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★ステルスの有効性はどこまで減じているのか 新型レーダー、赤外線探知装置の進歩に注意



ステルスの神話が急速に凋落してきた、との報告がこれまでもありましたが今回の記事はなんといっても技術的にその理由を説明しているのがすごいところです。(電子技術に詳しい方の精査をお願いしたいところです。)まさしく矛と盾の関係でしょうか。

New Radars, IRST Strengthen Stealth-Detection Claims

Counterstealth technologies near service worldwide

Mar 16, 2015 Bill Sweetman Aviation Week & Space Technology

ステルスが頼りにする低レーダー断面積(RCS)を中心のステルスへの対抗技術が世界で普及の様相を示してきた。複数の新技術が開発中であり、レーダー装置、赤外線探知追跡装置(IRST)のメーカー各社はステルス対抗技術が実用化の域に達したとし、米海軍はステルス技術そのものが挑戦を受けていることと公言している。
  1. こういった新装備は各種センサーを統合して目標の探知、追尾、識別のデータを自動的に融合し、ステルス機への交戦を実現するのが特徴だ。
NNRTの55Zh6M は複数レーダーを組み合わせ車両で移動が可能。単一ユニットとしての55Zh6UMEにはVHFおよびUHFアンテナを備え、配備される。 

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  1. ステルスが部分的に超短波(VHF)レーダーで効果を失うのは電子物理の観点で説明できる。機密解除となった1985年のCIA報告書はソ連がステルス対抗技術の第一陣として新型VHFレーダーを開発し長波長の不利を補うと正しく予測していた。波長が長いと、機動性が失われ、解像度も低くなり、クラッター現象が生じやすくなる。ソ連は崩壊したが、ニツニー・ノヴォドロド無線技術研究所Nizhny-Novgorod Research Institute of Radio Engineering (NNIIRT)が開発した55Zh6UE Nebo-Uは1990年代に実戦化されており、ロシア初の三次元VHFレーダーになった。NNIIRTはその後、VHF方式のアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)装置を試作している。
  2. VHF方式のAESAは55Zh6M Nebo-Mマルチバンドレーダーとして生産に入り、ロシア空軍向けに100セット以上が調達される。このNebo-M はトラック搭載レーダー3基(すべてAESA)、VHF方式RLM-M、Lバンド(UHF)方式のRLM-D、S(X)バンドのRLM-Sで構成。ロシア文献ではそれぞれ、メートル、デシメートル、センチメートル単位の周波数としている。各レーダーにOrientir 位置割り出し装置がつき、それぞれにGlonass衛星航法受信機を備え、無線あるいは優先で地上制御車両と連結する。
  3. VHFでは走査速度が遅くなる欠点がつきものだったが、RLM-Mは電子走査を機械式走査に重ねるてこれを解決。走査範囲は120度で連続追跡が可能。この範囲だと走査は事実上即座に可能で放射エネルギーを目標上に照射し続けることができる。VHFの利点を保ちながら、中国のDF-15短距離弾道ミサイルのRCSだとXバンドで0.002 m2、VHFだと0.6 m2 になるとNNIRTは説明。
  4. Nebo-Mではレーダー3つのデータを融合して確実に標的を撃破する。初期探知のVHFがUHFレーダーにキューを出すと、つぎにXバンドのRLM-Sにキューが出る。Onetirにより正確なアジマスデータが生まれ三種類の信号をひとつにした標的の姿が浮かび出てくる。
  5. もっと高周波のデータはVHFより正確度が高くなるので標的に集中させれば探知成功の可能性が高くなり、追尾でも同じだ。「停止凝視」モードでアンテナ回転を止め、レーダーを電子的に90度視野で走査させると標的に照射するエネルギー量は連続回転時の4倍になり、有効射程も4割増える。
  6. Saabの新型ジラフGiraffe 4A/8A SバンドレーダーはAESA技術や高性能処理機能で高バンドでも小型標的への対応が可能となった。モジュラー構成によりAESAの利点を最大限に活用し、信号・雑音の区別を可能とする。そのねらいはいかに「純粋度」を高めるか、つまり照射エネルギーを目標周波数に集中させることで極めて小さなドップラー変化でもとらえて移動中の標的を探知することにある。
  7. 処理技術の新動向には「多重仮説」追尾 “multiple hypothesis” trackingがあり、反響が弱くても繰り返し解析して追尾を認識するのか移動パターンから無視するかを峻別することができる。中国もロシアと同様の方法を模索しており、昨年の珠海航空ショーでその一端が明らかになった。大型VHF方式AESA装備JY-27A Skywatch-Vが出展され、ロシアのRLM-Mとほぼ同等とわかった。メーカーは中国電子科技集団公司 China Electronics Technology Corp. (CTEC)。またショーではこれと別のUHF方式AESAが二型式とSバンド方式パッシブ電子スキャンアレイレーダーYLC-2Vも展示されていた。

