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シリア空爆後に今から備えるイスラエルは超現実主義国家

Israel Deploys New Iron Dome Batteries

By Alon Ben David
Source: AWIN First
September 04, 2013
Credit: Rafael

シリア攻撃の決断になかなか踏み切れない米国に痺れを切らし、イスラエルは攻撃実施後に備えようとしている。イスラエル空軍 (IAF) は高度警戒態勢に入っており、第六番目のアイアンドーム Iron Dome システム部隊を展開済みで、さらに第七番目も準備中だ。
  1. 「イスラエル軍はいつもどおり任務を継続する」とネタニヤフ首相 Prime Minister Benjamin Netanyahu は高らかに宣言したが、同時に追加予備役1,000名の召集を準備させている。
  2. IAFは第六番目のアイアンドーム部隊の引渡しをラファエルRafael から受け、各部隊を北部、中部、南部の国内に展開中。第七番目の部隊も米国がシリア攻撃の準備が完了するまでには納入されよう。アロー2 Arrow 2 弾道弾迎撃ミサイルも警戒態勢に置かれており、ペイトリオットMM-104地対空部隊も同様だ。
  3. シリアのアサド大統領Syrian President Bashar al-Assad はスカッドミサイル備蓄の半分を内戦で消費済みだが、さらにスカッドB/C/D合計500発を保有していると見られる。その射程は型の順に300,500、700キロメートルだ。ただし、液体燃料式のスカッドでは燃料注入に長時間が必要で、発射する前に存在が捕捉されてしまう。そこでイスラエルが懸念するのはシリア陸軍が多数保有する固体燃料式M600ミサイルのほうだ。これはイランのファター-110ミサイルのクローンで500-kg弾頭を300Km範囲で命中させることが可能でイスラエルの人口集中地区がほぼ全部含まれる他、戦略拠点も狙われる。そのほか 302 mm ロケットも 150 kmの射程があり、すべて化学兵器の弾頭を搭載できる。
  4. アローはもともとスカッドミサイルへの対抗手段として開発されているが、アイアンドームは短距離ロケット弾を想定している。さらに中間空域の防衛手段としてデイビッズスリングDavid’s Sling (別名 魔法の杖 Magic Wand )があり中距離ミサイルM600迎撃を想定しているがまだ開発中だ。イスラエルが保有するペイトリオットPAC-2が当面この間のギャップを埋める。「ある程度なら弾道ミサイルの脅威にも対抗可能だ」とアミール某中佐(氏名は非公開)はペイトリオット部隊指揮官として本誌取材に答えている。
  5. シリアの防空能力が一貫して弱体化しつつあるとはいえ、イスラエルは依然として強力な脅威とみなしており、イスラエル北部のラマット・デイビッド空軍基地 Ramat David Air Force Base ではサイレンが二時間おきに鳴り、戦闘機がスクランブルしておりイスラエル国境に向かうシリア戦闘機が探知されていることを示す。「敵を過小評価してはいけない」と同基地のF-16C/D部隊指揮官G中佐は語る。「好運に頼るわけに行かないのであり、わが国に向かう機体があれば現場に飛び領空侵犯が発生しないことを確実にしなくては」
  6. 前回のシリア空軍との交戦は1982年と1986年に発生しており、IAFが完全勝利している。IAFの航空管制部隊司令官アサフ中佐は「すべての動きを把握し、特に今回は警戒している。相手は現在も飛行を実施している。相手は作戦能力を維持しており、わがほうはこれを深刻に受け止めている」という。
  7. 近年になりシリアはロシアから高性能防空装備を受け取っており、SA-17(Grizzly/Buk) や SA- 22 (Greyhound/Pantsyr)をIAFは警戒しているようだ。2013年にIAFがシリア国内を数回空爆したとの報道が流れてからは防空装備はIAFにとって難題にならなくなった。このこともありイスラエルの判断はアサド大統領はあえてイスラエルを刺激してこないと見ている。
  8. 「イスラエルがその気になればシリアは全部失うことがアサドにはわかっている」とイスラエル国防筋の上席関係者が本誌に語っている。「わが国を攻撃すれば自殺行為とわかっている」 それでもIDFはこの二週間で各種のシミュレーションシナリオを試しており、米国による攻撃への報復としてシリアの息がかかった機関が代理攻撃としてシリアあるいはレバノン国内からロケット発射をしてくる、というもの。「それには即座かつ容赦なく対応する」とネタニヤフ首相は繰り返し警告している。
  9. イスラエル指導部は米国がシリア攻撃に踏み切るべきかに関しあいまいな態度をとっている。ひとつには化学兵器の使用という「レッドライン」を超えたシリアへは決定的な力の行使を希望しつつ、他方で米国のシリア介入で内戦の方向が変わるのを望んでいない。イスラエル指導部はアサド大統領を仇敵と見つつも内戦の反対勢力を見るとむしろ望ましくない結果につながることも恐れている。
  10. 9月のユダヤ休日を迎えようとする中で、イスラエル国民はガスマスクを手に入れようと行列を作り、国民防衛配給所に集まっている。米国による攻撃を受けたアサド大統領が化学兵器をイスラエルに発射するとの恐れから民間人多数が個人防護キットの入手に走っており、軍支給の同キットにはガスマスク一個とアトロピン注射器(神経ガス対策)が入っている。
  11. 指導層から繰り返し発せられるメッセージも国民の不安感情を鎮めることはできていない。イスラエル国民の多くがアサド大統領が化学兵器使用を自国民に使うのを躊躇しないのであれば、イスラエルにも躊躇せず使用してくるはずと考えている。■


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