中 国の軍事力増強にどう対処するのか。アセアン各国に加え、インドもこれから神経を逆立てられることになるでしょうが、当然日本もその動向を見守る必要があ ります。現状では遠隔地での実戦能力は限定されていますが、ISR能力、空中給油能力、空母群の整備が現実のものとなると米国だけが海洋支配権を持ってい た時代が終わる可能性が出てきました。中国の軍事力は国家のツールではなく中国共産党の目的を実現する手段であることにも注意が必要です。交易の動脈を海に頼る日本、そして世界経済にとってリスクが増えることになります。新しい時代がそこまで来ているの でしょうか。まず、冷静に事実関係を見ていきましょう。
China Expands Its Military Reach
aviationweek.com Oct 14, 2011 By Bradley PerrettBeijing
- 中国の軍事力はどこまで有効に機能するのか。その答えは同国の意志次第だ。今年に入り中国海軍艦艇が地中海に展開されたが、派遣艦艇は一隻でリビヤの民間人退避を支援したのであり、軍事上の実効性はない。
- ただ中国沿岸から300キロメーターの範囲となると話は違う。短距離弾道ミサイル1,000基、2,000機の作戦用機材があり、領空は地対空ミサイルで防護されている。
- これに対し中国の軍事力投射能力はまだ未整備で遠距離になると急速に低下すると見るアナリストもいる。.
- そ の主要原因は中国の軍事能力が台湾侵攻を主目的に整備されてきたことにあり、台湾へは最大でも数百キロメーターしかない。短距離弾道ミサイルならわずか 300ないし600キロメーターの飛翔距離で、戦闘機も空中給油なしで十分到達できる。中国本土から離れるほどISR能力は低下し、かつ高価になる。
- た だ中国が整備中の軍事力はこれよりも遠距離として1,000キロメーター以遠での戦闘力を実現しようとしている。整備中の計画が一つ実現するくらいでは中 国は地域内の超大国にはならないが、すべて実現すると軍事力投入の距離が拡大する。地政学の観点では中国軍は南シナ海をさらに広がりつつある。
- そ の例にトマホークに類似した巡航ミサイルDH-10がある。西側報道ではとかく弾道ミサイルが報道されがちだが、このミサイルの有効射程距離は1,500 キロメーターを超える。現在の生産ペースはおそらく年間100基だろう。H-6爆撃機に搭載する空中発射型なら3,300キロメーターに達するので、グア ム、沖縄ならびに南シナ海全域、さらにインドネシアやインド洋もその射程範囲に入る。
- 冷戦時代のソ連製戦闘機に範を取った短距離機が退役する中、作戦機の航続距離は伸びつつあり、J-10およびJ-11(フランカー)は機内燃料搭載量の大きさは要注意だ。長距離機の配備で遠隔地攻撃のみならず、中国艦艇への支援も可能となる。
- 遠距離での敵艦艇攻撃能力が増強中でH-6D爆撃機40機は対艦攻撃に投入される。それだけの距離ではISR能力が課題だが、配備中の中国製ISR衛星群がこの機能を向上させる。また空中早期警戒、信号探知能力も開発中だ。
- その一環として無人偵察機の開発があり、中国は超高高度機にISR能力に加えて指揮命令機能も持たせようとしている。そこで得る情報を一番有効に活用するのは潜水艦部隊だろう。
- 沿 岸部の防衛にはJH-7攻撃機80機とC-803K対艦ミサイルに大型ステルス機J-20が加わる。同機の外寸から攻撃半径は1,000キロメーター超と 見られ、これにミサイル自他の有効射程が加わる。Su-30MK2にはロシア製超音速Kh-31A対艦ミサイルを搭載する。そして革命的な対艦弾道ミサイ ルDF-21Dがある。ペンタゴンの評価は同ミサイルの有効作戦半径を1.500キロとする。今後急激に中国空軍力が成長する可能性がある。中国は 1960年代にも核兵器開発で急速な軍事力増強の実績がある。当時は資金も今ほど潤沢ではなかった。
- 中国発の空母は公試中だがまだ就役していない。同艦は最初は訓練用となるだろう。今後多数の空母建造が予測されている。t.
- 長 距離空輸能力は小規模で、イリューシンIl-76が10機のみだ。おそらく国産輸送機の生産を検討しているはずで、Avicは200トン超の機体を開発中 だといい、Il-76の追加導入も可能性がある。同機の性能上の制約はロシア製エンジンにあるが、国産CJ1000Changjiang(長江)高バイパ ス比ターボファンがC919旅客機(158席)に提案されており、新型輸送機にも搭載されるかもしれない。ただC919では機体が小型過ぎて空中給油任務 は困難で、ワイドボディC929の計画があり期待されている。
- 空中給油任務にはH-6Uが20機配備されていると見られるが、爆撃機からの転用で給油能力も貧弱だ。Il-78給油機8機の発注が2005年にされたが、契約でつまずいている。ただ導入されるとJ-11向けの空中給油が可能となる。
- 現状では空中給油を受けられる機材は四分の一以下だが、増加中で、飛行範囲は伸びつつある。特に南シナ海を意識しているようだ。ただ空中給油機開発はまだ推測の域を出ないし、新型爆撃機の具体的計画は明らかになっていない。
- 中 国空軍の考え方は南シナ海周辺諸国を対象に距離を重視する。2010年までの目標が沿岸以遠1,000キロメーターを作戦範囲とするものだった。まだこの 目標は完全に達成されていないが、2030年には3,000キロメーターが目標となると米国専門家は見ている。この背景には領海権の主張もあるが、グアム は約3,000キロの距離があり、さらにインドネシアまでこの範囲に入ってしまう。中国国境と2,000キロメーターを共にするインドが相手ならこれだけ の距離は不要なはずだと台湾は見ている。
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