  1. 出展で中国がアクティブ、パッシブ両面で探知装備の整備を図っていることが判明した。またYLC-20の名称の広範囲指向性ワイドバンドパッシブ受信システムの存在が明らかになった。これはCETC製DWL-002と併用するものと思われる。DWL-002はパッシブ方式コーヒレントロケーション(PCL)方式の三セットをあわせたもので、チェコのERA製 Veraと類似している。これは信号入力の処理で時間差を利用して標的を追尾するものだ。またJY-50「パッシブ・レーダー」の図も展示されていたが、これはVHF帯を利用する。
  2. これまでのPCLは標的の出すアクティブ放射の利用が前提だった。だがPCLを他のパッシブ受信機にアクティブレーダーと組み合わせて接続すると防衛側はバイスタティックあるいはマルチスタティックでの探知が可能となり、低RCSのステルス技術の有効性を減らすことができる。RCS削減技術は通常レーダー(モノスタティック)を想定している。極度の後退角のついた前縁でレーダー信号を偏向させてもマルチスタティックレーダーなら探知可能なスパイクが発生する。
  3. 旧式かつ小型VHFレーダーに改良を加える供給元が少なくとも5社ある。チェコ共和国のレティア Retia 、ハンガリーのアルゼナル Arzenal 、ウクライナのアエロテクニカ Aerotechnicaおよびベラルーシとロシアの数社だ。中国海軍は最新式防空駆逐艦のタイプ52C旅洋II型、52D旅洋III型にVHFレーダーを搭載している。さらに新型のVHFレーダーが今後出現する055型駆逐艦に搭載されない保証はない。
  4. ステルス機が低周波レーダーやその他探知装備で危険にさらされていることは2013年以降、米軍高官なら認識している。米海軍作戦部長ジョナサン・グリナート大将は公の場でステルス機がA2D2に対応できるか疑わしいと発言しており、2014年1月には新しいアメリカの安全保障を考えるセンターが出した報告書で「最近の分析の一つでは低RCS機の探知技術で革命的な進展がある反面、ステルス性能で呼応した向上がない」と指摘していた。
  5. ボーイングはEA-18GグラウラーはVHF帯の妨害ができると宣伝しており、現行のALQ-99低バンドジャミングポッドを指している。さらに次世代ジャマーでは第二次性能向上が予定されている。ただしこの契約交付は2017年の予定で、初期作戦能力獲得は2024年になる。
  6. これと別の脅威は長波長の水平線超えOTHレーダーでオーストラリアが運用中のジンダレーOTHレーダーネットワーク(JORN)が典型例だ。ロシアにはレゾナンスRezonans-NEがあり、中国もOTHを運用中だ。ここでもデータ処理が精度と感度を上げる鍵となる。JORNではフェイズ5で処理能力を向上させようとしている。
  7. OTHの長波長レーダーはもともとステルスに強い。極端に長い波長は標的の物理的サイズに近くなる。通常のレーダー断面積削減技術はこのため無効となる。ジンダレーの設計者はB-2の探知も可能だと1980年代末の時点で公言しており、米空軍はこれを真剣に受け止めた。ただし当時の空軍はOTHの解像度がとても低いため迎撃の段取りは取れないと反論していた。ただし今日では低解像度もネットワーク化レーダー群の活用で緩和され、OTH-Bは高解像度センサー類にキューを出せるようになった。
  8. 米空軍はIRSTを活用しようとしている。先行する米海軍ではスーパーホーネットの中央燃料タンクに搭載するIRSTの初期定率生産が2月に承認された。韓国向けF-15KやシンガポールのF-15SGでも同様の装備が付いている。80年代のF-14D向けに開発されたIRSTが起源のこのサブシステムだ。.
  9. ペンタゴンの作戦テスト技術部門長は海軍装備の追尾性能に批判的だが、空軍もその性能にを素直に認めており、これまでIRSTを無視してきたことと対照的だ。空軍はF-16アグレッサー部隊にIRSTポッドを搭載し運用経験を有する。海軍が調達する第一期分IRSTはわずか60セットでその後改良型を10セット導入する。
  10. 西側でIRSTで知見を豊富に有するのはSelex-ES社でタイフーンのパイレートIRSTの契約企業である。またスカイワード-Gをグリペンに供給している。同社は低RCS標的の探知、追尾にIRSTで成功したと発表している。これは亜音速飛行中に機体表皮の摩擦とエンジンの熱放射や排気噴煙から成功したとする。グリナート提督はこの点を強調した発言を2月にワシントンでしており、「空中を高速度で移動する何かがあれば、大気の分子を乱し、排熱するはずで....探知可能なはずだ」と述べた。
  11. 探知技術が向上したからといってステルスの有効性が即座になくなるわけではない、というのが業界、政府関係者の多数意見だが、それでも将来のステルス技術要素の議論の根底にこの問題が影を落としている。米海軍の艦載無人偵察攻撃機構想ではステルス性をどこまで求めるのかで議論が続いているが、中心はA2ADの進展だ。長い間にわたり一般のみならず専門家にも見られるてきた各種低技術のどれを選択してもステルス性能で大きな差は生じないとの誤解がこれで終止符を打つことになる。■


コメント

匿名 さんのコメント…
ステルスが探知されやすくなったとしても非ステルス機はそれ以上に探知されやすいのだからよほど遠距離でステルスを探知できるのでない限りステルス性の重要度は高いままだと思う
moneyfreedom さんの投稿…
水掛け論になるのは避けたいのですが、要はこれからイタチごっこが続くということです。LRS-Bは機体サイズを活かして全方位ステルスを目指すという話ですが、F-35やF-22のサイズでは無理でしょう。ましてF-35がこれから就役してくるのを見越して相手方は技術を進歩させてくるという構図。ステルス万能の神話から早く開放されたいものです。

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