スキップしてメイン コンテンツに移動

ゲーツ国防長官の課題

-37A機上にて。 オバマ次期大統領がロバート・ゲイツ国防長官留任を発表してからわずか数時間後、同長官は本誌に今後は国防総省の調達制度を整理することに焦点を当てると語った。

ゲーツ長官は121日の本誌取材でハイテクを利用した米軍に匹敵する敵に対峙する場合、より安価な兵器でテロ戦争に立ち向かう場合、さらに将来は国家ではない敵との対立の場合を想定した軍事力のバランスが必要と語った。

予算制約がある中で先例のない水準の各軍の協力が今後の軍事力構築の構想と規模の設定で必要と言う。各軍は運用上で交流を実現しているものの、要求内容と調達業務では直接の合同企画づくりが欠落している。

これには各軍の司令部と原隊に加え長官官房の間でこれまではなかった形の協力関係が必要となる。これがこれまで機能していない。 ここが難しいところなのだが、将来を見据えたある部門のプログラムにより多くの投資をして、別の軍のプログラムへの出費を減らすと甘んじて受け止められるだろうか。」

これが将来の戦術航空機の兵力編成で鍵となる質問である。例をあげると、ロッキード・マーティンのF-22生産ラインが閉鎖寸前となっている。マリエッタ工場(ジョージア州)の運命を左右する決定が三月までに必要と議会関係者は見ている。その埋め合わせとなりうるのがF-35だが、何機、どの型式の同機を購入すべきかという問題がある。F-22発注を巡る意見対立はゲーツ長官が空軍参謀長を更迭することで米空軍のトップを入れ替える以前から続いていた。

 「新参謀長は空軍にはF-22381機も必要ないと考えている。また、185機で十分とも考えていない。そうすると、F-22を追加配備したら、代わりに共用攻撃戦闘機プログラムを犠牲にできるか、と言う問題だ。」(同長官)

国防総省が空輸機・空中給油機の編成を見据える際にも同じ問いかけが発生する。ボーイングC-17の生産ラインも閉鎖が近づいており、一方でロッキードC-130JとL-3コミュニケーションズ-レニア・ノースアメリカC-27Jの追加購入が可能だ。

一方で、ボーイングとノースロップ・グラマン-EADS連合の競争入札で給油機179機を完成させようとする過去の二回の試みは調達の失敗にとどまらず議会からの政治的圧力を招いてしまった。その結果、老朽化進むKC-135の代替機調達が数年間遅れ、調達は失敗したが支出は発生して無駄になっている。

ゲーツ長官は9月に二回目の給油機競争入札を開始前に中止させたその理由として入札会社と空軍間の冷却期間が必要だとしていた。世界で二社しかない広胴機メーカーが総額350億ドルのKC-契約を巡り競争するのであれば過熱は必至である。ノースロップ-EADSが2月に初回の勝利を収めたが、契約締結は調達決定過程が検討されると不可能となった。

結果としてゲーツ長官は給油機、F-22、C-17のすべての決定を次期政権に先送りしてしまった。「次の長官にバントしたつもりが、自分でバントの結果を始末することになりましたよ」と長官はインタビューで発言。

議員と会社の一部が契約を分割する構想を提案しているが、長官は関心を示していない。「最悪なのは契約の分割だ」といい、現行のKC-135・KC-10・KC-130Jの代わりに二つの新システムを開発、配備、保守点検する追加費用を念頭においている。

ゲーツ長官に課せられているのはこれら以外にその他大規模プログラムでも厳しい決断を下すことであり、オバマ政権が誕生する際は経済不況が深刻なその中である。「考えているのは大規模な投資をしても十分な数を配備できないことにならないか、あるいはそれに資金を投入することで他のシステムをあきらめることにならないか、ということだ」 このためゲーツ長官は各軍の構造の均衡をとり、高価なハイテクの一方でより現実的な価格のシステムがあるのでこれらをうまく調和させたいのだと話す。

コメント: 大変なときに留任となったゲーツ長官ですが、ペンタゴンの中の複雑なやりとり、また民主党政治家がペンタゴンの中できわめて不人気なことを考えると、オバマ次期大統領には妥当な選択だったのでしょう。それにしても、予算制約とともに従来からの想定に加え、見えない敵との長い戦闘にも備えなければならない今日の防衛政策は難易度があがっていますね。F-22の命運はだんだんきびしくなっているようです。(写真 C-37 ガルフストリームVですね。)

コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