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★主張 南シナ海の平和維持のためインドネシアに国際海上作戦センターを設置すべきだ



インドネシア大統領が訪日していますので、ちょうどいいタイミングでしょう。南シナ海、インド洋を視野に入れた海上交通の安全確保の作戦基地をインドネシアに設置してはどうかという現役米海軍士官の意見です。またインドネシアへのテコ入れも視野に入っているようですが、海洋国家としてのアイデンティティに目覚めようという資源大国(最大のイスラム国家でもあります)のインドネシアを安定させ、中国の危険な動向に対する抑止力に巻き込むという構想にはなかなか面白いものがあります。集団的安全保障の典型例になるかもしれません。注目したいと思います。

Essay: U.S. Should Consider Establishing a South China Sea International Operations Center in Indonesia

March 9, 2015 7:15 AM • Updated: March 8, 2015 11:32 PM

Adm. Harry B. Harris Jr., commander of U.S. Pacific Fleet, walks with Japan Maritime Self-Defense Force Cmdr. Kazutaka Sugimoto on Feb. 6, 2015. US Navy Photo
太平洋艦隊司令官ハリー・B・ハリスジュニア大将が海上自衛隊杉本和孝二佐と基地内を歩くon Feb. 6, 2015. US Navy Photo


米太平洋軍U.S. Pacific Command (PACOM) の司令官に就任するハリー・B・ハリス大将は議会で昨年末証言し、「中国の台頭が軍事的には地域内で、経済的には全世界的に顕著となり、自己主張を全面に出した行動を域内各国に示すことで当方には機会になる一方で慎重な対処が必要だ。我慢強くこの最大課題に取り組む必要がある」と発言。
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その課題に答えるべく、米海軍は国際海洋作戦センターInternational Maritime Operations Center (IMOC) 司令部をインドネシアに置き、アジア太平洋地区での海軍の責任を示しつつ、南シナ海やインド洋の最新状況を監視し、中国の台頭に対応する新しい仕組みづくりに乗り出すべきだと考える。

人民解放軍海軍The People’s Liberation Army Navy (PLAN) は潜水艦・水上艦建造に注力しており、三隻の空母を運用する計画で、艦船を標的とするDF-21D弾道ミサイルを整備している。とくに潜水艦部隊の増強が接近阻止領域拒否作戦の中心的手段だ。2020年までにPLANはアジア太平洋地区の各国の二倍の規模の潜水艦隊を運用する。単に隻数だけでなく各種任務の内容や作戦の地理的条件も重要な要素だ。

PLANは艦船の作戦範囲をこれまでの中国本土沿岸から広げており、今後も拡大傾向は続くだろう。PLANは2009年以来、艦船の作戦継続能力を誇示しており、海上物資補給をインド洋でも行っている。2013年から14年にかけて、インド洋に原子力・通常型双方の潜水艦を三回派遣している。

インド洋まで活動範囲に収めた中国は同時に南シナ海で商船団の規模を拡大している。国家海洋局 State Oceanic Administration (SOA)は中国共産党傘下の巨大機関でその役割の2つに注視が必要だ。ひとつが領海と主張する範囲での法執行であり、海底探査測量がもうひとつだ。SOAは中国の沿岸警備隊(CCG)他海洋関連機関を司っており、2020年までに500隻の艦船を投入する。SOAは共産党に「先制使用方針」を実現する手段となっている。つまりスカーボロー環礁の例のようにCCGをまず領海主張の手段とし、紛争に発展すればPLANの強力な威力を投入する。法執行の一方でSOA所属艦船は海中探査を行い資源探査とともに潜水艦作戦に適した海中の状況も調査している。

