スキップしてメイン コンテンツに移動

F-35は電子戦で限界あり EA-18グラウラーの支援が不可欠


Growler Advocates Outline Stealth Vulnerabilities

By Amy Butler
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com March 24, 2014
Credit: U.S. Navy

厳しい予算環境の中でペンタゴンの2015年度予算はステルスF-35向け予算を最優先しているが、そのしわ寄せがどこに出るのか業界筋は注視している。
  1. 実質的に一計画に焦点をあてると電子戦(EW)で合衆国の優位が危うくなり、F-35でさえも防御目的のジャミング支援機がなければ防御固い敵の領空の「バブル」突破は難しいと業界筋はみる。
  2. アフガニスタン、イラクの治安維持作戦での支出のためこれまで10年以上にわたり研究開発及び調達の支出が切り詰められており、ペンタゴン内部でEWの計画立案が重点的に取り組めない状態になっているという。アル・シャファー国防次官補代行(技術研究開発)も「作戦分析を中断している」と認める。
  3. ペンタゴンのEW戦略を批判する向きは2015年度予算で米海軍がボーイングのスーパーホーネット生産ライン活用が最後となると指摘している。海軍は予定通りならEA-18Gグラウラー138機を調達して空母航空隊に5機ずつ配備する。海軍によればグラウラー追加22機調達を2015年度の要望リストに載せたが、予算管理法による支出制限が緩和されないと海軍は追加調達ができず、ボーイングは自社費用での生産を迫られるという。
  4. 一方で空軍はEC-130電子攻撃機のうち半分にあたる7機をモスボール保管にして315.8百万ドルを節約する予定で、ジム・ジョーンズ少将(作戦、立案、予算要求担当)Maj. Gen. Jim Jones, director of operations, plans and requirementsはEC-130の代替手段があるのかと問われて、情報開示は拒んだものの、「不満足な」解決手段しかないことを認めている。この分野の実戦能力は秘密のうちに開発が進んでいるのかもしれない。
  5. 超短波(VHF)レーダーの出現がステルス懐疑派の中で大きな話題になっている。同レーダーでステルス機探知が可能となる。「ステルス機とは特定の周波数での探知が遅れるに過ぎない」と説明する業界筋がある。VHFレーダーは「長距離で探知可能」という。長距離レーダーの情報が火器管制システムに流れ、防空兵器の発射につながるシステム統合でステルスの優位性を減じることになり、見えにくくするというよりも目標捕捉を困難にさせるステルス性の特徴が帳消しになるという。
  6. 「VHFレーダーで火器管制はできませんが、探知は可能です」とマイク・ギボンス(ボーイング副社長、F/A-18とEA-18G担当)Mike Gibbons, Boeing vice president of F/A-18 and EA-18G programs.は言う。「低周波レーダーでどの方向を監視すべきかはわかりますので、敵方は迎撃機を緊急発進させてくるでしょう。その時点でステルスはなんの助けになりません」
  7. 中心が治安維持活動から離れることでペンタゴンは難易度が高い交戦条件下の作戦案を考え直すことになり、新型の防空体制をロシアや中国が開発することで接近阻止領域拒否が実現しつつあることも考慮。そうなるとペンタゴンはEWの戦力構成を再考することになり、グラウラーの機体数も増える可能性があり、進行中のF-15イーグルのパッシブ・アクティブ警告生存システムPassive/Active Warning Survivability System (Epaws)、レイセオンのミニチュア空中発射デコイ・ジャマー Miniature Air Launched Decoy-Jammer (Mald-J) も再検討の対象になろう。海軍はポッド型のデジタル無線周波数記憶型 Digital Radio Frequency Memory (DRFM) の開発を不潔なアナグマFilthy Badger および不潔なハゲタカ Filthy Buzzard 両プロジェクトで進めている。
  8. 「特殊レーダーならどんな航空機も探知可能です。そこでその情報の流れを止めてしまうことがカギになりますが、ステルス機も無敵の存在ではありません」(ギボンス)
  9. グラウラー推進派は同機は将来の攻撃陣で司令塔の役割を担うべきだと主張する。後席の電子戦士官が電子攻撃を管理するのだという。
  10. 昨年夏の飛行実証においてボーイングはEA-18G2機で敵発信源をパッシブ探知でき、「非常に正確な」目標情報を「数分以内に」攻撃機に提供できることを示した。その結果からグラウラーを一機追加すれば、敵目標の座標が数秒で把握できることがわかった。この作戦構想で攻撃の所要時間を短縮でき、敵がレーダーを断続的に使用してから停止して探知をさけ、レーダー波を目標とするAGM-88E高性能レーダー波誘導ミサイル Advance Anti-Radiation Guided Missile への対抗を無効化できるという。
  11. グラウラー予算復活を目指すボーイングは危ない橋を渡ることになる。同社はグラウラーの機体数増加がないとステルス機でさえもこれから出てくる防空体制では生き残れないと説明することになると秘密におおわれた領域に足を突っ込む危険がある主張になる。またペンタゴンはこれまで数十億ドルをかけてきたステルス機がずっと低予算で開発したネットワーク化防空体制の前に弱体化してしまうことをしぶしぶ認めることになる。ボーイングはすでにグラウラー増強を求める議会ロビー活動を開始している。
  12. 現時点で敵防空網を突破する性能が一番高いのはF-22およびF-35の両機だが、ともに決定打ではなく、援護部隊によるスタンドオフ攻撃支援を敵の有効射程外から必要とし、電子の戦場で優勢を保つ必要があるとグラウラー推進派は主張し、各空母飛行隊のグラウラーを10機に倍増するよう求めている。今後就役する新型空母ではそれくらいの追加は簡単に収容できる余裕はたっぷりあると業界筋は解説する。
  13. F-35がこれまでで最も高性能かつ融合エイビオニクスを搭載しているとはいえ、電子戦は搭載するノースロップグラマン製AN/APG-81レーダーの周波数の範囲内に限定される。だがもしF-35がデータベースに乗っていない敵に遭遇したら、あるいは自機レーダーの周波数帯から外れた敵に遭遇したら、同機では敵を探知できない可能性があるが、EA-18Gの電子戦士官なら敵の能力を把握し、制圧も可能だと産業筋は解説する。
  14. グラウラー整備の最終決定はまだ出ていないが、シャファー次官補代理は「EWへの集中度を一部では加速している」と発言しており、上記Mald-JやEpaws以外で極秘計画の進行を暗示している。
  15. 3月12日開催の公聴会席上で海軍作戦部長ジョナサン・グリーナート大将はグラウラー増強の「要望が強まっている」と発言したが、問題は正式発表はいつになるのか、また、予算確保ができるかだ。




コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...