米空軍がMQ-9リーパー調達を突如終了し、新型無人機調達に切り替えか
これまでジェネラルアトミックスが米無人機生産の中心だったが、戦術面の現実の前にこれも変わりそうだ。
第432航空団所属のMQ-9 リーパーと運行に当たる隊員がネヴァダの夕日の中に立つ。432ND WING PUBLIC AFFAIRS—PUBLIC DOMAIN
米空軍の2021年度予算要求でMQ-9リーパー無人機の最終購入24機が盛り込まれている。これまで生産はまだ5年は続くと見られており、363機のMQ-9調達になると予想されていた。突然の変更には深い意味がある。まず、メーカーのジェネラルアトミックスには急な話でありとても歓迎できない話だ。二番目に空軍もやっと無人戦闘航空機の残存性に優先順位を認めたということだ。超大国間の戦闘で無人機にも大きな役割を期待される。
MQ-9の生産継続に黄色信号がついたのをAir Force Magazineが2020年2月26日に伝えており、ジェネラルアトミックス副社長クリス・パーソンが同社の状況に触れていた。
「突然の生産ライン閉鎖ですが次への展望がないまま、情報偵察部門にも混乱が生まれます。この影響はゆくゆく戦闘の第一線に現れますよ。この機体は訓練用じゃないんです....当社は納入の22ヶ月前からリードタイムの長い部品を手当してるんです....衛星受信機やエンジンとか....政府にも最適価格を提供してきたんです」
サプライチェーンに投資する中で突然はしごを外された格好...生産画境中止になればすぐ影響が出ますよ。雇用にも。解雇やレイオフとなれば新機種を生産しようとしても必要な技能職がすぐ見つからなくなります」
ジェネラルアトミクスにはとても郎報といえない。同社にはリーパー派生型のスカイガーディアン事業もあり、通常の航空交通の中を飛び、40時間連続飛行や高度50千フィートまでの運用性能がある。だが、リーパー生産ラインが閉鎖されれば空軍の遠隔操縦機調達での同社の独壇場も終わりを告げることになる。MQ-9は空軍の戦闘用無人機部隊で中心的存在だ。
GENERAL ATOMICS
スカイガーディアン
また同社はエル・ミラージュに巨大な新設備を完工したばかりだ。新施設には120千平方フィートの大格納庫があり、スカイガーディアン事業のために建設したといわれるが、それだけでは大きすぎる規模だ。
GOOGLE EARTH
ジェネラルアトミックスのエルミラージュ施設。2018年撮影。巨大施設が同社事業所の東端に建設された。
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スカイガーディアンを現時点で発注しているのは英国空軍とベルギーで、オーストラリア空軍も導入の意向ありといわれ、その他数カ国も関心を示している。
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MQ-9では米海軍が2020年度予算で海兵隊向けに2機調達したのがめだち、2021年度にも3機を導入する予定だった。
同時に空軍は委託業者によるオービット、つまり無人機による常時上空飛行の回数も減らす。無人機4機と運用チームによるオービットは現行の70が60に減らされる。
USAF
ジェネラルアトミックス保有の MQ-9が米空軍向け委託事業でポーランドのミロスラヴィエック 航空基地滑走路をタキシー中。2019年3月撮影。
米陸軍向けMQ-1Cグレイイーグルもプレデター・リーパーファミリーの一部で同じく生産が終わりに向かっている。陸軍の調達は2020年度でわずか9機、2021年度はゼロだ。
MQ-9は米国税関国境防備隊も使っており、ジェネラルアトミックスが同機につけたプレデターBの名称をそのまま使っている。NASAでは科学調査用途に二機を運用している。Air Force Magazineでは同社は小口需要にはスカイガーディアンに変更してもらい、1機種の生産に集中することで性能、価格面で効果が生まれると希望しているとのことだ。
今回の米空軍の動きの背景には互角の戦力を有する相手との戦いで機材には十分な残存性が必要と判断していることがある。MQ-9は高性能無人機で兵器「トラック」になるが、低速で、敵防空体制の前に脆弱と指摘されてきた。非国家勢力が相手の場合でも同様だ。
