スキップしてメイン コンテンツに移動

米海軍向けMQ-4Cトライトンの初飛行と今後の展望

今 年の5月は新型機の実証飛行の成功が連続して出てきた月として記憶されそうですね。開発研究は一朝一夕にできるわけでなく、X-51A, X-47さらにMQ-4Cが達成した記録はこれまでの投資の結果です。現在予算の制約で研究開発が減速しつつあり、数年後にこれだけまとまった成果が出て くる月が生まれるかちょっと疑問ですね。ところで日本に必要なのはグローバルホークよりもトライトンでは。

U.S. Navy Kicks Off Triton Flight Trials

By Guy Norris guy.norris@aviationweek.com, Amy Butler abutler@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviationweek.com May 22, 2013
Credit: Northrop Grumman

米海軍が無人機運用で5月22日にまた一歩前進した。ノースロップ・グラマンMQ-4Cトライトン高高度飛行海洋監視偵察機がカリフォーニア州パームデールの同社施設で初飛行した。
  1. 今 回の初飛行は2015年の稼働開始を念頭にした作業開始となる。初飛行は80分間でエドワーズ空軍基地付近の一般侵入禁止空域で実施され、今回も含め9回 の性能確認試験のあとで今年後半にメリーランド州パタクセントリバー海軍航空基地に場所を移し広範なシステムフライトテストを実施する。今回の初飛行で高 度は20,000 ft.まで到達し、ノースロップと海軍のチームが遠隔操縦した。
  2. テ スト飛行の開始は5ヶ月遅れたが海軍の哨戒機能力近代化計画全体の中で大きな進展となった。アジア太平洋に軸足を移す戦略の中、これまで以上の海上飛行の 航続距離が必要とされているが、老朽化進むP-3をP-8A(117機)とMQ-4C(68機)で交代させるのが海軍の計画だ。その中でグローバルホーク を原型に性能を大幅に向上させたMQ-4Cは2008年から、総額16億ドルの広域海上監視機 Broad Area Maritime Surveillance (BAMS) として開発が進められてきたもの。海軍は試作機も含め70機を130億ドルで購入する。
  3. ノースロップ・グラマンは空軍を相手にRQ-4Bグローバルホークの存続を巡り戦う中で今回の初飛行は時宜にかなったもの。これとは別にドイツが同じくグローバルホーク派生型のユーロホーク調達の中止を発表したのも同社には痛い結果となっていた。
  4. 良い面もあり、MQ-4C初飛行に先立ちオーストラリアがトライトンの性能、費用、購入可能性の情報開示を正式に要請してきた。ノースロップは今回の情報開示は販売につながると楽観的に見ており、オーストラリアはP-8A開発にも参画している。
  5. オー ストラリアの計画はロッキードAP-3CをP-8Aに交代させることだが、MQ-4Cにより高高度長距離飛行可能なUAVを海上監視偵察任務に投入するこ とも狙っている。しかし、オーストラリア国防省は今回の情報開示請求は「MQ-4C購入の確約にはつながらない」としている。インドもP-8導入国で MQ-4Cへの関心を表明している。
  6. 今 回初飛行したのはSDD-1と呼称のBAMSシステムズ開発実証(SDD)契約2機の初号機で二三ヶ月でSDD-2が加わるとノースロップは説明。MQ- 4C三号機はノースロップ自社資金で制作し、同じくパタクセントリバーへフェリー回送され2機に合流するのが2014年早々の予定。初期段階のテスト飛行 は7日あるいは10日間隔で飛行時間を徐々に伸ばしながら最終的には8時間ないし12時間連続飛行させる。
  7. 初 飛行実施が遅れた原因はソフトウェア開発工程の遅れで、同機の統合ミッション管理コンピュータintegrated mission management computer (IMMC)用のもの。MQ-4Cのミッションでは空軍仕様よりも低空・中程度の高度が増えるので機体バランスのためV字尾翼V-tail ruddervatorsの形状をわずかばかり変更している。
  8. テ スト機では高性能監視通信用センサー類の代わりにダミーを積み込む。センサー類の中でも多機能アクティブセンサーアクティブ電子操作式アレイ multifunction active sensor active electronically steered array (MFAS AESA) と呼称されるXバンドレーダーのテストがノースロップ社有ガルフストリームIIをBAMSに見立てテスト中。
  9. このMFASがトライトンの哨戒能力の核心部分で艦船探知追跡識別能力を実現すべく逆作動合成開口レーダーinverse synthetic aperture radar (ISAR)を利用する。
  10. MQ-4Cでは目標自動識別システムを搭載しており、VHFを介して海上船舶の世界規模での移動情報を受信する。またAN/ZLQ-1電子支援システムおよびITT Exelisが開発したレーダーも搭載し飛行中の他機と安全距離を保つことができる。■


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...