゥーン族と関連のある地帯が舞台である。その結果、ナサニエル・フィック(アフガニスタンで2001年から2002年従軍の元海兵隊将校、現新アメリカ安全保障研究所で主任研究員)はアフガニスタン国境内の戦闘行為だけに目をとらわれず、「パシュトゥーン族の心理的国境には半分がパキスタンとなっていること」に注意すべきと語る。
アメリカから3から4旅団(1万人から1.5万人)を増派し、現在イラクで従軍中の部隊から手当てする案がある。だがアフガニスタンで兵力増強をしたとしても、イラクよりも広大かつ人口も多い同国の中では少々の規模拡大ではインパクトに欠ける。新しい陸軍・海兵隊共用対内乱野戦マニュアルFM3-24によると、民間人千人につき、対内乱兵員20名が必要とされている。これをアフガニスタンにあてはめると、必要な兵員数は60万人となり、実現は不可能な規模だ。同マニュアルの編者のひとりジョン・ナガル(元陸軍中佐、新アメリカ安全保障研究所主任研究員)はアフガニスタンで対内乱戦闘を成功裏に実施するためには「アフガン保安部隊の劇的な増加が必要だ」と語る。ゲーツ国防長官も最近になり、アフガニスタン陸軍を現状の7万人から13万人に増強する案を公表している。だが、ナガルは「されに倍増して25万人必要だ」という。さらに、タリバン内部で使命感・信条に欠けるものを分離させる工作が必要とも主張する。アフガン保安部隊の増強、タリバン勢力の減退、アメリカによる対内乱戦術の向上に加え、アフガン陸軍内部で経験の蓄積があれば、今後数年間のうちに戦闘の方向性が変わってくるというのである。
アフガニスタンへ向かうアメリカ部隊についてフィックはアフガン陸軍向けの訓練に従事させることを進言している。ナガルはまずはカブールの制圧が第一で、そのあと治安を郊外に広げるべきと見る。「一方でアフガニスタン・パキスタン国境地帯に追加部隊を駐留させる。これなら勝利は可能だ。これまで十分な部隊を投入していない。だが、もっとすべきことがある。」
アフガニスタン国内の戦闘が苛烈になる一方、イラクは落ち着いてきた。イラク政府はアメリカ軍撤退を2011年までに完了したいと希望しており、この立場に変更がない限り、アメリカに実施を迫る要求をしてくるだろう。短期的にイラクで大きな課題は反米シーア派指導者モクタダ・アル・サドルの扱いであり、バスラトサドルシティで自らの率いる民兵が2007年に敗北してからは活動は低調になっているが、支持者がヒズボラの例を模倣してシーア派の生活困窮者を援助する動きが見られると、米陸軍戦略研究所のスティーブン・メッツは注意を喚起している。「アル・サドルは自らを新興政治勢力と見ており、自分の勢力を守るために武装民兵を多数維持する一方で政治面で影響力を模索すると思います。」(メッツ)
不確定要因が多い中で、ひとつ確実なのはバラク・オバマ大統領が就任してイラクへの介入が今年から縮小に向かうことだ。「アメリカは裏方にまわり、兵站と助言という役割に変わる動きがすでにはじまっています。来年の今頃にはアメリカ軍によるパトロールがほとんどなくなっていても不思議ではないでしょう。」(メッツ)
コメント:アフガニスタンについてはこれまでも圧倒的に報道が少なく、事実をしっかりつかんでいる方は少ないと思いますが、陸軍、海兵隊関係者のコメントを見る限り、アメリカにおいても実態とは裏腹に軍事資源の投入が必要より不足し、前線では歯がゆい思いをしているのが伺えますね。新大統領が軍事作戦にどれだけ造詣があるのかまったく未知数ですが、短期間で終了すると見ているとしたら大きな間違いになるでしょう。その間には日本の役割も当然議論されることになるでしょうから、今のうちに状況をちゃんと把握すべきでしょうね。
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