意外に広がりを示しているJAXAの活動にあらためて注目です。海洋監視はレーダー観測技術の応用で当然考えていっていい内容ですが、紹介の仕方自体で妙なアレルギー反応が市井から出ても困りますね。
L-band SAR Satellite May Help JAXA’s New Military Job
JAXA may get ocean-surveillance job with its new space-law assignments
aviationweek.com May 1, 2014Frank Morring, Jr. and Bradley Perrett | Aviation Week & Space Technology
.日本の民生用宇宙機を軍事目的にも転用出来る道が新しい宇宙利用政策で可能となった。写真はH-IIAロケットにGPMミッションを搭載し、打ち上げを待つJAXA種子島施設。
Bill Ingalls/NASA
JAXA宇宙航空研究開発機構が開発した衛星が宇宙基本法改正により防衛機能が付与される。ALOS-2(域観測技術衛星だいち2号)の打ち上げが今月に行われるのが、この先行事例となる。海上自衛隊は衛星データから域内の艦船追尾が可能となる。
JAXA理事長奥村直樹はJAXAの三つの課題の最初に「安全保障と災害対応の準備」を掲げており、民生用宇宙機への投資見返りを増やそうとしている。.
JAXAは引き続き宇宙科学研究で日本が先頭に立つことを掲げているが、防衛分野はこれまで見られなかったものである。ただ、JAXAは2005年に宇宙偵察衛星4基を打ち上げている。
日本は米戦略司令部と非公開の宇宙状況認識 space situational awareness (SSA) 情報の交換を外務省経由で昨年末に合意していることもあり、JAXA理事長の発言になっている。「JAXAの収集情報は外務省へ提供しています。新たに軍事衛星を開発するという話ではなく、現有の機材を利用して情報を提供するものです」(奥村理事長)
ALOS-2レーダー衛星により海上自衛隊は艦船の追尾が可能となる。 Credit: JAXA Concept
検討しているのは海洋監視機能だ。奥村理事長は Aviation Week の取材で「民生用宇宙技術でこれまで開発してきたものをSSAにも活用していく」と発言している。「防衛用の利用は防衛省がとり行います」
同理事長は海洋監視への利用はまだ決定されたわけではないと強調する。「今のところはSSAだけですが、利用構想自体は秘匿内容ではありません」
JAXAが海洋監視用途を実施する場合はALOS-2(だいち2号)を利用するはずである。JAXAはNASAと共同で全球降水観測 Global Precipitation Mission (GPM) による南北緯度65度内の降水降雪観測を宇宙から行なっている。
ALOS-2打ち上げはH-IIAロケットにより種子島から5月24日の予定だ。同衛星は三菱電機が制作しており、Lバンドの合成開口レーダー(SAR)を搭載することで本来の任務である陸地観測の解像度を上げること以外に海洋監視機能が実現する。
冷戦期にはソ連製の宇宙機がSARで艦船航行を監視していた。これは航跡を認識して航行中の艦船を識別するものであった。ALOS-2は昼夜を問わず解像度1から3メートルで50ないし350キロメートルの航跡を識別できる。またSpaise2という自動識別装置も搭載しており、艦船が搭載するAIS船舶自動識別とSAR画像を組み合わせ船舶名称を特定し、追尾することができる。
実現すれば中国や北朝鮮の脅威に日本が直面している現状で、JAXAはより大きな防衛への役割を果たすことになるが、宇宙利用の大きな目標はJAXA技術・機材で日本経済を活性化することにある。
「新たに事業推進機能を立ち上げ、、これまで宇宙とは縁がなかった産業界を支援し、宇宙で実験や事業を展開したい企業を支援できます」(奥村理事長)
この新組織はNASAが立ち上げた国際宇宙ステーションの民生利用を促進するための宇宙科学促進センターCenter for the Advancement of Science in Space (Casis)と類似している。JAXAはISSでも最大規模の加圧モジュールを運用しており、各社に同施設の利用を勧奨している。
利用例にヤクルトがあり、同社は抗がん薬剤の開発を進めている。「ヤクルトとの共同開発研究で宇宙飛行士の免疫力低下防止策がわかれば将来の宇宙旅行の範囲がひろがります」(奥村理事長)JAXAではきぼう実験棟でタンパク質結晶化を低重力下で行い地上より簡単に薬剤開発を進められるという。
さらに新型打ち上げ機H-XとしてH-IIIの開発も進めている。エンジンはLE-7の改良型で初打ち上げを2020年としている。これまでのHロケットでは打ち上げコストの関係から不可能だった商用打ち上げビジネスへの参入を期待し、奥村理事長もスペースXのファルコン9のような低コスト打ち上げ機には対抗できていない現状を認めている。
「これまでは衛星打ち上げやロケット開発で事業成果を評価してきましたが、今後は宇宙基本法が求める三分野でどれだけ貢献できたかで評価をうけるでしょうね」■
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