Israel, U.S. Agree To $450 Million In F-35 EW Work
August 06, 2012
総
額450百万ドルでイスラエルとロッキード・マーティンが合意したイスラエル開発の電子戦(EW)装備をF-35搭載の承認はイスラエルの計画する19機
27.5億ドルの第一期導入に道を開くことになり、中東における防衛協力の大きな柱となる。だがそれ以外の意味もある。- 長く待たれていた今回の合意でステルス性能の技術的経済的な制約を認めたうえで、高性能レーダーの出現でJSFのステルス性を長期間確保する必要性があらためて浮き彫りになった。
- F- 35導入の決め手はステルス性能のはずだが、それだけで歴史上最大規模の装備調達に加わるわけではない。レーダー断面積が小さいことは隙間的な能力だが、 新型レーダーの開発でその重要性が減少する。中国、インド、ロシアがそれぞれ自国開発に乗り出してステルス機の弱点に気づきはじめている。
- 「ステルスによる防御能力は5年10年は有効でしょうが、機体は30年40年稼動しますから、EW能力は簡単に高度化できるようにしておくことが必要です」(イスラエル空軍IAFのある関係者が本誌に)
- も うひとつの重要な観点は費用だ。「イスラエルにとってF-35が装備の中にないことは考えられないです。生産機数が増えて単価が下がればF-35はF- 16の後継機となります。」(上記イスラエル空軍関係者) たしかにF-35の現在価格は高価だが、イスラエルは維持が高くつく老朽機を処分したいと考え ている。イスラエルは実質的に米国の援助を受けているのだが。
- 「旧式機の保守点検での追加費用発生分は米国の軍事援助では手当てされません。そのためF-35調達が遅れるとそれだけ国防予算の負担が増え、その他にまわす余裕がへります」
- 2008 年の最初の合意内容では75機152億ドル(約1.2兆円)調達のオプションがあり、第二飛行隊を複数年度調達で整備することが盛り込まれていたが、この オプションは他の国防装備調達案と比較検討されている。だがイスラエルに追加飛行隊の本体価格は第一飛行隊より低くなるとの連絡が入っている。
- 今 回の最新合意によりイスラエルは自国生産の無線 ・データリンク他を自国購入分のF-35に装備することが可能になった。オリジナルではステルス性のある データリンクはF-35のミッションシステムで不可欠な部分とされ、データ通信はF-35編隊内あるいはF-35と特殊な通信連絡機間だけとされてきた。 F-35用にハリスHarris Corporationが開発した多機能高性能データリンクMultifunction Advanced Data Link (MADL)により探知されにくいリンクが実現し、F-35編隊内およびMADLを装備した指揮命令系統間で通信が可能となる。MADLはアンテナ6本で 機体周辺を球状にカバーし、Kuナローバンド波形を「デイジーチェーン」方式で使用する。つまり先頭機が志向性のある信号を二番機に送り、二番機が三番機 に、と続けるのだ。
- こ の方式だと波形が探知されす、傍受されにくくなるので、敵の信号傍受情報活動sigintやEW活動から自由になる。今のところこの装備はF-35だけだ が、米軍のステルス機全体に装備されていく。ロッキード・マーティンF-22やノースロップ・グラマンB-2が想定される。MADLはF-35の通信・航 法識別(CNI) ミッションシステムの一部であるのでイスラエルはMADLの供与を期待でき、イスラエル空軍はデータリンクを米軍と共有する始めての海外軍事組織となる。 ただし、MADLだけに依存するとイスラエルのF-35は友軍内のほかの機材と共同作戦が実施できないので、別の解決策が必要だ。
- こ れまでステルス部隊はミッションの独自性を求めており、最高度の柔軟性でこそ各機のステルス性能が発揮できると主張してきた。ステルス機、非ステルス機の 協同運用の必要性およびF-35を近接航空支援に投入する想定が米海兵隊に特に強いことから同機にLink-16のような通常装備の搭載が求められること になった。
- 最 近のテストでもF-35 でLink-16が使用されており、まもなく可変形式メッセージVariable Message Format (VMF)のテストもはじます。VMFは西側で広く近接航空支援ミッションで使用されている。今回の合意でイスラエルは自国製のデータリンク通信装置の搭 載に道が開けた。
