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米海軍の次期無人艦載機UCLASSはローエンド性能機になってしまうのか

Pentagon Altered UCLASS Requirements for Counterterrorism Mission

By: USNI News Editor                        
USNI website, Thursday, August 29, 2013
                                                 
Chief of Naval Operations (CNO) Adm. Jonathan Greenert, left, and Secretary of the Navy (SECNAV) Ray Mabus observe an X-47B Unmanned Combat Air System (UCAS) demonstrator make an arrested landing on July 10, 2013. US Navy Photo

ペンタゴンが米海軍の次期無人機の要求性能について当初の海上から数千マイル離れた地点を攻撃するというものから、テロリスト狩りに軸足を動かしていると判明した。

無人空母発進監視攻撃機 Unmanned Carrier-Launched Surveillance and Strike (UCLASS) の開発はペンタゴンの合同要求性能管理協議会 Joint Requirements Oversight Council (JROC) の担当で、コストダウンとともに無人機によるテロ対策ミッションを海外基地を利用せずに実現しようとしている。

UCLASSは当初空母艦載航空団に編入して有人戦闘攻撃機と共同で防護硬い目標の攻撃に投入する構想でF-35Cと同等のペイロードを想定していた。同時にステルス性を生かし長距離飛行による情報収集・偵察・監視(ISR)任務に投入し、空中給油で飛行時間を延長する構想あった。

ところがこのたび入手した資料によるとUCLASSの現時点での概念設計は当初想定した兵装を一部は搭載するものの、ステルス性は低くなり防衛体制の整った空域内の作戦はできないものになっていることが判明した。

UCLASSの誕生は共用無人戦闘航空機システム(J-UCAS)が取りやめになったことで実現したもの。J-UCASは米空軍、海軍が共同で開発するはずだった。
Distances in the Pacific Ocean. CSBA Illustration.



新構想で海軍は空母搭載型UAVを開発し、長距離誘導ミサイルの脅威にさらされる空母群に新たな作戦意義を与えることになっていた。一方、空軍は長距離爆撃機開発を継続する。

「UCASはISR能力に加え兵装投下機能を持つはずだったが、同時に長時間滞空し、敵防空網を突破するISR機となるはずだった」と元米海軍作戦部長、現ノースロップ・グラマン取締役のゲアリー・ラフヘッド提督 Adm. Gary Roughead は本誌取材に答えている。
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そこでノースロップ・グラマンはX-47Bを製作し、基本性能試験に投入した。

「無尾翼の無人機を空母に無事着艦させる技術実証が目的だった」とボブ・ワーク元海軍次官(現新アメリカ安全保障研究所CEO)Bob Work が本誌取材に答えている。
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ノースロップ・グラマンはテスト機を2008年にロールアウトし、2011年に初飛行させている。今年7月に同機は USS H.W.ブッシュ (CVN-77) への完全自動着艦に成功している。

このUCAS-D初飛行の年にUCLASS構想がペンタゴン内部で変質を開始している。

2011年に国防長官官房Office of the Secretary of Defense (OSD)がJROCと共同でUCLASS開発を牛耳るようになった。UCLASS予算はOSD経由で海軍予算に組み入れられた、とワークは証言。「OSDが予算を握り要求性能に口を出すことになった」

OSDの横槍で構想内容は対テロ作戦遂行に中心が移り、強固な防空体制への進入構想と離れていく。

対テロ作戦は現在は空軍のMQ-1プレデターやMQ-9リーパー無人機が実施しており、主眼は捜索追跡および「高価値」のテロリストの抹殺で、米国の対テロ作戦の重要な要素になっている。実際にテロリスト集団指導者数名が殺害されている。

 
MQ-9 Reaper UAV. US Air Force Photo

ただし合衆国がこういった作戦を実施するにあたっては緊急性とともに外国政府の承認が前提となっている。

「海外基地からの作戦実施には海外政府は好きなだけ制約を加えてきます。政策上の制約条件という意味です」とチャールズ・ダンラップ空軍少将Maj. Gen. Charles Dunlapが本誌取材で発言している。「制約は公海からの運用ならずっと少なくなります」

複数筋からホワイトハウスが対テロ作戦飛行の実施に空母を利用すれば海外基地を使う必要がなくなると関心を有していることがわかった。

空軍スポークスウーマンのケイティ・ホーグ中佐 Lt. Col. Catie Hauge は本誌取材に対してホワイトハウスからUCLASS性能要求水準になんらの指示はないとし、ホワイトハウス安全保障スタッフスポークスウーマンのケイトリン・ヘイデンCaitlin Hayden はコメントを拒否。

