今
回はFACOが話題です。日本も愛知県の三菱重工(小牧)にFACOを作ると言われていますが、日本が予定している50機弱の規模ではとてもペイしないの
ではないか。導入規模を増やすのか、近隣のF-35もMROで引き受けるのか(シンガポール? 韓国は明白に拒否しているので、高価になること承知で米国
かイタリアに頼むのでしょうか。経済減速を無視していますね。)先行するイタリアのFACOもどう見ても経済性を無視して国内産業基盤の強化だ、と強気の
発言をしてますが。ま、50年間も稼働させるという同機ですから今後はインフレを期待して累計で巨額な費用となってもいいと考えているのですかね。西側世
界の防衛基盤を揺るがしかねないのがF-35だ、というのが当方の主張です。
Italy Takes $1 Billion Risk With F-35 FACO
By Amy Butler
Source: Aviation Week & Space Technology
June 17, 2013
Credit: Lockheed Martin
Amy Butler Rome and Cameri AB, Italy
来月イタリアは最終組立・修理点検施設 final assembly and check-out facility (FACO)を正式にオープンする。
- 開所式は軍の視点ではイタリアの航空宇宙産業の技術力アップの大きな転機と見ているが、イタリア政界でF-35購入の是非が論争になっている中、トップ企業アレニア・アエロナウティカ Alenia Aeronautica は心中穏やかではない。
- 政 界で一貫性ある支援がない中、イタリア軍は前に進めようとがんばっており、イタリア向け機体の最終組立だけにとどまらず、オランダ向け55機の生産の提案 に加え、ロッキード・マーティンの大規模FACO(テキサス州フォートワース)の代替施設としても利用できないかと積極的だ。
- カメリ空軍基地(ミラノ近郊) Cameri AB に同施設の建設はイタリア国防省が予算措置をしており、生産規模250機(イタリアの当初案は131機、オランダも当初案は85機だった)で採算分岐点を 越える、という目論見だ。ただ同機の単価上昇で甘い希望は消えたが、F-35とFACOへのイタリア軍の肩の入れ方は一層強くなっている。
- 建 設費10億ドルといわれる同施設の投資効果、雇用規模は今後数十年間にわたる修理点検作業の中で明らかになると関係者は言う。カメリFACOは地域内に加 えイスラエルも入れた規模でのMROセンターになるとイタリア空軍調達本部長ドメニコ・エスポシト中将 Lt. Gen. Domenico Esposito は語る。長期的に十分な仕事量が確保できる保証がないため同中将も施設への投資はギャンブルだと認めるが、イタリアの産業強化効果を期待する。イタリア軍 によると地元への経済効果は186億ドル規模という。国防省にとってFACOはイタリア航空宇宙産業力の強化の手段であり、F-35が搭載する技術はこれ までとは違う種類のものであることが魅力だ。
- しかしF-35関連でイタリアの業務量に保証があるわけでなく、タイフーンの事例で業務分担が明白に合意形成されていたのとは対照的だ。
- 米国主導で2001年に始まったF-35では共同開発国との間で特定国が計画全体を危険にさらすような仕事の独占はまかりならないという不文律がある。つまり同機の価格に響く形である国が特定の技術や工程を希求することは認められない。
- 「これまでは安全サイドに留まっていました」と語るのはクラウディオ・デベルトリス中将(イタリア国防力整備本部長) Lt. Gen. Claudio Debertolis, secretary general of defense and national armaments director for Italy だ。「JSFの仕事をイタリアに確保しなければ」という。最終組立工程および修理部門での雇用は1万人規模という。
- 軍 はF-35関連で素材や機械設備の業務にあたる中小企業へ投資をしている。デベルトリス中将は航空宇宙産業の活性化のみならず国際競争力の獲得を期待す る。同時にアレニアの企業体質が強固になることはイタリア軍も吉報であり「保護に甘えていた同社も利益が保証され、将来は競争力がさらに伸びる」と見る。
