アジア各国の戦闘機整備が急展開中---日本、韓国、シンガポール等の最新状況



Fast-Changing Trends In Asia Fighter Market

By Bill Sweetman
Source: Aviation Week & Space Technology
aviaationweek.com February 03, 2014
Credit: USAF SSGT. William P. Coleman

韓国が一度選定に傾いたボーイングF-15SEサイレントイーグルを白紙に戻し、ロッキード・マーティンF-35A共用打撃戦闘機を選んだことで、ロッキードはアジア各国をJSFで席巻できると興奮気味だが、日本が同機を選定済みで、シンガポールもまもなく正式決定するものとみられる。その他の諸国も同じ流れになるかもしれないのは中国の脅威が増大していることに加え横並び意識のせいと言われる。.
  1. 現実はもう少し複雑で多くの要因が絡んでおり、武器取引と技術移転は動的な過程だ。韓国と日本の選定結果は共に両国の国家戦略が変化していることと米国との密接な関係が背景にある。また米国が同盟各国にJSF調達を強く求めているのも事実だ。では各国別に見てみよう
  2. 【日本】F-35Aの選択は強力な統合防空体制 integrated air defense semsyst (IADS)が整備された空域内の攻撃能力に重点を最初から念頭にF-4EJ改の後継機種を模索してきた結果だ。選定基準そのものが変化しているのは日本の防衛戦略の変化を表しており、中国は仮想敵国として、日本が実効支配する領土を奪わんと長期的に狙う国とみなしている。また、攻撃能力を強化し、戦後堅持してきた武器輸出の緩和を狙っている。.
  3. 日中の緊張増大は防空部隊の緊急出動回数が増えていることで明白だ。冷戦末期の航空自衛隊のスクランブル回数は年間800回超だったが、1995年から2005年までは年間200回程度で、2012年に567回に急増している。
  4. 航空自衛隊の戦闘機部隊は1960年代から常時三機種を稼働させてきた。機体数はほぼ一定を保ちながら、2020年台にはF-15と三菱F-2に加えステルスF-35が加わる見込みだ。
  5. 現有のF-15Jには赤外線探知追跡機能が付いているが、さらに性能改修したF-15MJにはAPG-63(V)1レーダー(機械式スキャン型としては最新型)を搭載し、三菱重工製AAM-5短距離空対空ミサイル(04式空対空誘導弾)の装着が始まる。AAM-5はドイツ・スウェーデン共同開発のIRIS-TやAAM-4B(アクティブ電子スキャン方式レーダーを搭載)と外形が類似している。
  6. 航空自衛隊はF-15のうち何機の性能改修を実施すべきの決断を求められている。機材の半数近くは1980年台前半に納入されており、性能改修の実施は高費用につく。
  7. 一方で侵攻部隊の接近阻止を主任務とするF-2部隊にもAAM-5、AAM-4、改良型AESAレーダーのJ/APG-2の装着で改良が加えられており、武装ではAIM-9サイドワインダーと日本製AIM-7スパローを搭載する。
  8. 予算10億ドルでE-767空中早期警戒管制機の改修、F-15とF-2の改良をすることで日本の防空対応能力はF-4飛行隊x2の退役があっても質的に向上する。F-35AはF-4の代替都の位置づけだがF-2の攻撃任務を一部補完し、F-2を防空任務に振り向けることが可能。もしF-15旧型機の改修を実施しない方針になれば、4飛行隊規模の新型機調達につながる。
  9. ただし円安でF-35調達の大日程への影響が危惧されており、予定42機の調達完了を2023年にずらすことになりそうだ。新型ヘリ護衛艦いずも(27,000トン)の完成でF-35Bで海軍航空兵力の整備に乗り出すとの観測があったが香田洋二海将(退役)元自衛艦隊司令官は1月にワシントンでこの見方を一蹴しており、そのような防衛力整備は他方面の装備調達を諦めなければ実現できず、中短期的には不可能だとした。
  10. 日本は三菱重工の高性能技術実証機 Advanced Technology Demonstrator-X (ATD-X) ステルス試作戦闘機にも予算をつけており、これまで10年近くの開発を続けてきた。実寸大のレーダー断面積測定はフランスで2005年に実施済みだ。技術開発筋によればATD-Xの初飛行は2014年度中に実施するという。つまり2015年3月までに、ということだ。
  11. 【韓国】 F-35小規模調達に国産機の性能改修を組み合わせる方向だ。国防調達庁の決定を覆す形で11月にF-35A導入を決定した同国だが、調達数は40機で納入は2018年以降になる。なお、調達費用は当初予定していたF-15SEなら60機を買う事ができた金額だ。
  12. 今回の選定の背景には韓国の軍事戦略の変化の影響がある。北朝鮮が機動性のあるミサイルを開発中とする証拠が増えてきた。これに対し韓国政府は「圧殺連鎖」で固定式強化陣地内の目標と移動可能な兵器の双方を破壊すると反応している。F-35Aの性能諸元はこの任務の想定に合致している。その際に念頭にあるのは湾岸戦争(1991年)の「スカッド狩り」がうまく行かなかった米同盟部隊のことだ。
  13. F-35A選定は「状況に応じた抑止力」で北朝鮮の核の脅威に対抗することで新たな米韓合意に先立つ形になった。これは先制攻撃でまず北朝鮮の核攻撃能力を減じて残存能力にはミサイル防衛で対応する戦略だ。
  14. F-16改修も実施し2030年代まで同機を稼働させる。韓国国防省はBAEシステムズと昨年12月に合意形成し134機あるF-16ブロック52機材にAESA技術によるレイセオン高性能戦闘レーダー、新型ミッション用コンピュータ、新型コックピット表示装置を装備する。改修済み一号機の納入は2018年だ。