ワークによるとOSDが取り仕切るようになってから「きわめて健全な討議」がUCLASS要求性能内容をめぐりかわされたという。「一方は『すでに800機もの無人機があり、制空権が確保された空域で作戦実施できる』と発言していた。」

「ただ不足しているのはステルス機による敵地進入能力だ。そこで、もう一方は『対テロ作戦と非正規戦ミッションは当分続き、陸上基地発進だけでは頼りない』と発言していた」

「この私が退官する際も議論はまだ決着していなかった。」ワークが公務を退いたのは去る5月のこと。「統合参謀本部の関心はシステムの下部レベルであったが、これを強硬に推進していた。これに対し海軍は交渉に柔軟な態度で『少なくともその分野での実施能力を上げる必要はある』としていたと思う」

本誌問い合わせに海軍とOSDからそれぞれ文書の回答があり、そこにはUCLASSミッションに対テロ作戦が含まれる、と書いてある。

ワークは対テロ作戦に中心をおくことには同意しかねるという。「空母は100億ドルの浮かぶ資産で60億ドル相当の航空機を搭載しているんです。アフリカ沿岸に空母を移動させてテロリストを捜索させるなんてことはおかしいでしょう」

オバマ大統領が署名した予算統制法 Budget Control Act では国防総省の一律1割予算削減が決まり、2013年早々から実施されている。政権側、議会側からそれぞれ既存プログラムの見直しがかかっているが、一番の焦点は各プログラムの必要額だ。

8月初めにペンタゴンで無人機作戦およびISRを担当するダイク・ウェザリントンDyke Weatherington からUCLASSの要求性能見直しでは予算制約が大きな要因となっていると発言。国防総省は「終了しきれないプログラムを開始する余裕はないし、結果を示しきれないプログラムを開始する余裕もない」という。
ただしUCLASSの機数はごく少数にするというのが当初の23億ドル相当のプログラムの内容であった。
 
An illustration from the 2008 CSBA  paper: Range, Persistence, Stealth and Networking: The Case for a Carrier-Based Unmanned Combat Air System by Thomas P. Ehrhard and Robert O. Work


「当初は空母に分遣隊機能を付与することとしており、各空母が任務に順番について西太平洋であれ中東地区であれ、一定の能力を提供する予定だった」

これに対しウィネフェルド提督が提唱したのが最大限の利用可能機で空母周辺の周回飛行を実現することで、これでは当初のUCLASS費用積算の根拠が変わってしまう。

与えられた予算で何回の周回飛行が実現できるかがUCLASSの最大の優先事項だ、とウィネフェルド提督は書いているという。

改定指導内容に照らしあわせ、JROCは国防長官官房の費用分析計画評価室に3月31日までに代替手段の比較検討をすませるよう提言し、審議会がUCLASSの要求性能として提示したものを反映するよう求めたとの報道もある。

新しい基本性能の指標key performance parameters (KPPs),として機体単価(研究開発費、運用費、維持費を除く)は150百万ドルを超えな
いものとした。
 
Proposed operational ranges of UCLASS. US Naval Institute Illustration


周回飛行がまず想定されるが、その他のKPPには攻撃ミッションの飛行半径2,000海里が含まれる。

海軍は単価150百万ドルで最低2機の購入を期待する。

今回の方針変換で当初の目標だったUCLASSを有人機と同等の戦力として一体化させる内容が薄まる。現在の案はUCLASSを空母から発進させるが、有人機が飛行しない時間に限るというものだという。
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「UCLASSを通常の航空作戦が終了してから発進させ、次のサイクルが始まるまでのギャップを埋める存在にできる」と海軍作戦部長の下で無人機システムの要求性能を取りまとめるクリス・コーナティ大佐  Capt. Chris Corgnati は語る。

ワークは空母航空部隊関係者の中には有人機と無人機の統合には口を重くする傾向が強いという。

それではUCLASSを当初のUCAS構想のレベルまでどれだけ近づけることができるのかはいたってペンタゴンが海軍が9月以降に発表する提案依頼書(RFP)をどのように系統付けられるか次第だろう。

「RFPはそもそも性能内容を定義づけるもの。今のRFPがどうなっているか不明だが、予算強制削減の影響は避けられないだろう」とワークは言う。

UCLASS製作に関心を示す四社、ロッキード・マーティン、ボーイング、ジェネラルアトミックス、ノースロップ・グラマンはそれぞれ新構想を元に独自の新しい視点を模索する必要がある。

「RFPは性能を伸ばしていくことが最低限必要だ。すべてはコストの問題になる。ローエンドのシステムに当然向かうことになる。でもこれでは実戦部隊が求めるものでなくなりますね』(ワーク)

海軍はUCLASSを2020年までに配備する予定。.■


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