また南シナ海・インド洋で中は別の軍事活動を開始しており、プレゼンスを強めている。PLANはフィアリー・クロス礁(スプラトリー諸島)で浚渫、港湾設備拡張を実施中で、水上艦・潜水艦用の補給拠点とすることをねらっているようだ。さらに滑走路は航空作戦に利用し、兵器を設置し防御、攻撃双方に想定しているようだ。2014年にはPLAN司令官呉勝利提督 Wu Shengli が立ち寄り本人が南シナ艦隊司令官だった2004年当時に打ち上げた構想の実現度合いを視察、習近平国家主席President Xi Jinping が同年にスリランカ訪問した際にはPLANは同国を潜水艦の遠距離補給基地とすることを認めている。PLANにはインド洋では恒久的海軍基地がないが、スリランカ、イエメン、パキスタン等とは経済連携を強めており、海軍部隊の前進配備の支援が出来る体制を整備してきた。

米国政府は戦略的な地域再配備を重点としてきたが、オバマ政権は2015年度版国家安全保障戦略でこれを明記している。新戦略案では中国の軍備近代化と領土恫喝の可能性に着目している。また米国が「力の立場から競合状態を管理下に置くこと」を提言する一方、「中国軍の近代化とアジア内プレゼンス拡大を注意深く監視し、誤解や誤算による不測の事態の発生が起こらないよう努力する」ことを求めている。

Cmdr. Steven Foley, left, commanding officer of the guided-missile destroyer USS Sampson (DDG 102), and Gen. Moeldoko, commander of the Indonesian national defense forces.
Cmdr. Steven Foley, left, commanding officer of the guided-missile destroyer USS Sampson (DDG 102), and Gen. Moeldoko, commander of the Indonesian national defense forces.


再配備戦略の一環として米海軍はIMOCをジャカルタに設置し、インド洋と南シナ海の両方に目を光らせるべきだ。IMOCはインド、インドネシアはじめ東南アジア各国の海軍と協力する作戦センターとなる。この各国海軍が共同して運営する作戦センター構想は前例があり、バーレーンに司令部を置く合同海上部隊が存在する。また英国ノーウッドにはNATOの連合海上司令部が海軍作戦と商船部隊の双方で調整業務を24時間運用している。

IMOCはアジア太平洋の商船通航の保護もできる。2015年度版国家安全保障戦略では米国は「通商航海の自由航行を保証し、緊急時に迅速に対応し敵意ある行動を取るものを阻止すべき」としている。海上交通の重要性は数字の上でも十分明らかだ。世界交易の9割以上が海上で運ばれ、そのうち3割近く、金額で5兆ドル相当が南シナ海を通過している。

中国も南シナ海、インド洋双方の経済的重要性を理解している。中国の必要とするエネルギーの84%がマラッカ海峡を通過する。習主席は海洋力整備を21世紀の海上シルクロード構築ととらえ、港湾、インフラ整備、特別経済地区をセットで東南アジアと北部インド洋に建設する、としている。南シナ海、インド洋での中国の経済開発が加速化している。2014年にはベトナム付近で海上石油掘削施設を稼働させた際にはCCG艦船数隻が近隣を保護の名目で遊弋している。習主席はスリランカ、モルディブ訪問で数十億ドル規模のインフラ投資を行っている。2012年には東アジア地域包括的経済連携 Regional Economic Comprehensive Partnership (RCEP) を提唱し、ASEAN加盟国等を取り込む自由貿易協定体制を目指しているが、米国は参加していない。

Why Indonesia?

International Monetary Fund (IMF) Data Comparing Population and GDP Source: http://www.imf.org/external/datamapper/index.php
International Monetary Fund (IMF) Data Comparing Population and GDP


アジア太平洋地区にはシンガポールのようにIMOC本部設置に適した場所は多いが、インドネシアはユニークな戦略的な特徴を有している。まず、その他アジア太平洋諸国との比較でインドネシア経済は中国、日本、インドに次ぐ第四位の規模を有している。インドネシアの経済影響力を考えると、米政府も同国との二国間貿易改善とともにインドネシアを環太平洋経済連携協定 Trans Pacific Partnershipに組み入れるべきである。域内11ヶ国が参加する同協定はオバマ政権のアジア太平洋での経済政策の要である。

