The Cost of a Syrian Intervention
by Daniel TromblyUS Naval Institute website August 22, 2012
リビアの事例と同様の形でシリア軍事介入を行うと航空機の投入数は6倍必要とマサチューセッツ工科大学が行った最新の分析が示している。
- リ ビアへの軍事介入「オデッセイの夜明け作戦」Odyssey Dawn は2011年3月開始され、当初は軍事介入の新しいモデルになると見られていた。比較的迅速に、被害なく、低コストで沖合いと空中から軍事力を敵対勢力に 投入し、抵抗勢力を保護することがベンガジで始まった。現在シリアの内戦状態は激化しており、政界にも軍事行動を求めるグラハム、マケイン、リーバーマン 各上院議員の声が高まっているが、再び航空戦、沿岸戦でシリア抵抗勢力を防御し現政権を転覆させることは可能だろうか。
- MIT 後期博士課程のブライアン・ハガティーBrian Haggerty,が公表資料からの分析結果を発表しており、シリア防空網を制圧すべく航空戦を展開し、安全地帯確保を実現するには何が必要となるかを示 している。作戦は実施可能だが、リスク低減のために大規模展開が必要で、すくなくとも戦術攻撃機191機の投入が必要で、(オデッセーの夜明け作戦時の6 倍規模)これ以外に数倍の爆撃機、巡航ミサイルの動員となると言う。
- シ リアが保有する統合防空網ntegrated air defense system (IADS) の存在を念頭にマーティン・デンプシー大将(統合参謀本部議長)は防空体制が中東地域で比較的整備されているシリアをリビアと比較している。シリアはこれ までにもアメリカの空軍力に対抗したことがあり、レバノン紛争(1982年)およびシリア原子炉攻撃(2007年)の経験からイスラエルもシリア防空体制 の制圧・破壊の必要性を認識している。
- 一 方でIHS Jane'sのサム・オコナーSam O’Connorのように適切な投入をすれば米国同盟国側がシリアのIADSを制圧しその後の航空優勢の確保は十分可能だと見るアナリストもいる。シリア 政府首脳を標的とした直接攻撃や安全地帯を確保してシリア軍に手出しできなくする構想もある。
- リ ビアのIADSはソ連時代の老朽装備で海岸線に配備されていた。西側と関係修復してもリビアは防空体制の近代化に重点投資しなかった。これに対しシリアは イスラエル空軍に対抗し、トルコ国境の緊張を意識し、アメリカからの攻撃も想定したIADSで、対象空域は広範かつ装備は近代的で威力が大きい。
- ハ ガティ分析で敵防空網制圧suppression of enemy air defenses (SEAD)の対象で抽出した目標は合計450箇所で、うちC2(指令所)・早期警戒施設が20箇所、地対空ミサイル(SAM)陣地150箇所、航空機掩 体施設205箇所、その他航空基地関連目標32および地対地、地対艦ミサイル陣地である。リビアではSAM陣地は31箇所のみであったし、うち数箇所はす でに反乱勢力が占拠していた。航空基地も5箇所のみが攻撃対象に過ぎず、選択肢はTLAM(トマホーク地上攻撃巡航ミサイル)がSEADにぴったりと見え るが、制約もある。
- ま ずTLAMの在庫が制約となる。とくにリビアで使用した後である。2011年3月19日までに米英で約100発のTLAMを水上艦船と潜水艦から発射して いる。この一週間後にまた100発が使用された。レイセオンはこの補充用にTLAM361発の生産を2012年度内までに完了する契約を交付されている。 二番目にTLAMが航空機掩体施設のような強化目標にはかならずしも効果的ではないのだ。ハガティが指摘するように爆撃機(B-2あるいはSAM制圧完了 していればB-1BまたはB-52も投入可能)からシリア空軍を地上で撃破するには精密爆弾を多数投下する必要がある。