- I イスラエルは絶えず海外調達の機体には自国製システムを付加すると主張してきた。米国製戦闘機ではこのような性能向上の中心はEWシステムズ、指揮命令通 信コンピュータ、データリンク、およびイスラエル製兵装の組み合わせが中心だった。このようなイスラエルによる改修は輸出にもつながり、たとえばライトニ ング高性能目標捕捉ポッドは米空軍・海兵隊にも採用されており、F-16、F-15、AV-8B、A-10、F/A-18、B-52の各機に搭載されてい る。
- た だしイスラエルのEWを巡る今回の合意内容は簡単に決着しなかった。JSFでは戦域固有の脅威ライブラリーやジャミング・対抗措置技術のレパートリーを元 にシステムの更新を頻繁に行う想定であり、この点で従来型のEWシステムズとは異なる。これまでもEWでは性能改修が行われているが、その他のエイビオニ クスとは関係なく実施されていたので、この改修は可能だった。
- こ れがF-35では主要エイビオニクス装備はすべて統合され一体化されているので、システムの一部に手をいれることはすべての関連システムに影響が出るの だ。異なる国籍の空軍がそれぞれ異なる型式のエイビオニクスを使用していると統合作業が非常に複雑になるばかりか非経済的だ。
- そ こでF-35のエイビオニクスの構造設計ではこの問題を統合のレベルを2つに分けることで解決。各国は高レベルにアクセスが可能で、使用国特化のサービス 内容、ライブラリー、改修を行うことができ、これは同機のソフトウェア改修スケジュールとは別箇に行うことができる。これに対し低レベルは米国の共用機開 発室の管理対象でアクセスはロッキード・マーティンに限られる。低レベルでは飛行性能およびミッションで不可欠な機能を制御する。同時に機体の低視認性能 とも関連しており、米国が精力的に自国管理を主張している領域だ。
- 中 核となるエイビオニクスを新システムで交換することで統合の根底部に触ることは考えにくく、実施すればF-35運用国のすべてが長期間のテストを求めら れ、開発のメリットがないからだ。そこでイスラエル空軍はこれとは違うアプローチを考えた。いわゆる統合モジュラーエイビオニクスintegrated modular avionics (IMA)である。この考え方はイスラエル黒帽研究開発局が長年かけて練り出したもので、現在試験的な搭載が進行中だ。
- 階 層は三段構造で新しいアプリケーションを統合していく。統一ハードウェアは協力な汎用プロセッサーgeneral-purpose processor (GPP) と大容量メモリーバンクで形成し、開発メーカーにはソフトウェア開発キットのようにデバイスと機能のライブラリーが利用できる。共通のハードウェアは各型 に適合化され、共通のデバイスや機能を作動させることが可能なので開発メーカーは新しいアプリケーションを異なる型式の機体に同時に提供する異なる。これ はこれまで特定の型式に特定のアプリケーションを開発していたのと対照的。アプリケーションはイスラエル空軍の認証を受ける必要があるが、各型式に問題な く適合し、保守点検が容易になる他アップグレードも長期間に渡り可能だ。
- 「ね らっているのは開発メーカー各社のセンサー類、アプリケーションソフトウェアをハードウェアの種類を問わず作動させることです。これにより機体の型式を問 わなくてもよく、統合試験コストを削減できます。」(イスラエル空軍のエイビオニクス部門長)イスラエル空軍はこのコンセプトを現有また将来の戦闘機、輸 送機、ヘリコプター、UAVに採用する予定だ。とくにUAVでは余分なスペースが無く、電力供給余力も少ないので課題となろう。処理能力を高めて、メモ リー領域も拡大することでIMAは中核エイビオニクス装置の負荷を緩和することが可能だ。イスラエル空軍がとくに期待しているのはソフトウェアによる無 線、情報融合、作戦立案の各機能での応用だ。
- イ スラエル空軍はIMAを費用対効果の高い手段として既存機種の性能向上を期待しているが、F-35へも新しい可能性を提供できるし、既存の中核エイビオニ クス装置に干渉せずにこれは可能だ。GPPでIMAを共通ハードウェアとすると運用各国に大きな利点が生まれる。サードパーティーのアプリケーショ ン開発メーカーが画期的な新アプリケーションをF-35に提供する道がひらける。スマートフォンのアプリと同じアプローチだ。
- . 国営イスラエル航空宇宙工業Israel Aerospace Industriesが今回のEW開発に加わる公算が高く、同社はすでに同機の主翼生産を始めようとしている。エルビットシステムズElbit Systemsの子会社エリスラElisraはイスラエル空軍にEW装備の提供を広く行なっているが、これも参画するだろう。エルビットはロックウェルコ リンズとの合弁事業体で高性能ヘルメットをF-35用に生産している。■
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