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厳しい米軍各部隊のヘリ運用事情





Aging U.S. Rotary Fleet Gets Upgrades
aviationweek. com 10 月8日

予算が厳しい中、アメリカの各軍は現有回転翼機の改修、改造で前線部隊の要望に応えようとしている。陸軍航空部隊の運用責任者ウィリアム・クロスビー准将は「これはヘリコプター戦争というべきものだ。予算制約の中、厳しい運用環境におかれている」という。新型機の導入のめどが立たない中、各軍は現有機材の保守点検に中心をおきつつある。クロスビー准将によれば、飛行時間の拡大、砂塵・高温・高地が組み合わさって磨耗損傷が機体に目立ってきたことを指摘する。陸軍の補給部門から航空ミサイル司令部へ今後の機材装備計画の検討が依頼された。今月は重整備計画の最初の報告書の締切があり、その後数ヶ月をかけて分析をし、装備計画を作っていく。
クロスビー准将は「機材は改修後は10年間の耐用年数を持たせたいところです。ではどうそれを実現するか。要は事前に行動をとることです。故障が発生してから’さあどうしよう’と考える事態にはなりたくありません」
【陸軍では①ブラックホーク】各軍の中で一番多くのヘリを運行するのが陸軍だとニール・サーグッド大佐(多用途ヘリ計画主査)は語り、現時点で350機のブラックホークが飛行している事実を指摘する。80年代製のUH-60A型が新型のL型、M型と一緒に飛んでいる。A型とL型はともに改修を受けており、M型の新造機を最初に配備するのはアフガニスタンになるとサーグッド大佐は語る。
陸軍の考えるUH-60の必要機数は合計1,931機。だが現有機数は1,750機。このためA型は全機L型仕様に改装を受けている。この作業に290日かかる。さらにM型への改修でフライバイワイヤー、完全デジタル管理のエンジン(Fadec)と共用エイビオニクス計器システム(CAAS)のコックピットに換装されるが、まだ改装工程の開発に2年間必要だ。性能向上を求める声は大きく、陸軍はM型の性能水準を既存機に取り入れていくことになる。サーグッド大佐は「まだ進行中ですが、性能向上内容の他型機への展開の検討をしているところです」という。
【陸軍②チヌーク】ボーイングは砂漠の嵐作戦以降のイラクでの教訓を取り入れていると、ジャック・ドハーティー(同社H-47チヌーク計画主査)は語る。その結果チヌークはアフガニスタン、イラクでの作戦により適合しているという。砂塵による腐食対策としてエンジンを守るフィルターに加え空気中の粒子の分離機(EAPS)がある。チヌークは本国で保守点検を受けるが、ドハーティによると「EAPSから大量の砂が出てくるので驚くことがあります。そのための装置なのですがアフガニスタンの砂の半分を本国に持ち帰っているのではないかと言う向きもあるくらいです」という。チヌークの旧型であるD型にも陸軍からのフィードバックでボーイングが改修をしている。「前線の使用部隊の声をいつも聞いています。陸軍と共同で改修が効果があるのかを見極めています」
クロスビー准将によれば陸軍の回転翼機向け業務計画は大部分が既存機体の改修あるいは稼動期間の延長であるという。同准将はチヌークの新しいF型、基本性能型のUH-60M、OH-58Dカイオワの前線配備を言及している。先にはUH-60のM型内容改修とアパッチのブロックIII改修が控えている。
「気になるのは現有機体を通常の4倍から5倍のペースで運行していることです」(同准将)
【海軍】海軍では艦隊からのフィードバックはより早く、内容も多い。これは運営管理モデルが確立しているためとスティーブン・イーストバーグ海軍少将(対潜・上陸・特殊航空作戦計画主任)は語る。「艦隊の最前線で教訓がまだ新しいうちに、われわれはその内容を理解したいのです」という。10年前は海軍は新開発を無抵抗に受け入れていたという。「熱心に新型機の開発に没頭していました」それがこの10年ほどで生産工程を重視するとともに特に最近は運用支援に中心が移ってきたという。「一種のヘリコプタールネッサンスとでもいうべきでしょう。20年前、40年前の技術でいろいろ進展があります。ハードウェア、ソフトウェア両面で新型を現場に提供する過程にあります」
海軍の最新鋭シーホーク対潜・水上艦艇用機はMH-60Rの開発は順調に推移したとディーン・ピータース大佐(H-60開発主任)は評価する。空母ジョン・ステニス艦上で同型19機の部隊が編成された。
【海兵隊】海兵隊で最優先なのはH-1の改修で、UH-1Y、AH-1Zコブラが含まれる。両機種ともまずキャンプ・ペンドルトン(カリフォルニア州)に導入され、UH-1Yは11月にアフガニスタンに投入される予定とジョージ・トラウトマン中将(海兵隊航空部隊副司令官)は説明する。初回の配備において「Y型はエンジン出力が大きく増加し、ペイロードと性能も向上したのでパイロット、乗組員が燃料、搭載兵器、輸送人員で運用上の妥協をする必要が一切なしに運用できましたし、アデン湾の海賊対策でも同じです。」(同大佐)
ハリー・ヒューソン大佐(海兵隊H-1改修事業主査)によると以前のAH-1W とUH-1Nは今でも前線に配備されているが、運用を継続するには多大の注意を必要とするという。トラウトマン大佐はUH-1Nは今でも有用な機体であるものの「三十年間の稼動で空輸能力が減少し、アフガニスタンのような高温の高地環境では課題が多い」とのこと。
海兵隊はV-22オスプレーの保守点検と信頼度の向上で多大の努力を進めている。トラウトマン大佐は同機の信頼性が低いことを9月の会議で取り上げている。ただ同機の優秀性に着目すべきと度大佐は考える。8月には前線配備の各機種で稼働率が向上したという。「機種ごとに目標値が違う」が。CH- 46Eで85%、CH-53Eで75%だったという。
CH-53E型とD型の改修内容は広範囲である一方、海兵隊は新型のCH-53K重量物運搬ヘリの投入を心待ちにしている。エンジン信頼性改善プログラム(ERIP)により同機のT64エンジンの三つの機種 -413、-416(CH-53D)、-419(CH-53E改修後)それぞれで稼動時間が増大している。リック・マルドーン海軍大佐(CH-53計画主査)はこの改修結果は劇的に大きいとみる。CH-53の砂漠地帯での重点検までの稼動時間合計はわずか150時間という。ERIPの結果、これが650時間になり、マルドーン大佐の目標は1,100時間という。
【まとめ】「手元にある機体を維持することが中心です。最優先事項は各機を飛行可能にし続けることにつきます」(マルドーン) この発言は各軍で共有できる内容だろう。

コメント イラク、とくにアフガニスタンでのヘリの酷使が伺える内容ですが、生産が追いつかなくなると今後の各軍のヘリ部隊編成が大変なことになりますね。また稼働率、稼働時間の低さには注意が必要です。予算が厳しいとはいえ、これからはproactive が合言葉となり、先に手を打つメンテナンスが中心となりそうですね。

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