第二に新大統領ジョコ・ウィドドJoko “Jokowi” Widodoの元でインドネシア はを海洋国家として主要メンバー入りを目指している。大統領就任後、「海洋国家としてのインドネシアは世界規模の海洋国として主張を強めるべきだ。その地位が確立できれば域内、国際協力により国民の繁栄が実現する」と発言している。そのためジョコウィ大統領は軍事支出を対GDP比で1.5%まで増加させるとし、さらに5点からなる海洋戦略教義を打ち出し、同国を海洋国家にしようとしている。

ジョコウィ大統領は自国予算が乏しい中、海外投資が構想実現に大きな存在だと認識しており、「投資が必要だ。投資家が必要だ。それで経済が成長路線に入り、港湾が拡大し、空港が建設できる」と発言。バラク・オバマ大統領が任期最後の数年に入る中で意味のある関係をインドネシアとの間に築く戦略的なチャンスが今ある。経済開発が進み、海洋安全保障も実現できる。オバマ大統領はインドネシアと個人的なつながりが強く、自身も幼少期のころに同国に住んだことがあり、実母も20年間以上に渡り同国内で働いていた。オバマ大統領が行動に出ることがジョコウィ大統領の構想実現に不可欠であるが、条件は米国議会がインドネシア経済のテコ入れに賛同することだ。

第三にインドネシアが民主制度の指標となる可能性がある。東南アジアではタイ国のように政治不安が続いているが、インドネシアはインド、米国に次ぐ世界第三位の民主主義大国である。2014年の数字では全国民の50パーセントが30歳以下で、労働人口はこれから2020年までに14.8百万人増加する。このため民主主義の理想追求とともに市場開放経済の効果を発揮できる一大チャンスが到来する。

第四にインドネシアにIMOCが設置されればその立地条件はアジア太平洋の海上作戦で中心的位置になる。米海軍は横須賀の艦隊司令部だけで合計48百万平方カイリ(89百万平方キロ)の地域を統括させ、域内35ヶ国との関係を維持している。これだけ広範な責任を求めるため、域内に数カ所の拠点が必要。インドネシアのIMOCが加わると、海軍は域内各国海軍と共同して各方面の海上範囲を監視できる。

このようにインドネシアでIMOCの戦略的な意味が実現しそうだが、同時にインドネシアにも欠点がある。特に港湾と道路網を指摘したい。世界銀行は昨年にインドネシア経済開発政策の評価を行い、インフラ整備の遅れを指摘している。また国内港湾施設の能力不足は相当深刻と評価し、他のアジア各国と比較しても劣悪とした。さらに道路網整備がこれまで数十年間放置されて、深刻な容量不足、渋滞問題、物流問題を引き起こしているとした。道路網改善に世銀は1,200億ドル規模の投資が必要と試算している。

ジョコウィ大統領はインドネシアのインフラ改善を正しく理解しているようだが、厳しいハードルに直面している。まず労働人口内の技能格差を縮めなければならない。公的・私的市場機能の改善も必要だし、国際テロリズムの脅威にも屈せず、汚職を追放し、およそ220百万人のイスラム教徒の支持を維持し、その他少数派で700もの言語を話す国内各派でも同じだ。2014年のインドネシアは国連に対して人権面での違反事項があったことを報告できなかったため、本当に人権問題解決の姿勢があるのか疑問視された。欠点はあるものの、インドネシアは前例のない歴史的なチャンスにあり、アジア太平洋で急成長する可能性がある。

米国がアジア太平洋へ勢力を再配備するのは困難な挑戦であり、中国の海洋力整備を監視していくのも大変な仕事だ。オバマ大統領は20111年のオーストラリア訪問時に「21世紀のアジア太平洋で米国がすべての局面に関与していくことに疑いをもたれないようにしたい」と発言。もし米国が「すべての局面で」関与するのであれば、中国が南シナ海・インド洋で権益拡大を狙う中で米海軍は議会ならびに政権の支持のもと、一層大きな役割を求めていくべきである。■



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