スキップしてメイン コンテンツに移動

ロッキード案のMQ-25登場、でもUCLASSを取りやめた海軍が構想した給油機は必要なのか

Lockheed Is Already Pushing A Stealthy Version Of Its MQ-25 Stingray Tanker Drone MQ-25スティングレイ無人給油機のロッキード案の概要が明らかに

The sad thing is, the whole idea originally was for the Navy to get a stealth drone, but it ended up getting a flying gas can. 残念なのはもともとは海軍が想定したステルス無人機が空飛ぶガソリンタンクになったこと

BY TYLER ROGOWAYAPRIL 11, 2018
LOCKHEED MARTIN VIDEO SCREENCAP


ロッキードがMQ-25空母運用給油機競作で自社案を発表したが全翼機形状無人機に低視認性で兵装運用能力を付け加える構想と判明した。
同社が制作した派手な映像がメリーランドで開催されたシーエアスペース展示会で公開された。動画で同機の活躍場面を示し、最後の部分でMQ-25には給油タンクではなく共用スタンドオフミサイル兵器(JSOWs)が搭載されている。タイトルには「これからのミッションでの柔軟性が残存性につながる」とある。
LOCKHEED MARTIN


映像でロッキード版MQ-25の特徴が分かる。例えば電子光学センサータレットが左主翼下に格納される様子がわかる。
VIDEO SCREENCAP


また実にクールなエアブレーキがついており、機体中央部の円錐状形状に溶け込んでいる。
VIDEO SCREENCAP


だが何と言っても興味を感じるのはMQ-25が飛行甲板上でどう運用されるかだ。機体の移動状況は地上管制装置でモニターできるようで広角ビデオカメラ数個がついている。機体自体も機首のLEDライトと前脚扉につけた表示で今どんな動きをしているかを周囲に示すとともにこれからの動作も表示するようだ。実に格好いいではないか。
MQ-25は半自律運航を目指し、従来のような人員による飛行制御は必要ない。ただ空母艦上で機体を位置につけるため手の動きを認識するソフトウェアが必要なのか、それとも管制官が位置を指示するインターフェイスやほかのコマンド方法で機体を動かす方式なのか不明だ。
VIDEO SCREENCAP
VIDEO SCREENCAP

ロッキードが低視認性版スティングレイを追加する可能性があるとしても驚くべきことではない。同社スカンクワークスには数々の全翼機製造の実績があるが、ロッキード本社の説明と食い違う点もある。
Aviation Weekのジェイムズ・ドリューがロッキードで無人給油機の設計を世界に伝える役を与えられた、MQ-25事業を統括するジョン・ヴィンソンにインタビューしている。
「ステルスは全面的に信頼できない。効率を追求して全翼機形状に落ち着いた。給油機では燃料を主翼で運び燃料重量と主翼揚力を分散させることが多いが、ペイロードが燃料のため当方は全翼機設計とした」
機体表面の追加塗装、アンテナ処理、その他小改良で低視認性が実現するのであれば、ステルスを念頭にMQ-25を設計したのだろう。実際にスカンクワークスはこの作業をしたようだ。ボーイングのMQ-25試作機が途中で挫折した無人空母運用偵察攻撃機(UCLASS) から生れたのであれば、UCLASSの低視認性要求から将来の改良でステルス機に発展する可能性がある。
ここで話題にしているのは高性能低視認性かつ深度侵攻機ではなく、高い残存性を敵の高度防空体制で発揮でき、場合によってはそのまま敵領空内に侵入可能な機体だ。
他方でジェネラルアトミックス案は低視認性機材に発展する可能性が低い。だが同機は他社よりも燃料搭載量が多くなりそうで、エンジンが強力なのでペイロードに対応できそうだ。
このことから三社がUCLASSの影響を引き継いでいることが分からう。ロッキードは「完全新型」設計というが同社のシーゴーストUCLASS構想との強い関連を示している。シーゴーストとはRQ-170センティネルを原型としていた。
LOCKHEED MARTIN
Sea Ghost concept based on the RQ-170 Sentinel.


MQ-25の要求性能にステルスはなく、これが原因でノースロップ・グラマンに有望視されていたX-47B実証機がありながら同社は競合から降りたといわれる。米海軍がそもそもUCLASS競合の時点で給油能力の優先度を高くしておけば各社がより競合した形で提案を出し、敵地深く侵入しながら低視認性の戦闘航空機材で必要に応じ給油能力も発揮できる機材が生まれていたのではないか。空母から500マイル地点で14千ポンドの給油用燃料を搭載する性能が実現できないのであればもう一機を発進させて任務を達成させればよい。
いいかえれば、UCLASSのまま給油能力を付与していれば、海軍は給油能力は限定されてもその他ミッション多数をこなせる機材を実現できていたはずだ。また海軍がスーパーホーネット多数の調達に動いており、コンフォーマル燃料タンクを各機が搭載することを考えるとスーパーホーネットが現在課せられている空中給油任務は今後大きく減ることが予想できる。
そうなると海軍がUCLASSの時点で四社あった入札業者のうち最良の無人戦闘航空機(UCAV)を調達していれば、現状の有人機の二倍三倍の航続距離を有する艦載戦術機材を入手していたのではないか。またそもそも給油機支援など不要だったはずである。そこでMQ-25給油機のかわりに108機保存中のS-3ヴァイキングを砂漠から呼び戻せば足りたのではないか。
また戦闘機パイロットが多数派の海軍と議会内の愚かな議員連の決定でステルスの空母運用UCAVが息の根を止められていなければ、無人機で半分以下の費用で三倍四倍の距離まで飛びパイロットの生命を危険にさらさず運用できるのにF-35Cが本当に必要なのかとの疑問がうまれていたはずだ。
だが将来の姿を見通して最適なUCAVを導入する代わりに海軍は予算を給油無人機に投入しながら本当に必要な機能は実現せず、制空権が不完全な空域では中途半端な機能しか果たせない機材を手に入れようとしている。海軍は今後の改良型の開発配備を必要と感じているのか。
結局のところ、UCLASSを葬り、無人艦載機を空飛ぶガソリンスタンドに変えたのはあまりにも近視眼的と笑うしかないし、いかにも腹黒い動きだ。無人機にパイロットがしたくない仕事をさせ、UCLASS開発取り消しのために生れた仕事をさせるのは有人戦闘機開発を温存させるための策略なのだろうか。
残念ながらすべて事実なのである。■
Contact the author: Tyler@thedrive.com

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...