米空軍、海兵隊向けの戦術電子攻撃機の後継機では長年の議論があったが、F-35が両軍に採用される可能性が高まってきた。今日の戦闘で一番需要が高いのが電子攻撃(EA)を任務とする航空機であるのは軍事運用の専門家の一致した意見である。そのため、より多くの機数と性能向上を求める圧力が存在する。 「電子攻撃は空軍、海軍、海兵隊の核心となるミッション領域だ。電子攻撃がF-35の中心ミッションとなるだろう。」(F-35ライトニングII開発の責任者チャールズ・デイビス少将) ただ、その開発は先例としての空軍のEF-111レイブンや海軍のEA-6Bブラウラー・FA-18Gグラウラーのアプローチはとらないだろう。 外部ポッドとアンテナアレイによる電子兵装の研究が進行中。この追加電子兵装開発はF-35の特徴である機体間のデータ交換と組み込みずみのEA能力を活用するのが目標という。 「F-35は合計80もの異なるプラットフォーム間で相互運用を想定し、140種類以上の情報を地上、艦船、航空機との間で交換できる」(デイビス少将) 電子戦は合計23通りのミッションへの追加にすぎない。 「F-35は第一世代のステルス機F-117の教訓を生かした設計だ。F-117と違うのは戦術情報の共有能力がF-35では最初から組み込まれているが、ステルス性を犠牲にしていないこと」(同少将) ただし、航空宇宙産業界では意見が分かれている。専門家にはF-35は電子戦能力が不足し、機体内にシステムを追加する余裕がないと見る向きもある。その解決策はジャマーと電力供給を兵装庫内に追加してステルス性を確保するか、追加装備を外部搭載し、スタンドオフの電子妨害任務に戻すかであるという。 「一機で電子攻撃任務の全部を実現することはできません。」(電子戦に長い経験を持つ電子産業界の専門家) EA-18Gグラウラーは双発で発電機も二基搭載して電力供給も余裕があり次世代ジャマー(NGJ)を搭載できる。NGJは長距離のスタンドオフ電子妨害能力があり、風力発電装置の付いたボッド内に搭載する設計で、多数の機体に搭載可能だ。 「EF-35も次世代ジャマーを搭載するだろうが、外部搭載では自機の位置を示してしまう。だが、NGJの中核部分を兵装庫内部に入れると、単発機で発電機もひとつの機体では全方位ステルス性を確保する出力が不足してしまうだろう。」(上記電子戦専門家) 「電子戦ではサイズが肝心です。EB-52は大型の開口式、アクティブな電子スキャンアレーレーダーを搭載し、長距離で有効な電子兵器となりえます。攻撃機、爆撃機、給油機に加え、737改造機*もNGJ搭載の候補となります。また、無人機のグローバルホークやリーパーのサイズの機体でも出力やペイロードが確保できるでしょう。」 (同上)(*海軍のE-8ポセイドン哨戒機、陸軍・海軍共用の空中センサー機体、空軍の空中給油機転用構想をさす?) しかし国防予算縮小でJSFが唯一の解決策となるだろう。 F-35の現行三型式はそれぞれアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)のレーダー、電子戦(EW)装備(自己防衛と電子偵察)、電子攻撃装備(偽目標を攻撃に使う、対ネットワーク攻撃、高度電子妨害、アルゴリズム付のデータ・ストリーム他)付で納入される。 F-35は現時点でもEW/EA/AESAの各システムで敵目標へ侵攻し、敵レーダーを征圧し、F-35間で情報を共有し、相互に敵に脅威を与えることが可能。 「広く散開した攻撃用ではなく、少数のF-35を目標空域に侵入・脱出させることに焦点をあわせている。敵防空網の制圧あるいは破壊で脅威要素すべてを対象とする」(同少将) EA-6BやEA-18Gと同程度の電子攻撃を加えるには高性能ジャミングポッドと追加EWアレイが必要になる。ただし、現状では広範囲でスタンドオフのEWジャマー能力はない。今のジャミングシステムは対象航空機を目標空域に侵入脱出させるのに使うだけだ。 海兵隊はICAP IIIのEAシステム搭載のEA-6Bプラウラーでの電子攻撃の実用化に取り掛かっており、敵の通信・信号ネットワークを妨害、停止、あるいは開閉するのが目標。海軍のEA-18Gが就役し、ICAP IIIから今後実用化となるNGJにアップグレードとなると、さらに複雑な目標への電子攻撃が可能となる。 電子攻撃はF-35で可能になる高度なミッションのひとつにすぎない。デイビス少将によると、無人機との関連で次の三つの構想があるという。データ・情報を無人機と共有する、無人機の目標捕捉・兵器投下を支援する、無人機編隊とF-35編隊をリンクし攻撃能力を増強することという。 |
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