  15. そもそもBAE選定は2012年だったが、一度白紙に戻されている。その理由はF-16を第三者が改修する初事例となったこと、また米空軍がロッキード・マーティンを選定し300機を対象に同様の性能改修 Combat Avionics Programmed Extension Suite (Capes) を発注していたからだ。同様の性能改修は台湾空軍のF-16にも予定されており、韓国他に提案されていた。米空軍がレーダー選定をロッキードに一任して同社は長年のパートナーであるノースロップ・グラマンを選んだのに対し、韓国はレイセオンを選定したので競争状態となった。
  16. BAEシステムズはフォートワース事業所で開発にあたり、F-16経験者を雇用する。同社はシステム統合ラボを建設中で大型ビジネスジェット機を飛行テストベッドとしてしんgなたシステムの性能確認をする。韓国空軍のF-16機材の第一陣が今年中に現地に到着し、改修作業を開始するが、フライトテストは2016年の予定だ。改修作業の本格作業は韓国国内で実施する。
  17. BAEシステムズは世界規模で1,000機の回収需要があると見ており、海外だけでは830機に期待する。同機の機体寿命は1万時間に延長されており、旧型機の改修の投資効果は十分あるという。
  18. そこでF-35Aに切り替えたことで国産ステルス戦闘機開発にも影響が出る。同機計画は韓国航空宇宙工業 Korea Aerospace Industries と国防技術開発庁Agency for Defense Development がKF-Xとして進めているもの。最新の予算では19百万ドルが計上されて、開発経費の上限を80億ドルとし、2025年に開発完了の条件をつけている。ただし同機の輸出には米国の承認が必要だ。開発には海外の提携先が必要となり、15%の費用負担を期待されている。
  19. 【シンガポール】 アジアで次にF-35を導入するのは同国だと言われ、とくに高速道路からの運用を想定してF-35Bに関心が高いという。想定場所の長さは8,000 ft.未満が多い。F-35Aでは滑走路長が足りず、JSF計画室長クリストファー・ボグデン中将は昨年4月にシンガポールによる同機選定は数ヶ月以内に実現見込みと発言していた。
  20. 同年にシンガポール国防相ン・エン・ヘン Defense Minister Ng Eng Hen がF-35購入を独に急ぐ必要なしと発言している。F-16後継機種としてF-35を真剣に検討しているのは事実だが、まず旧型機改修を実施するとしていた。米国防安全保障協力庁 U.S. Defense Security Cooperation Agency からはシンガポール保有のF-16のAESAレーダー換装他改修60機分の実施案が提示されており、同機の耐用年数を2030年代まで延長できるという。ただし改修に高い優先順位がつくかはシンガポールが潜水艦整備などで大型投資があることを考慮すべきだ。
  21. シンガポールは米空軍・ロッキードによるF-16改修業務Capesの有望対象国であるが、国防安全保障庁の発表内容は契約企業を明示せず、新型レーダーの調達元も示していない。このことは将来のCapes改修が不確実であることを示すものであり、2015年度米国防予算削減の対象になる可能性もある。
  22. 【インドネシアとマレーシア】両国はSu-27/30を運用中で、Su-35が代替機種として提案されている。両国は次期戦闘機で米、ロ、欧州の三方向から選定する可能性があり、すでにユーロファイター・タイフーンとボーイングの高性能型スーパー・ホーネットが昨年のマレーシア航空ショーで展示されている。
  23. 【タイ】 サーブのグリペンもアジアに足場を広げる可能性がある。新型JAS39Eがすでにブラジルで選定されており、競争力が高まっている。シンガポールF-16改修は単価40百万ドルとの見積だが、同程度の費用でJAS39CをJAS39E仕様にアップグレードできるという。
  24. サーブを現在使用中なのはタイで、グリペンとともにスウェーデン空軍で使用していたサーブ340AEWを整備する計画を推進中だ。2013年にはグリペン6機とAEW2号機が納入されており、サーブはマレーシアにグリペンC/Dをリースする案を提示しており、JAS39Eにアップグレードできるとする。
  25. 【その他アジア太平洋諸国・ロシア】戦闘機選定は流動的だ。1月にワシントンの戦略国際研究所が武器流通に関する会議を主催し、米国企業の市場シェアを下げそうな要因に焦点をあてた。米国製高性能機器ではなくても「実用上十分な」システム選択が可能であることが指摘されている。
  26. 席上では米国による独占が終われば各国は防衛の後ろ盾が米国しかないので深刻な脅威に直面するとの指摘がでた。つまり装備品の新しい供給源が現れれば米国製装備との相互運用性が低くなるというのだ。
  27. またロシアはマイクロエレクトロニクス分野の基礎が不足しているため「旧式技術で食いつないでいる」との指摘があったが、「ロシアのハイテク産業は国防分野に集中している」との指摘もあり、相反する傾向があることになる。長距離地対空ミサイルの輸出事例ではロシアの地位が卓越している。もうひとつはロシアと中国の関係改善の象徴がスホイSu-35戦闘機売却の商談だ。ロシアが再度同機を中国に販売することに前向きになったのは、瀋陽J-11として中国がSu-27を不正コピーした事実を乗り越えて、ロシアの技術開発が再度活性化してきた証であり、不正コピーのリスクを軽視できるようになったのかもしれない。■


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