U.S. Navy Eyes Technology To Cloak Subs
aviationweek.com September 03, 2012
米海軍は潜水艦のステルス化をさらに進めその存在を遮蔽化する技術研究に資金投入している。まるでトム・クランシーの軍事スリラー小説かスタートレック の映画のようだが現実の話である。ウェイドリンジャー・アソシエイツWeidlinger Associates(ニューヨーク)が海軍の中小企業技術革新研究Small Business Innovation Research (SBIR)予算で進めているこの技術開発ではアルミニウムを加工変形させて「弾力性」を持たせ、同社が「金属水」と呼ぶ形にすることができる。
- 国防アナリストはこの技術で水中戦が根本から変わり、探知されず海中で待ち伏せをすることができると見る。
- 潜水艦作戦では音響特性がすべてで静かな潜水艦が優位な立場になるものの、探知技術も進歩してきた。
- そこで新技術では水中発生音の音紋を大幅に下げ、アクティブソナー音紋も小さくすることで高性能マル チスタティック探知機でも発見されにくくなる。
- こ の音響回避技術を潜水艦および無人水中機UUVsに応用するのがSBIRフェーズIIの目標だ。その中で表面剤を新たに作り、広帯域 パッシブ導波管の機能を持たせ、音響エネルギーの方向を変えることができ、アクティブソナーにも「事実上探知不可能になる」と同社は説明する
- 現在使用中の表面剤には二種類あり、ひとつが「分離剤」で船体と海水の間に不整合を生じさせ放射雑音を抑えるもの。もうひとつが「吸 収剤」で、アクティブソナー音を吸収する。
- 隠蔽化技術は機能性素材を組み合わせて上の二つの機能を同時にねらう。ただし吸収より方向変化を重視する。理論的には理想的な遮蔽塗膜を使えば放射雑音とソナーの威力を同時に消滅させられる。
- この表面塗布剤により水中振動も減衰できるので、パッシブソナーの音紋も下げることができると同社は説明。
- この技術の鍵を握るのがメタマテリアル各種の開発。メタマテリアルは金属と他の固体をまぜて作るが、顕微鏡的な規模で整備さ れた構造(たとえば格子状)を有する特徴がある。
- ウェイドリンジャーの技術はアルミに六角形のセル構造をもたせ、潜水艦の船体全体を包む円筒形の遮蔽を実現する。
- この実現には「変形音響特性」transformation acousticsと言う新理論を使い、密度・弾力性が異なる素材の層を重ねることで生まれるが、その結果として船体の振動と周囲の海水を分離し、雑音の放出を抑える効果がある
- 「メ タマテリアルでソナー探知の回避が根本的に変わる」と同社は見ており、「音響特性分布が判明している素材」“acoustic-mapped metamaterials” (AMM) は画期的。弾力性をうまく制御すればAMM表面塗膜は音波を誘導し、内部構造を探知不可能とし、アクティブソナーでの探知が不可能となる。
- ただし開発中技術の常で、同社も「AMMには実用化までに相当の開発工程が必要で、AMM理論も最近やっと使えそうな段階に達したばかり」と付け加えている。
- これまで電磁波の延長で考えてきた理論は「物理的に実現不可能」だと同社は言う。「当社の提案は広範囲なコンピュータ実験でリスク最小限の開発をすすめることです。AMM理論は実証ずみの有限要素コードで使うべきものです」
- 同社はAMM理論を潜水艦の形状で使えるかをテストためAMMマイクロ構造の有限要素研究を行う予定で、その目的は「現在提示されている素材で求められる複雑でユニークな弾力特性が実現するかを見ること」だという。
- 最小単位の結晶、単位胞unit cellの解析で複合材の構成が決まると同社は見る。また、同社は「海軍向け複合材料の一流メーカー数社とAMMマイクロ構造が大量かつ低コストで生産可能かどうか」打ち合わせているという。
- ただし落とし穴もある。塗布剤は艦の重量を増やすものになりかねない。ただし、この技術を実用化するのであれば海軍はこれは覚悟すべきだと同社は言う。「隠蔽化技術は重量を増やします。単純にスプレーで塗るわけにはいかない」とのこと。
- 同社が開発したソフトウェアの技術実用度レベル(TRL)は-5に達していると同社は明かす。一方、素材の成熟度はTRL-4で構想全体はTRL-3相当だという。(注 米政府が使用する技術評価基準としてのTRLは-1から最高-9まであり、-5は部品レベルあるいは実験モデルで該当環境下で検証可能とするもの。-3とはR&Dが始まったレベル)■
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