Analysis: U.S. Arms Sales To Asia Set To Boom On Pacific 'Pivot'
aviationweek.com January 04, 2013
米国製航空機、ミサイル防衛システムなど高額な兵器類の販売が中国や北朝鮮と隣合う各国向けに大幅に伸びそうだ。条約加盟国や同盟国の強化がホワイトハウスが目指す太平洋地区への足場強化の中心課題であり、中国の領土問題で、北朝鮮はミサイル・核開発問題で地域内の緊張を高めている。
- 航空宇宙産業協会の副理事長フレッド・ダウニーはこの動きを「国内各社には成長機会となり友好国の装備拡充を助ける」として歓迎している。高額な米国製装備の需要は今後数年間は続く見込みと、同協会は予測している。
- 中国の国防支出の拡大に対する恐れによりアジア地域における米国の国防装備販売が増えてヨーロッパにおける売上減少を補うというのが同協会の見方だ。
- .同協会会員にはロッキード・マーティン、ボーイング、ノースロップ・グラマンが 名を連ねている。ただし、2013年予想では数値の表現はしていない。これはペンタゴンの国防安全保障協力庁Defense Security Cooperation Agencyも同じだ。同庁は世界規模の武器取引を監視監督している。取材に対して同庁は米太平洋軍の管轄地域内の各国との販売契約は2012年度に 137億ドル規模になり、年率5.4%増だったと明らかにした。
- 2012年中には合計65回の政府が仲介した海外向け軍事販売案件の通告が議会に提出されており、合計額は630億ドルになる。
- また2011年の米国による武器委譲契約は663億ドル相当で、このうちサウジアラビアが334億ドルで一位、インドが69億ドルで二位だった。
- 中国が個別案件で一層強硬な態度に出ていることから東南アジア各国の防衛予算は確実に増えていくと見られる。また、12月には日本と韓国でそれぞれ米国寄りの保守派が当選していることで販売増にはずみがつき、改めて米国と同盟国、共同国とのつながりが強まる予想だ。
- . オバマ政権は防衛装備の売却は一層重要性を強めており、米国の世界規模での権益保護の観点では費用対効果が高いと見ている。販売により外交関係強化に加え 長期間の利害関係の共有が実現する。また米国の観点ではアフガニスタンのような戦場で共同作戦が実施できることになるのは好ましいことでもあるし、同盟国 の自衛能力強化も歓迎される。
- ペ ンタゴンは情報収集・監視・偵察能力の強化を無人機システムの導入でアジア太平洋で推進したいと考えている。この能力が充実すれば偶発事故を回避し誤解を 未然に防ぐことができる一方、協力関係も強化できる、とサミュエル・ロックリア海軍大将 Admiral Samuel Locklear(ハワイに司令部をおく米太平洋軍司令官)は発言している。
- ロッキード、ボーイング、ノースロップ、レイセオンといった大手メーカーは自社製品・サービスへの需要がアジア太平洋で増加すればペンタゴンの予算支出減少に対応できると期待を強めている。この四社は衛星、レーダー、航跡追跡施設、ミサイル迎撃手段といった製品を手がけているので一番利益を享受できる立場にある。
- そ の一環としてオバマ政権は12月に正式に12億ドル規模でノースロップ・グラマンRQ-4グローバルホーク本体と付属装備の韓国への売却案件を正式に提案 している。グローバルホークには雲を通過できるレイセオン製センサー類を搭載しており昼夜問わず敵軍の配置を広範囲で探査できる。韓国は同機の導入で北朝 鮮の動きを事前に知る能力が強化される。
- 韓国はかれこれ4年間もグローバルホークへの関心を表明していたが、米政権はこれまで販売提案を先送りにしてきた。その理由は東アジア内の軍拡競走を刺激することを恐れていたためであった。
- .韓国がグローバルホークを購入するとアジア太平洋では初の導入となる。ノースロップはオーストラリア、日本、シンガポールも同機に対する関心を示しているという。
- .今回の販売案件通告は北朝鮮が12月12日に長距離ロケットを発射し、人工衛星を宇宙に送った事件から二週間もたたないうちに実現した。国連決議により北朝鮮はミサイル実験、核実験を禁じられている。
- 各 種弾道ミサイルに対してすべての飛行段階で防衛策を講じる点で日本が米国にとって最重要共同国として浮上してきた。米政権は議会に対し北朝鮮ロケット発射 の二日前に日本が総額421百万ドルでイージスシステムの性能向上策をミサイル護衛艦二隻に対して実施し、弾道ミサイル攻撃に対する防衛能力の向上を求め ていると通告している。
- 日本はあわせて二番目の陸上配備Xバンドレーダー基地の受け入れでも同意している。これはロッキードの終末段階高高度地域防衛システムの購入を意味する。
- .しかしなんといっても米国装備の中でもロッキード・マーティンのF-35共用打撃戦闘機が最大の存在だ。日本は同機導入を決定済みでF-4の後継機種とすべく50億ドル超の出費をする。シンガポール、韓国も同機を検討しており、韓国はユーロファイターのタイフーンとボーイングF-15サイレントイーグルも同時に比較検討している。韓国の購入規模は60機程度で70億ドル規模になる。
- インド向 け防衛装備販売額は現在80億ドル規模だが、2008年時点ではゼロだったわけで、今後も拡大していくとみられる。インドの計画は今後10年間で 1,000億ドルを支出して装備強化をすることで中国に対抗するもの。インドと中国は短期間ながら高地国境線を巡り1962年に軍事対決したことがある。
- 一方、台湾は導入済みF-16A型B型145機の性能向上策を実施中で、最新鋭レーダー、高性能電子戦装備他を搭載する。ロッキード・マーティンは18.5億ドルでこの作業に着手した。
- ホワイトハウスは台湾の戦闘機能力の穴埋めとしてより高性能のF-16C/Dの売却も検討している。これは台湾が長年求めてきたものだ。
- 中国は台湾の復帰を場合によっては武力に訴えても実現する構えで、米国は1979年立法により「十分な自衛能力」を維持する必要な場合は台湾を支援する立場にある。
- .ロックリア大将は太平洋への「再バランス」の中心は米国の条約同盟国であるオーストラリア、日本、韓国、フィリピン、タイの各国の防衛装備近代化・強化であると説明しており、その努力はすでにはじまっているという。■
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