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米空軍2015年度予算案でA-10とU-2は全廃に 


Pentagon Retiring Air Force’s U-2 and A-10 Warthog in Latest Budget Deal

By: Dave Majumdar
USNI News, February 25, 2014 7:18 AMAn A-10 returning from a training mission on Jan. 11, 2014. US Air Force Photo
An A-10 returning from a training mission on Jan. 11, 2014. US Air Force Photo

米空軍はフェアチャイルド・リパブリックA-10ウォートホグおよびロッキード・マーティンU-2情報収集監視偵察機を退役させ、新型技術への支出を増やす内容の2015年度予算要求を提出する。

ペンタゴンは厳しい選択をするにあたり「装備の量より性能を重視」したとする。チャック・ヘイゲル国防長官が2月24日に記者会見で明らかにした。「空軍の機材近代化事業の中核として、爆撃機、共用打撃戦闘機、新型空中給油機を守った」

上記三項目の空軍優先事項に加え、国防総省は追加予算10億ドルで「有望な次世代ジェットエンジン技術」を開発すると同長官は発言。新エンジンは低燃料消費と保守点検工数を削減してコスト節約が期待されている。

ただし新エンジン技術に予算を付ける理由は産業基盤の温存にある。「産業基盤にひきつづき投資をすることで必要な技術改良が実現する」とペンタゴン記者会見で匿名の国防関係者から説明があった。「予算削減の環境下でも改善改良の必要は変わりなく、我が国の産業基盤は不可欠なパートナーであり、戦略的観点で資金投入すべき分野」だとする。

同長官が言及しているのが空軍研究所が進める適応型エンジン技術開発 Adaptive Engine Technology Development による可変サイクルエンジンvariable-cycle engine と思われる。

空軍は引き続きジェネラルアトミックスエアロノーティカルシステムズのMQ-9リーパーの調達を続け、旧型で性能が劣るMQ-1Aプレデターを全機リーパーで置き換える。またヘイゲル長官から空軍は無人機による戦闘警戒待機 (CAP)実施回数の増加ペースを落とすと発表。常時空中待機65回の予定を55回にする。「待機の対象空域は必要十分」という。

だがエンジン開発に資金投入し、機材更新を維持し、追加リーパー調達で代償も発生する。「空軍の戦術飛行中隊はA-10全機を退役させることで減少する。A-10退役で今後5年間で35億ドルの節約になり、その分だけ機材更新が進む」と長官は説明。「A-10は機齢40年で単独任務しかこなせない機材であり、もともとは冷戦時に敵戦車攻撃用に設計されたもの。敵の機材が高性能化しており防空体制が整備された環境では生存が困難だ」

さらに代替機材があり、A-10の出番はなくなると説明。「イラク、アフガニスタンでは精密爆弾の出現で近接航空支援を今までより多くの機体で実施できるようになった」

A-10の機齢が高いのも問題だ。配備後40年が経過して、保守点検も非常に困難かつ高価になっていると長官は説明。A-10部隊規模の縮小も実効性のある選択とは言い難いという。「費用節約にはあくまでも同機部隊をすべて退役させるしかない。同機専用の支援機材の固定費用のためだ」

ペンタゴンはU-2も全機退役させ、かわりにノースロップ・グラマンRQ-4Bグローバルホークのブロック30を重視する。「この決定は賛否の差がわずかだった。国防総省は以前にU-2を温存してコストが高いグローバルホークを退役させる提言を出していたため。しかしこの数年間でグローバルホークの運用コストの削減に成功している」

An RQ-4 Global Hawk taxies on the flightline as a U-2 makes its final approach Sept. 17, 2013, at Beale Air Force Base, Calif. US Air Force Photo
An RQ-4 Global Hawk taxies on the flightline as a U-2 makes its final approach Sept. 17, 2013, at Beale Air Force Base, Calif. US Air Force Photo

空軍はグローバルホークに搭載したセンサー類の性能はU-2を下回ると説明していた。とくに高性能通信情報収集装備などU-2の飛行が高高度のため物理法則で効率が高くなるとしていた。U-2の実用飛行高度は 70,000ft だがRQ-4の上昇限界は60,000ftだ。

さらにグローバルホークではU-2で使用頻度が高い湿板光学式カメラOptical Bar Cameraを搭載することが不可能。同カメラは大型ですば抜けた高解像度写真を6ft のスライドフィルムに撮影する

グローバルホークの性能改修でペンタゴンの要望に応えることが可能だとみる軍高官がいるが、その際の費用については言及がない。さらに性能改修したグローバルホークでU-2と同等のセンサー性能が発揮できるかも同高官は口を濁している。しかしヘイゲル長官は「グローバルホークは高高度偵察機材に将来発展する可能性はある」という。

ヘイゲル長官はもし国防総省が強制予算削減時とおなじ予算環境に2016年以降も追いやられるとさらに負担になる機材削減が必要になると説明。「その際に80機をさらに削減させ、KC-10すべて、グローバルホークのブロック40全機を退役させるとともに共用打撃戦闘機調達も減速させなければならない」と発言。

その場合F-35調達数は2019年までに合計25機減らし、プレデターやリーバーの連続警戒飛行回数も減らす。そうなると空軍の即応体制が低下する結果になる。「飛行時間も相当削減することになり、適切な即応体制の回復もできなくなる」■

コメント A-10、U-2の全廃が本当に正しい決断なのか、今後の歴史が証明してくれそうです。冷戦時代の遺物、と片づけられてしまうA-10ですが、今後同様の機材は出現することなく、不測の事態が発生した際にはもう遅いのですが。同機にノスタルジアを感じる向きも多いようですが、やはり経済合理性の前には勝てないのでしょうか。グローバルホークは今後の拡張性がカギでしょうね。有人機から無人機へ、単任務機材から多任務機への切り替えという方向が明白に出てきましたが、もう一度空軍の存在意義、あるべき姿を考えてみる方が件名と思いますが。航空自衛隊はこの動きをどう見ているのでしょうか。
可変サイクルエンジンについては次期主力戦闘機の推進手段として重要な存在になりそうですね。今後も要注意な技術です。

もっと重要なのは産業基盤の維持という「産業政策」で、以前は日本による産業政策を競争をゆがめるものとして執拗に避難していたのが米国でしたが、ことここまでくるとなりふりかまわなくなってきたというべきなのか、日本の考え方がもともと正しかったのか、判断に苦しむところですね。


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