スキップしてメイン コンテンツに移動

米空軍は発想の転換を 低コスト機の開発を真剣に考えるべき

       

Editorial: USAF Should Be Open To Low-Cost Aircraft

Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com September 16, 2013
Credit: USAF

1947年の創設以来一貫して米空軍はハイエンド機機材を求めてきた。発足時の第一線機は軽量P-51マスタングとF-86セイバーだったが、その後重量級F-105サンダーチーフ、F-106デルタダートそしてF-111(正式名称なし)へと変遷していく。
  1. ベトナム戦争では機関銃を装備した高機動戦闘機が必要と痛感されたが、空軍の理解は重量級双発F-15イーグルとして実現した。この裏では通称「戦闘機マフィア」の空軍将校および民間人アナリストが一緒になり、軽量級戦闘機の必要を訴えていた。
  2. その結果生まれたのがF-16で最も成功した戦闘機という評価もあるが、同機はローエンドとしてF-15とのハイローミックスで生まれたもの。だが空軍はすぐ昔どおりのやり方に戻り、ステルスだが大重量で高価なF-22ラプターを開発し、同機のハイローミックスのローエンドがF-35共用打撃戦闘機となるはずだったが、F-35はとても軽量とは言えず、戦闘機というよりも攻撃機の性格が強い。
  3. F-22調達は190機弱に削減され、F-35はコストと日程で大きなプレッシャーを受け続けている。一方で空軍はアフガニスタン上空でF-15、F-16やB-1を周回飛行させて情報収集監視偵察任務に投入することで数百万ドルを毎日支出している。今こそ空軍の思考型式を再構築すべきではないだろうか。
  4. 空軍の元将官、元将校が業界の「一匹狼」テキストロンと組んで、新思考で自費開発を低運行費の戦闘航空機開発を開始している。同機はスコーピオンの名称で近接航空支援機としてA-10やF-16に替わるものとなるが、軽量攻撃機スーパートゥカーノやISR機材キングエアよりは上位の位置づけになる。
  5. 同じような事例があった。60年代初頭に海兵隊の一部将校が対ゲリラ戦機材を提唱し、これをノースアメリカンがOV-10ブロンコとして実現、同機は成功事例とされる。70年代初頭に戦闘機マフィアがF-16、F/A-18を生んだ。ジェネラルアトミックスはプレデター原型機を入手し、空軍とペンタゴンに無人機運航を忍耐強く説得し、その後戦闘のあり方を変ええている。
  6. 一方で内部外部から考え方を変えようとする試みには失敗例も多くある。80年代初めにノースロップは自社費用でF-20をF-5発展系として開発したものの、政府がF-16輸出を解禁したことで頓挫している。80年代なかごろにはボーイングがアレス低価格攻撃機を提唱し、今回のスコーピオンと似た構想だったが結局失敗している。
  7. では今回は退役将官とビジネスジェット機、ヘリコプター、ゴルフカーとノ生産で知られる民会会社のチームが過去にうまく行かなかった試みを成功させられるだろうか。課題は空軍に過去の経験を学ばせて再度ハイローミックスを戦闘の実態に合う形として実現できるかだろう。
   

