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北朝鮮が開戦に踏み切ったらどうなるか





North Korea's Annoyance Campaign

aviationweek.com 5月31日

ご注意 以下は昨日のエントリーの続きです。

北朝鮮が大規模な戦闘行為に突入する可能性は低いが小規模な行動は起こりうると米軍情報関係者は見る。

【北朝鮮のロジック】 一見すると支離滅裂な北朝鮮だが、同国が平和な状態を受け入れられないのだと考えると理解できる。完全な平和が実現すれば、同国は第3世界の一ヶ国にすぎず世界に対する影響力はなくなってしまう。かといって開戦に踏み切っても勝利の可能性はない。「北朝鮮は国際社会から無視されることは甘受できないのです。これまでは西側の反応をみて同国も行動してきました。ばかげた話ですが、同国の思考方法は合理的です。戦略論からは相手方の行動に対応するのではなく、こちらから行動を選択すべきなのは明らかなのですが。北朝鮮の次の行動を予測するのは困難ですが、予想はできます。合衆国が過剰反応することはむしろ危険です。」(朝鮮半島情勢を長年にわたり見てきた空軍関係者)

【警戒態勢引き上げ】 休戦状態を停止するという北朝鮮発表のあと米韓連合軍は警戒態勢を引き上げている。空軍の分析専門家は今後もミサイル発射実験、核実験の追加、核開発計画再開、ミサイル・核技術の輸出復活、サイバー攻撃ならびに非武装地帯での軍事衝突を予測。

【対艦ミサイルの脅威】 国際的に懸念が広がっているのは北朝鮮が対艦ミサイルの開発と試射に成功していることだ。西側情報筋がKN-01と呼称する同ミサイルはソ連時代のスティックスを原型としつつ、ロシア製のSS-N-25「スイッチブレイド」に類似している可能性がある。中距離射程で海面をすれすれに飛ぶ同ミサイルが本格生産に入り、相当数が配備となると侮りがたい脅威となるだろう。

【核実験の影響①】 あたかも戦争状態のような宣伝文句が流布しているが、国連安全保障理事会決議で北朝鮮船舶の臨検を認める可能性が出てくると、韓国が「核兵器輸送拡散対策」を支持する姿勢を示した。北朝鮮はこれを宣戦布告とみなすと警告。

【核実験の影響②ミサイル防衛の整備】 今回の核実験で日本と韓国はそれぞれ北朝鮮ミサイル迎撃の体制整備を早めると予測される。北朝鮮がミサイル搭載可能な弾頭兵器を実用化するにはまだ数年かかると見られるが、韓国はその間に弾道ミサイル防衛の初期段階を完了する必要がある。中国にはミサイル防衛が近隣諸国に広がるのは望ましくない。中国の核兵力は米ロの比較では小規模なので到達前に迎撃されるのは甘受しがたい。

【北朝鮮への情報収集活動】 「北朝鮮は当方のISR能力を考慮して多くの強化陣地や地下施設を整備してきました。」(第7空軍情報部長 ゴードン・イスラー大佐) 韓国ではISR機材各種を組み合わせて運用している。陸軍のRC-7、C-12/21ガードレイル、空軍のU-2が共通の飛行場から運用されている。「効果を挙げるために、各機種をネットワークで指揮命令管制を行う部門や個別顧客(戦場の各兵士まで含む)と接続して運用しています。ISRではデータの出展がどうというよりもデータの共有、融合が大切です。」(ジョセフ・ディヌオボ大佐 空軍ISRグループ司令)

では分析専門家は北朝鮮の何を見ているのか。

「長年にわたり北朝鮮の軍事演習を監視してきました。同国の補給活動を評価するのは大変困難です。燃料の備蓄がどれだけあるのか。大部分は地下に貯蔵されています。燃料消費量を推察するにも備蓄量が不明で、備蓄状態も不明では大変困難です。ただ、同国が資源不足に悩んでいる状態はわかっています。」(イスラー大佐)

【開戦シナリオ】 実現の可能性はないと見られているが、ある分析専門家の予想開戦シナリオはこうである。歩兵部隊が国内各所を移動して道路閉鎖、渋滞を避ける。ソウルを集中的に砲撃し、機甲部隊は当初は待機させる。補給能力の不足を埋めるため捕獲した敵軍車両と燃料を利用する。攻勢は7日から10日継続すると予想される。この中で米韓連合軍の最大の課題はソウルへの砲撃とミサイル攻撃をどれだけ阻止できるかである。資源不足と戦闘経験の欠如の中で、北朝鮮も目標を絞り込む必要があり、ソウルを攻撃する能力を誇示することが交渉材料となる。

空の戦闘について以下の追加情報がある。開戦となると米韓両空軍は一日あたり3,000回の出撃を行う予想で、北朝鮮の防空網の目標となってしまう。予想外に練度をあげており、非脆弱性も増している同国の防空体制に対して連合軍パイロットは反応時間の余裕のない事態に直面することも予想される。

北朝鮮が配備する旧式といわれるSA-5を例にとると、早期警戒レーダーが飛行目標の可能性あるものを捕捉し、SA-5の目標追跡レーダーに三次元目標の解を提供し、発射となる。この間に攻撃側のレーダー警報受信機は同機が捕捉あるいはロックオンされており、ミサイル発射が目前に迫っていることを警告する。「戦闘情報管制管理C4Iの進歩で電子戦能力を火器管制装置に直結したことで、ミサイルの目標追跡レーダーを稼動する時間が短くなりましたので、旧式ミサイルがいっそう脅威度をましているわけです。」(マイク・ケルツ准将 第7空軍副司令官) 

「開戦初日から二日目にかけて北朝鮮が発射する重砲は25万発にはなるでしょうから、長距離砲を隠蔽するトンネルを攻撃して火砲の威力を減らす必要があります。そこで、攻撃目標を組織的に個別選択して排除していくこと荷になります。」(ケルツ)

心強い話も聞いた。「非運動性兵器(爆発しないもの)を装備に加えているところです。情報戦や情報作戦というよりもネットワーク戦、サイバースペース攻撃というべきであり、信号情報の破壊となるでしょう。北朝鮮の継戦能力を破壊か無力化するには72時間から84時間あれば十分でしょう。」 (ケルツ准将)

【開戦は考えにくいが】 ではなぜ北朝鮮による全面攻撃は実現の可能性が低いと見られるのか。答えは北朝鮮には敗北したらおしまいであり、通常兵器戦闘になれば同国には勝ち目がないためだ。「北朝鮮は小規模武力衝突、兵器実験、プロパガンダで当方の神経を逆なでしてくるでしょう。しかし、本音は本当の戦争になる前に交渉を開始して軍事挑発はやめたいと考えているはずです。軍事力を使う気がないのは、使えば敗北して全部喪失してしまうからです。同国はこれまでも崖っぷちを歩いてきましたので今回もその中のひとつかもしれませんが、外部から見ていると北朝鮮政府は本当に衝動的な選択をしようとしているのか、実は裏にもっと重要な政策を実施しようとしているのか判断がつきかねるのが実態です。」(イスラー)

(写真 上から SA-5対空ミサイルKN-01 RC-12ガードレイル偵察機 SS-N-25スウィッチブレイドKN-01ミサイルの原型スティックス ぜんぜん似ていませんが。)

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