
延々と米国議会内ではF-22をめぐり議論が続いています。以下の記事はそのまとめのようで、目新しい事実はありませんが、事実関係を整理するには最適です。言論の自由と健全な議論が米国では生きていますが、F-22が調達できるのかを気にもむ日本としては単に傍観していられない内容ですね。肝心の日本への輸出の可能性ですが、まず増産が認められないと先には進みません。ということでこの話題でしばらくは進展は少ないのではと思われますが、引き続きウォッチしていきましょう
White House Threatens Veto of Defense Bills with Extra F-22s
aviationweek.com 7月19日
F-22ラプターが何機あれば米空軍の制空権が維持できるのかというホワイトハウスと議会の間で論争が長期化の様相だ。
【大統領拒否権は本当に行使されるか】 オバマ大統領は187機で生産中止で予算化されてきたF-22が増産となる法案には拒否権を行使する構え。一方、議会は安全保障、国内経済、政治面の動機から増産を求めており、このままでは衝突は必至だ。観測筋の中には大統領とゲイツ国防長官が求めてきた防衛予算の変革(例 空中配備レーザー、運動エネルギー応用迎撃手段含むミサイル防衛の縮小)を内容とする国防予算案を自ら拒否するだろうかと懐疑的だ。ただ、ホワイトハウス主席補佐官ラーム・エマニュエルと先週会談した上院多数派指導者ハリー・レイド議員(民主 ネバダ州)は大統領が本気であるという。上院法案内容にラプター増産がもぐりこんでいるのであれば「拒否権を使うでしょう」という。
【上下院の動き】 一方、下院は総額369百万ドルの2010年度国防政策法案を通過させており、F-22生産ラインを維持し、合計12機分の部品調達を開始することを認めている。上院軍事委員会はさらに深く踏み込んでおり、票決13対11で先月に総額17.5億ドルでラプター7機の調達を承認している。ただし、上院の委員長カール・レヴィン議員(民主 ミシガン州)および共和党の長老ジョン・マケイン議員(共和 アリゾナ州)はオバマ大統領の側につき、F-22増産に反対の論陣を張っている。両議員はF-22調達を国防支出法案から削除する改正案を提出した。「ゲイツ長官および軍上層部の決定どおり、同機は必要ないと判断します」と大統領は同改正案を支持する内容の書簡を送付している。マケイン議員によると大統領は「同改正案が国防調達の根幹から改革を行う内容であるので、F-22追加調達には拒否権で対応するだろう」という。
【拒否権の場合のシナリオ】 仮に大統領拒否権が行使されると、議会側は年末までに拒否権を無効にする動きに出るだろうが、上下両院で三分の二以上の議決が必要となる。これに失敗すると、議員から別の法案が提出されるが、F-22の追加があるのかないかは未知だ。
【ラプター増産の反対・推進勢力の顔ぶれ】 ラプター追加調達に反対するのはこのほかに統合参謀本部議長マイク・マレン海軍大将、空軍長官マイケル・ドンリー、空軍参謀長ノートン・シュワルツ大将がある。これに対抗する勢力には空軍協会ならびにF-22生産関連企業が州内にある議員があり、その中にはジョー・リーバーマン(民主 コネチカット州)、パティ・マレイ(民主 ワシントン州)、サクスビー・チャンブリス(共和 ジョージア州)の各上院議員がいる。ロッキード・マーティンのF-22生産契約は全米40州で合計1,000社におよび、議員にはラプター増産に反対することは政治的に困難な情勢だ。
【議論の主眼点】 チャンブリス上院議員はかねてからラプター調達停止の判断に異議を唱えてきた。ラプターの単価は140百万ドルで開発費を含めると300百万ドルを超えるが、同議員にいわせると「予算の観点のみで見ている」というのである。また同議員はF-22の編成を合計187機で止めるのは国家安全保障に有害と主張し、空軍が以前は381機、243機と都度必要機数を変えてきたことに注意を喚起している。これに対しマケイン議員は「雇用の観点で判断すべきでない」と反論している。上下両院の歳出委員会はそれぞれの2010年度国防支出法案の審議をまだ完了していないが、下院小委員会がラプター12機の増産を可決したのは、同じく下院の軍事委員会の審議を反映している。一方、ダニエル・イノウエ上院議員(民主 ハワイ州)は上院歳出委員会と国防小委員会の双方で委員長を務めながらラプター輸出の可能性を模索し、機密技術を取り除いた機体を日本およびおそらくイスラエル向けに販売できないかと考えている。
【上院の改正案の行方が焦点か】 レヴィン-マケイン両議員は改正案を7月13日に上院が6,800億ドルの国防予算案を審議した日に発表した。本会通過に必要な票数が足りないと両議員は認める。民主党が先週提出した憎悪差別犯罪関連改正案により関心がそがれてしまっている。このためF-22関連改正案の審議が一週間以上遅れる可能性がある。
ラプター追加の予算手当てとしてチャンブリス議員は12.5億ドルを人件費、運営費、設備維持費から流用する提案をしている。残る17.5億ドルの一部は国防総省全体で節約を求めて最近成立した国防調達改革法案の成果で可能と同議員は語る。レヴィン-マケイン両議員は同法案成立を支持してきたが,施行初年度の今年はたいした節約額は期待できないと見る。一方、F-15およびF-16の機齢が増加しており、そのうち250機が来年にも退役しようとしている中、F-35共用打撃戦闘機の配備が遅々として進まないため、2035年まで必要機数と配備機数が乖離する見通しだとチャンプリス議員は考える。また、同議員は自らの主張の補強のため、空中戦闘軍団司令官ジョン・コーリー大将および州軍航空部隊司令官ハリー・ワイヤット中将の書簡から、一致して任務達成にはF-22がより多く必要だとしていることを取り上げている。これに対し、マケイン上院議員は187機で「運用上の要求水準には十分だ」と大統領2名、統合参謀本部議長2名が発言していると反論している。
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