スキップしてメイン コンテンツに移動

★F-35>F-16に敗れた模擬空中戦結果を受けて米空軍主流派はこう見解を示している



本ブログはF-35に批判的な論調を展開していますが、前回のドッグファイト結果記事を掲載したところ相当の反響がありました。いただいたコメントはともに実施条件がおかしい、F-35の性能はそんなんじゃないとまるでメーカー広報のような論調でしたが、以下の新しいエントリーも空軍の見解を反映して同じ論調になっているのは実に興味深い点です。問題はF-22とペアで運用できるのは米空軍だけであり、その他各国はそんなぜいたくはできないこと、さらに実機の第一線配備がまだ実現していないことです。戦闘機に多額の投資をすることがほかの装備調達にどんなストレスを与えているのかが問題であり、2020年代にかけて西側の空軍力が実力ダウンにならないことを祈るばかりです。

F-16 Vs. F-35 In A Dogfight: JPO, Air Force Weigh In On Who’s Best

By COLIN CLARKon July 02, 2015 at 2:45 PM

F-35 and F-16
WASHINGTON: ステルス機の時代にドッグファイトは重要だろうか。F-16がF-35をドッグファイトで凌駕したらどうなるのか。初期型のF-35がF-16の後期型に対し優位に立てないとしたらどうなるか。
  1. そんな疑問に答えていこう。War Is Boringが問題の文書を入手した。F-35パイロットによるF-35対F-16のもぎ空中戦の初期評価内容だ。デイビッド・アックスDavid Axe のスクープだ。F-35のテストパイロットはF-16が殆どの場合でF-35を凌駕したと近接交戦の模様を伝えており、これは一般人がドッグファイトと呼ぶものだ。
  2. ただし事態はちょっと複雑だ。もちろんF-35パイロットがドッグファイトで負ければ大変だ。しかし、空軍や海兵隊のパイロットと話をしてみると、ハリヤー、F-18やF-16の操縦経験からF-35は優れた機体であると異口同音に話す。USSワスプ艦上でこの話が出た。USSエンタープライズの艦上でも同じで、ペンタゴン内部でもF-35とF-16を生産するフォートワースでも同じだ。
  3. 機体外部に兵装を搭載しないF-35が大型燃料タンクを外部に装着したF-16Dに対し優位にたてないとしたら皆どう言うだろうか。聞きたくもなるというものだ。F-35のステルス性能とセンサーは敵機を先に探知し、武装を敵機にロックして気づかれないうちに撃墜できる。
  4. 軍高官やパイロットからF-35が実戦でどんな活躍を示してくれるか期待が寄せられており、少なくとも半ダースのパイロットがF-35はF-18やハリヤー、F-16とは比べ物にならないと発言している。もし大規模戦闘が勃発した場合、最初の10日間でF-35がどんな動きをするかについてマイク・ホステジ大将(退役)(航空戦闘軍団司令官)はこう語っている。「開戦直後はグラウラー、F-16やF-15Eは戦場に送らない。代わりに第五世代機を送る」とし、同時にF-35はドッグファイト用には送らないとも発言。高性能統合防空システム(IADS)であるロシアのS-300やS-400の除去に向けられる初の米軍機だという。その後に進入し敵の戦闘機と近接戦闘をするのはF-22だ。
  5. 「F-35ではF-22と同等の速度、高度は無理だが、ステルス性ではF-22に勝る」とホステジは語っている。「F-35は敵地に侵入して地上目標を除去するのが役割だ」 事実、開戦初期ではF-22なら2機あれば実施できるミッションをF-35だと8機必要になる。
  6. F-35のレーダー断面積はF-22より相当小さいが、だからといってF-35がF-22より勝っているとはいえないとホステジは指摘。デスクに座ったままの将軍のコメントだろうとたかをくくる向きにはホステジはF-22のほかF-15とF-16のほぼ全部の型の操縦経験があると指摘しておこう。
  7. もうひとりはF-35の開発過程を内部から見守り、戦闘経験が豊かなデイブ・デプチュラ(空軍協会のミッチェル研究所所長)だ。デプチュラもF-15の操縦経験があり、イラクとアフガニスタンで合同任務部隊を指揮している。
  8. デプチュラは今回のテストパイロットの発言に対して「興味をそそるが、実際の作戦レベルになるとF-35が持つ大きな優位性とは関係がない話だ。つまり、低視認性、センサー性能、情報統合機能によりF-35は旧式機に対し相当の優位性を持つ」
  9. デプチュラは「F-35反対派は前世紀の空中戦にこだわっており、F-22やF-35が提供する情報面での優位性については理解できないのだろう」という。
  10. デプチュラはF-35やF-22で「戦闘機」の表現を軽視する。「これまで長年にわたり発言しており、今後も言い続けますが、第五世代機は戦闘機ではありません。『センサー搭載発射機』であり、各種の脅威に対応し、F(戦闘機)、B(爆撃機)、A(攻撃機) RC(偵察機) E(電子機) EA(電子攻撃機)、AWACSの機能を有する機体です」
  11. デプチュラはF-35一機で「従来型の機体数十機分の仕事ができ、従来機が数十機束になってもF-22やF-35一機ないし二機の仕事をこなせない」という。ドッグファイトは航空戦の必須条件ではないともいう。敵に発見される前に撃墜すればよい。「結論は、すべては情報だということです」
  12. これに対しF-35共同開発室は公式な声明を発表している。
  13. 「F-35の有する技術の狙いは、敵を発見し、発射し、長距離で撃墜することであり、目視のドッグファイトは除外している。F-35四機編隊でF-16四機編隊に交戦するシミュレーションを何回も行っているが、F-35が毎回勝利を収めているのは優れたセンサー、兵装、ステルスによるものだ」”
  14. そしてJPOからは今回のテスト機には最新のミッションシステムズソフトウェアが搭載されていないことに注意を喚起している。このソフトは相当の距離から敵を捕捉するものだが、テスト機には搭載されていないため、パイロットはヘルメットを介した旋回、標的、発射ができず、つど機体を目標に合わせる必要があった」
  15. 空軍少将ジェフリー・L・ハリジアンF-35統合室長の公式見解は簡素なものだ。「同機の操縦取り回しについて結論を出すのは時期尚早である。F-35は現在配備中の戦術戦闘機と操縦性において同等の性能を発揮できる設計だ。これによりF-16では生き残りが不可能な環境でも作戦を実施できる機体になっている。」 ホステジも実質的に同じことを昨年発言していた。では今回の結果から無難な結論はこんなところだろう。F-35はトップクラスのドッグファイト戦闘機ではない。なぜならもともとそのための設計ではないからだ。また敵を長距離から狙い撃破する設計で、敵がF-35を探知する前に撃破するのでドッグファイトは設計時に想定していない。■


コメント

  1. なんかF-4ファントムⅡ採用時と似たようなこと言ってるなあ。F-4は機体そのものは成功したと言っていいと思うけど、本来の運用思想は失敗してるので、F-35ではどうなるかですね。本当に格闘戦は軽視しても大丈夫なのかな?

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...