- 開戦当初にTLAM攻撃、戦略爆撃機、電子戦専用機、SEADミッション用戦術機を投入すると米軍の役割が大きくなり、その後の戦闘でも大量の攻撃用機体の動員に加え米海軍の空母も必要となろう。リビアではこれは不要だった。
- ハガティ試算では残る200余の目標に攻撃機を向かわせると最低191機必要で、その他105機の支援が必要。この規模はコソボ紛争のアライド・フォース作戦と同規模だが、シリアのIADS攻撃には電子戦(EW)他専用機材をもっと投入する必要がある。
- 対 照的にリビアで米国はF-15E10機、F-16CJ8機でSEADを実施している。NATO軍からF-16が28機、カナダ・スペインのF-18 合計11機、ラファール8機、ミラージュ4機、トーネード10機が加わった。米空軍はさらにB-2を3機、B-1 は2機の爆撃機も投入している。NATOがシリアに介入すれば規模はこれより大きくなるのは必至で爆撃機、TLAM、戦術攻撃機が増えるだろう。軍事介入 はまだ可能性の粋を脱していないが、複雑な要素がからみあっている。
- リ ビア作戦時の武器在庫レベルの減り方について報道に誇張があったかもしれないが、デンマークのような小国が任務出撃回数増加に耐え切れず米英仏に肩代わり を求めてくる可能性がある。幸いにも今回はトルコが参戦すると見られ、F-16の配備数で世界第三位の同国への期待は大きい。ただし国境を接するトルコが シリアに権益を感じるのは当然としても参戦する政治的決断が出るかは不明だ。
- フ ランスはじめとする欧州各国にはリビア介入に乗り気だったが、シリアでは熱意が感じられない。SEADで高い運用力を有するドイツは参加しない見込みだ。 その他主要国の英、仏、伊も航空支援の提供には積極的ではない。とはいえ、第一段階であるシリアIADSの無力化は大規模作戦になりそうで、リビア事例を 規模で上回り、コソボ作戦よりも戦術面で複雑になる。
- まだ大事な問題が残っている。第一段階のSEAD作戦は攻撃作戦の道を開くのが目的で、シリア政府を標的にする、または「安全地帯」の実現を現政権支配下の軍に強制させる、またはその両方がねらいだ。その成否はSEAD攻撃にシリアがまずどう反応するかにかかっている。
- もしシリアにIADSを分散配置したり、作動を遅らせる賢明さがあれば、連合軍の航空作戦の自由度は大幅に減るだろう。実際にこれはセルビアが1999年に実施している。巧妙に隠されたSAMがあるとその後の攻撃も活発に実施できず、結果介入側に犠牲者が増える。
- そ こで識者の中には対テロ作戦で無人機(UAV)が有効に利用されていることから、シリア戦にも投入するべきだと主張するものがいるが、過去の事例から SEADがまず重要な意味を持ってくることが明白だ。UAVは武装集団からの攻撃に極めて弱体であり、対空装備をもたず、相手が十分な装備で対応すれば、 すべての利点は消え去る。1999年に米空軍がMQ-1プレデター5機をセルビアに派遣したが、3機が撃墜されており、4機目は墜落している。リビアでは SEAD作戦が終了してからプレデターが投入されている。その理由として戦闘用UAVは有人機よりも攻撃に弱いためだ。
- シ リアも無敵とは言いがたいが、ハガティ分析はまず突破口を開かないと次の作戦が実施できないことをあらためて想起させてくれる。米国および同盟国が自由に 空域アクセスできることが軍事行動の前提だ。IADSを制圧し、制空権が確立するために必要な代価を考えると、シリアでSEADの実行の労を惜しんでいる 余裕はないはずだ。決して勝利をおさめられないわけではないものの、冷静に考えるとシリア航空戦は簡単に決着がつくとは思えない。
Daniel Trombly is an analyst and writer on international affairs and strategy. He blogs at Abu Muqawama and Slouching Toward Columbia.
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