- アレニアはそこまで楽観的ではない。ユーロファイターでは雇用を確保できたが、F-35では保証がない。同社がはフォートワースが5年間先行している中で同社従業員が追いつくまでの間に財務負担が増えることを懸念している。
- 学 習曲線と呼ばれる作業員が適切な作業効率を実施できるまでにかかる時間のことをさしている。第5ロットを生産中のロッキード・マーティンの従業員はF- 35A一機あたり100百万ドルを節減したが今も機数が増えるにつれ学習曲線は上がる。ロッキードの場合は費用節減で収入が増える形の契約のにより、学習 曲線をさらに先まで行くことができる。
- 対照的にアレニアにこの恩恵は存在しない。契約によると最初の6機(低率初期生産(LRIP)ロット6とロット7各3機)はペンタゴン-ロッキード間の固定価格で生産される。
- ところがF-35全体にイタリア国内の生産コストは考慮されていない。イタリア国防省も国内生産で損失が生まれた際の補償に及び腰だ。国防省はアレニアも中小企業同様に利益幅を圧縮し競争力をつけるべきと考えている。
- ロッキード・マーティンとアレニアは2月に長期間合意に到達し、第一期分として主翼部品130点の生産に道が開けた。これにより6年間分の作業が保障されたことになり、アレニアは主翼の学習曲線では損失を抑えることができそうだ。
- 両社はLRIP6および7の主翼生産でも4月に合意しており、アレニアからはフォートワースに主翼コンポーネンツ6基が納入されており、LRIP11までの生産を担当する。その時点でアレニアは主翼完成品の納入を開始している予定。
- ロッ キード・マーティン内部にはイタリア作業員が学習曲線を順調にたどり米国内と同一の品質、価格で納入できるのか怪しむ向きもあるが、その裏には両社のこれ までの葛藤がある。戦術輸送機C-27Jをめぐりぎくしゃくした経緯がありロッキード・マーティンは同機の米国内販売提携先だった。また海兵隊の大統領専 用ヘリ機材更新を巡ってもアレニアの関連会社アグスタウェストランドがロッキード・マーティンと提携したが海軍が導入をキャンセルしている。
- ロッキード・マーティンでFACOおよびF-35国際生産を担当する副社長デブラ・パーマー Debra Palmer によると納品時に部品不足がないことで好印象をうけ、驚いたという。部品不足でロッキード・マーティンの生産初期に12億ドルが追加発生していたのだ。「過去の経験から学び部品管理できるようになったのはFACOでも幸先よい」とパーマーは見る。
- イタリアはFACOの完全稼動はLRIP6(現在ペンタゴンとロッキード・マーティン間で交渉中)からと予定。オランダはLRIP10以前にイタリアの生産ラインから機体購入の予定はない。そうなると当面はイタリアは自国用生産のみになる。
- イ タリアのFACO生産能力は月産2機、一方ロッキード・マーティンは24機まで対応可能だ。イタリアは「自走式」生産ラインを採用していない。なくても生 産効率は高いというのだ。ロッキード・マーティンでは完成機体が一日一機出てくることをめざして同ラインを採用したが現実は程遠い。
- 正 式な開所式の前にイタリアはFACOの障害を克服に成功している。もともと米政府は安全保障上の懸念から反対していたが、カメリを実際に見てからは態度を かえており、保安体制が厳格なことがその理由だ。ただしイタリア政界にはまだ懐疑的な向きがあり、ティア1パートナーの英国は費用対効果の利点が見られな いとしてFACO導入を見送っている。
- 英国が自国用の機体製造しか検討しなかったのに対し、イタリアは他国向け機体の最終生産に加え、MRO業務まで含めて検討し2009年に着工した。FACOには最終組立ステーションが11あり、そのうち4つは電子装備専用で5つがMRO用だ。
- ただしイタリアがF-35を今後も購入するか不明。その他のパートナー諸国と同様、イタリアも経済不振に苦しみ、同機開発のコスト、日程双方での目標値からの後退が不安要素だ。イタリアはすでに131機購入を90機に削減している。
- イタリアFACOからのF-35一号機は2016年引き渡し予定。■
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