MQ-9に残存性をもっと与えようと空対空ミサイル、電子戦装備、対地攻撃手段まで搭載する案が検討されてきたが、これらを搭載したところで、大国同士の戦闘では同機の性能に限定がつく。
読者の皆さんはもうご存知だろうが、空軍は自律性能に優れ、高速飛行しながら探知されにくい戦闘無人航空機(UCAVs)の調達を2000年代初期からめざしている。だがステルスUCAVの構想そのものが最初からなかったようにも見える。
構想が極秘のうちに結果を生んでいるのか、中途放棄されたのかは不明だが、いずれにせよ未だに姿を見せていないのは米国の安全保障に大きな影響が出ていることを意味する。
BOEING
ボーイングX-45Cが当初大いに期待されながら採用されなかったのは、別の極秘機の性能がさらに先を行っているため、あるいは空軍がそもそも開発を取り消したためか。
米国の敵陣営も技術開発を続けている。地政学の要因と戦闘の様相が変化していることから空軍もついに残存性が高い戦闘無人機の開発に乗り出すことにしたようだ。ジェネラルアトミックスもこの変化に気づいており、次世代機の開発に乗り出しているようだ。
「MQ-9が現時点の機材なら、次世代機はもっと厳しい空域でも生き残れる機体にないrますよ。まだ正式要求はでていませんが、当然でてくると予測して手をうつことになります」とパーソンも語る。
Air Force Magazineによればパーソンは新型機構想があるのか明白に述べていないが、同社のQ-11つまりプレデターC別名アベンジャーより新しい構想になると述べている。
GENERAL ATOMICS
プレデターA、B、Cの各型。それぞれ、プレデター、リーパー、アヴェンジャーの名称もつく。
アヴェンジャーは2009年初飛行しており、機体サイズが大型化しながら低視認性(ステルス)も兼ねそなているが、大口顧客の関心を集めていない。数機がアフガニスタンやシリアに投入されている。その際の評価は不明だが、残存性の高さが有効に活用された作戦があったようだ。
Q-11の運用面は極秘情報扱いだ。一部機材が中央情報局関連で運用されているようだ。アヴェンジャーの性能でも優秀な装備を運用する互角戦力を持った超大国相手では不足するので、ジェネラルアトミックスはアヴェンジャーを大幅に超えた新型機を登場させるようだ。
他方で消耗品扱いを覚悟すれば安価に調達できそうだ。低価格には魅力があるが、それでもある程度残存性があるのなら有人機との共同作戦に投入できそうだ。有人機を高高度高速飛行可能で長距離をカバーする兵装とセンサーの「トラック」にする。同社が次回に提示する新型機がこのすきま解決手段となるかもしれない。
USAF
重武装したMQ-9 が海外で運用されている。
ジェネラルアトミックスは海軍向けのMQ-25空母運用空中給油機(CBARS) の受注を逃したが、これまでの主力製品の調達をDoDが中止すれば、再度この分野の事業を立て直す必要がが出てくる。遠隔操縦機による戦闘作戦は同社が作ったと言っても過言ではない。このまま競合他社を前にしながら同社が姿を消すとはとても思えない。ロッキード・マーティンやクレイトス他はこの機会を逃さないだろう。そこで同社が建設したエル・ミラージュ施設で機密性の高い事業が展開されるのではないか。
空軍がリーパー調達を打ち切りたいとしても議会承認が必要な点が重要だ。MQ-9各機は今後数十年にわたり重要な任務につく。
いずれにせよ、空軍の遠隔操縦機の重要な機種で生産が終わるというのはステルス無人航空機ほか残存性が高い機材の調達に空軍が本腰となったことを意味するのだろう。■
この記事は以下から再構成したものです。
Abrupt End Of Air Force MQ-9 Reaper Buys Points To New Focus On Survivable Drones
General Atomics has supplied the backbone of America's drone force for decades. Now that may be ending due to stark tactical realities.
BY TYLER ROGOWAYFEBRUARY 27, 2020
THE WAR ZONE
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