       
上記記事に対するオリジナル読者コメント
  • この案件でメーカーは固定価格を提示すべきだろう。コスト上昇分を政府が全部負担した時代は去り、新兵器の購入は新車購入と同じく買い手は正価を払うべきだろう。議会は兵器システムのコスト超過事例にうんざりしており、米空軍は確実な固定価格を提案すべきだ。
  • 国防産業を存続させるためにも大手業者は自社費用による開発を行い、成果物を完成させてから軍に売り込みをかけるべきではないか。まさしくこの方法で海外政府は米国製防衛装備を購入しているのであり、米国は例外というのは認められない。
  • DoDが過剰性能の案件すべてに過剰支出するようなことはもうやめるべきだ。これでは米国は破産に追い込まれる。
  • F-15,F-16,F-18でそれぞれ近代化改修の提案があり、電子装備、ステルス性の向上がうたわれているが、各機はすでに世界最高級の機材であることは証明済みであり、各機の生産継続には意味がある。第三世代、4.5世代機に改修を加えれば2020年代までは十分通用するのではないか。
  • 米空軍以外は単一目的の機材を発注しているが、米空軍は多用途機を発注して価格、性能への影響を無視する過ちを繰り返している。
  • 低コスト機を米空軍が開発するのであれば第五世代機でなくてはならない。つまり、最低限でも全領域ステルス性、兵装内部搭載、センサー融合,AESAレーダーが必要。つまり第四世代機を改修しても敵が第五世代機を配備した環境では優越性を確立できない。仮に米空軍がF-35を中止しても中国、ロシアがそれに応じて自国の第五世代機開発を中止することはない。仮に米空軍がF-35を中止しグリペンを採用するのであれば、70年代にF-16を取りやめてヴィゲンを導入するのと同じだ。米空軍、NATO双方に良い結果をもたらすとは思えない。
  • ダグラスA-1スカイレイダーは傑出した安価な地上攻撃機だった。アフガニスタン戦役の後半に同じ構想で設計した機材を投入できればよかったのだが。実際には空軍も海軍も第一線ジェット機を石器時代の軍事技術を用いる敵に投入している。F-18を地上攻撃に使って何十億ドルを浪費してきたのだろうか。
  • 米空軍はどんどん空っぽの組織になってきた。機材の平均機齢は高くなる一方だ。ごく少数で使用自体がリスクになる高価格の機体しか配備されないとどうなるか。F-22は一回も実戦投入されていない。非常に低価格だが高性能のグリペンの発注に賛成だが、土壇場でスペックを変更してそれまでの努力を無駄にすることは避けたい。(大統領専用ヘリでのばかげたスペックとコスト上昇の例がある)
  • 同時進行する多方面戦闘では一番状況が厳しい戦線に最優秀機材を投入し、そうでない方面に低価格機材を配備すべきだ。低脅威の戦場に高価格機材を投入し続ければ破産してしまう。あるいはいつも最悪のシナリオを想定していても同じだ。海軍にはF-18の三ないし四飛行隊が改修を待ち、稼動していない状態で各機1ないし3百万ドルかけ機体寿命延長を待っているが予算不足あるいは人員不足で計画通り進んでいない。新型F-18EF調達を毎年2機削れば既存F-18C/D/E/Fが40から50機改修する予算が捻出できるのだが。
  • アフガン戦線でT-6、トゥカーノのどちらが優れているか論争があるが、なぜOV-10のエンジン換装型を投入できないのかどうしても理解できない。未整地飛行場での運用性と単純な機構により同機はアフガニスタンの作戦環境に合うはずだ。
  • スコーピオン構想は低脅威ミッションで異なる状況に柔軟対応できそうだ。機体を複雑な構造にしても低脅威ミッションでは決定打になない。むしろ柔軟性が肝要だ。今日の機体そのものがコンピューターの格納容器になっているのが現状だ。
  • A-10の代わりになる機材はひとつしかない。A-10を増産すべきだ。F-35はあまりにも高価であるが、既存機材に匹敵する性能はない。ではF-15等の改修はどうかというと、はるかに安価でそれでも相当の性能を実現できる。F-22の役割は開戦時に航空融雪製を確保することでその後は安価で作戦に適応した機材を投入すべきだ。その意味でA-10の代わりになる機材はない。
  • 家計収入支出の基礎講座をアナポリス、ウェストポイント、空軍士官学校では勉強していないようだ。
  • ハイローミックス構造は常に有効。ローエンド機材に対する航空優勢確保は過剰投入になる。第五世代機による航空優勢確保には利点があり今後も米空軍の基本となろう。しかし、ローエンドもしっかりとデマケされて今後も成長していく。 AT-6/A-29なら過去20年で発生した紛争の大部分で有効な攻撃支援機材となる。A-10は基本的に対戦車攻撃任務の地上支援機材であり、その設計思想は次の機材に一部継承されようが、新型機はフルダ渓谷で敵戦車を釘付けにする必要はもはや存在しないのだ。精密兵器と目標捕捉技術の進歩で搭載兵器を目的地に運び、自機を防御することだけすればよくなった。一機ですべての任務を果たすのは不可能。
  • はっきりさせよう。機材はアメリカ製にすべき。
  • 第五世代機がステルス性を維持できるのは兵装、燃料を着たい内部に搭載してこそ。中国のJ-20は十分な機体寸法があり、Su-50も機内搭載で空対空任務をこなす設計だ。一方F-35はこの点で機体が小さすぎ、爆弾投下も風量が低いことが条件なので、視認誘導のSAMの標的になろう。低コスト機材の役割は①防御的正確の短距離交戦 ②ステルス機の模擬飛行特性再現 とし第五世代機のライフサイクルコストを節約すべきだ。

コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